アメリカ_雇用契約の競業避止(1)_1386

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1386回 弁護士 鈴木淳司
Sep 30, 2023

 北カリフォルニアでは秋が深まってきています。
秋特有の天気の移り変わりもあり、陽も傾いて、これから雨が多くなるのでしょうか。
昨年は異常な大雨でした。
日本でも違いはないでしょうが、雨だったり猛暑だったり、異常気象は今年から来年にかけて、また続くのでしょうか。
私の友人が言うには、ドングリがたくさん落ちるとその冬は大雨になるそうです。
今年もドングリがかなり落ちているので、大雨騒動が起きなければ良いと思うのですが。
皆さんのお住まいの地域の天気はちゃんと秋になっていますか。

アメリカ_雇用契約の競業避止(1)_1386

 さて、今回から皆さんから新しくいただいている質問を考えていこうと思います。

いただいている質問をまとめると、「日本からアメリカに来てから30年以上経ちます。大学院からアメリカに留学してそのまま精密機械の輸出入を扱う会社で25年以上働きました。コロナ禍以降、生活態様が変わり、今勤めている会社を退職しようと思っています。円満に退職できると思うのですが、就職時にサインした契約書にあるNon-compete Clauseが気になります。実は、退職したあと、同種のコンサルタントとして一人でビジネスをやろうと思っていたので、契約違反にならないか心配しています。」というものです。

Non-compete Clauseー競業避止条項

このNon-compete Clauseというのは日本でいうと競業避止条項と言います。
雇用契約には従前よく記載されている条項でした。

まだ、日本の契約書において日本法が適用されるものについてはかなり今でも目にします。
一方で、アメリカの各州では、ばらつきがあるものの、カリフォルニア州ではかなり厳しく規制されていますし、最近では契約書にも記載がないものが多いと思います。

この競業避止条項というものをよくわからない読者の方もいらっしゃると思いますので、まずはどういうものかをここで考えたいと思います。

競業避止とは

企業というのは営利を目的にしていますので、企業同士で競争しながら品質を高めて商品を売るなど、基本的には競争することが良いこととされています。
何かを独占している企業というのは価格を操作できたりして消費者の利益には直接なりません。
ですから、特許についてもある程度の期間を定めて、期間経過後はだれでも使えるようにして競争を促し、技術の発展を後押ししているのです。

企業同士の競争は一般論としてはウェルカムなわけですが、一方でAという会社で働いている人が、独立したり、他の会社Bに移ったりすると、企業同士の競争に水を差す可能性がありますよね。
Aとしては一生懸命自社の競争力を高めようとしていたのに、そのブレインが流出してしまい、他社Bなどの競争力が増してしまうとAにとっては都合が悪いわけです。
そうすると、新たに従業員が働く際に、「退職する際には、同種の事業に少なくとも退職から1年間は就けない」という一筆をいれさせて、縛ろうとするわけです。

この、退職後、同種の職種に就けないという縛りを競業避止といい、契約書に記載されるときに競業避止条項と呼ぶのです。

現在は、限定的に解釈する傾向

ここまで読まれると、競業避止条項というのは、雇う側には都合が良い条項なのですが、雇われている側としては、他の仕事に移りたいと思うときに都合が悪い条項だということがおわかりになると思います。
労働の自由などにも影響する条項ですので、現在の風潮としては、競業避止条項をできるだけ限定的に解釈していこうという流れになっています。

似て非なる「秘密保持条項」

 というわけで、競業避止条項は、被用者が企業をやめたあとの行動を規制するという面があります。

一方で、競業避止条項と異なるのが、働いている企業の情報を、やめたあと他の企業や自分の利益のために使うことの規制です。
これは秘密保持条項といい、企業内の情報については、外部に持ち出してはいけないということです。

企業はそれぞれその企業価値を持っていて、その価値には情報も含まれていますね。
その情報を持ち出すことを禁止するのは一般的に許されるとされています。
この秘密保持義務は、企業をやめる前に取得した情報についての規制ということになりますので、競業避止義務とは異なった趣があるのです。
この競業避止条項と秘密保持条項は違う意味合いがあるということには注意をしておいてください。

州法で条項の有効性を確認

 さて、今回質問されている方がサインされている契約書には競業避止条項が記載されているということです。
もちろん、具体的に相談を受けているわけではないですから、契約書を読んだわけではありませんので、詳しく内容がわかっているわけではありません。

ただ、カリフォルニア州法が適用されるのであれば、競業避止義務がそもそもどの程度有効か疑問となります。
カリフォルニアの裁判所における判例をみても競業避止についてはかなり限定的に解釈されているので、そこまで企業としても咎めようと躍起にはならないと思います。

 次回、カリフォルニア州における競業避止に関する法律を考えていきたいと思います。

秋らしい日も多くなってきましたし、できるだけ冬が来る前に秋を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。

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作成者: jinkencom

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