法律ノート 第1413回 弁護士 鈴木淳司
Apr 14, 2024
せっかく、週末にゴルフのマスターズをテレビで観て楽しんでいたのですが、イランのイスラエル攻撃が開始されたという速報が入ってきました。
ロシア・ウクライナだけではなく中東も泥沼化してきました。
色々な思想や政治はあると思いますが、「陣地取り」合戦のようなことを大人がすることで、多大な被害を出している現状は、自分たちの子どもたちに教育している内容と矛盾しているように思います。
戦争をして病院や様々なライフラインまで破壊して、まったく罪のない子どもたちの命を奪うというのは、手段が度を越しています。
暗澹たる気持ちになるニュースです。
アメリカで雇用する際の注意点(1)_1413
さて、今回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。
いただいている質問をまとめると「Webなどのデジタル系デザイナーをしています。受注が増えてきたことから、今まで外部のデザイナーに外注していたのですが、一人新たに専属で採用しようと思います。友人やネット上の情報によれば、外注に比べ、新規採用は色々な面で注意が必要なようです。どのような点に注意すべきでしょうか」というものです。
雇用契約の主体 -誰が契約主になるか-
今回の方は個人でデザイナーの仕事をされているのですが、法人化されているかは特定できませんでした。
個人事業主か、または既に法人化されているか、いずれかと思います。
どちらの形態でも人の雇用は可能です。
人を採用し雇用する場合、誰が、どの企業が、雇用契約を締結するのが良いのかが一つ目に考えるべきポイントになります。
法人は有限責任
一般的に、法人で人を雇う方が良い場合があります。
法人、たとえば、株式会社(Corporation)や有限責任組合(Limited Liability Company)などは、「有限責任」しか負いません。
この「有限責任」という法律のコンセプトは、出資の限度で責任を負うだけなので、個人まで責任が及ぶことは原則としてありません。
そうすると、なんらかの訴訟やトラブルが被用者との間で起きた場合、責任が個人に及ぶのを回避できる可能性があるので、法人で雇用するほうがベターと考えられています。
個人事業主は個人財産も責任対象
かりに、個人で雇用して、何らかの損害賠償義務が発生した場合、個人の財産全般がリスクに晒されます。
したがって、一般的に弁護士としては、法人格を通して雇用すべきとアドバイスすることになるでしょう。
アメリカにおける雇用とは
雇用と請負(Independent Contractor)の違いは、次回詳しく考えていきますが、雇用というのは、アメリカの一般的な考えでは、雇用者が何をいつするのかをコントロールできる状況で、仕事を提供する場合を指します。
最終的に「いつ」「何を」するのかコントロールできるのがポイントになります。
したがって、雇用をする場合には、仕事の内容を決めたり、業務時間を決めたりすることになります。
雇用上の取り決め
この取り決めをする方法はいくつかあります。
就業規則(Employee Manual)をつくるとか、雇用契約を締結するという方法がありますが、口頭での契約でも有効に成立します。
実際に、契約書や就業規則がない雇用関係も無数に存在します。
問題は書面での指針である契約書や就業規則が存在しないと、紛争が発生した場合、言い分が食い違い、なかなか解決が難しくなるというところです。
したがって、今回質問されている方において、一人しか被用者がいないとしても、かっちりとした契約書まではいかないまでも、雇用に関する基本的なルールを制定しておいた方が良いかもしれません。
お互いに内容をクリアーにすることは悪くありません。
基本的な取り決めをする場合にも気を付けたいのは、個人が雇用者になるのか、法人が雇用者になるか、という上記の1つ目のポイントです。
必ず、取り決めは雇用者と被用者の間で結ぶようにしましょう。
雇用者は様々な法律を理解しておく
上記の2つのポイントをまず考えて雇用の関係を構築します。
雇用の関係ができると、請負に比べて、かなり被用者を保護する法律があり、雇用者としては、様々な法律を理解しておかなければなりません。
次回以降取り上げますが、たとえば、給与計算において、時間外労働、休憩時間の付与、一定の理由に基づく有給休暇などがありますし、不当解雇のリスク(差別、セクハラ問題)、なども想定しなければなりません。
請負に比べて、かなりの縛りが生じますので、初期段階から、よく理解しておく必要が出てきます。
ここから、次回また続けて考えていきたいと思います。
カリフォルニアでは天候が安定しない週末ですが、晴れの日を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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