法律ノート 第959回 弁護士 鈴木淳司
Oct 6, 2015
すっかり天気が秋らしくなってきました。今年、カリフォルニアは雨が少なかったので、これから雨が多くなってくれることを望んでいます。冬に山間部にどの程度雪が降るかが勝負ですからね。私は苦手なのですが、雪が降れば、スキーやスノ-ボードなどをやられる方は嬉しいのではないでしょうか。冬のカリフォルニア山間部も綺麗ですが、私はウイスキーや焼酎を暖かくして飲むのがこれから楽しみです。皆さんは季節を楽しまれていらっしゃいますか。
アメリカで転職する際の注意点(1)_959
さて、今回から新しくいただいた質問を考えていきたいと思います。いただいている質問をまとめると「現在シリコンバレーで、日系企業に勤めています。日本の本社から派遣されて現地企業で働いているのですが、来年、他の企業に転職しようかと思っています。できるだけ、波風を立てないように転職したいのですが、契約の関係やビザの関係などについて注意点を教えてください」というものです。
契約期間を設定する雇用もかなり増えてきた
日本でも技術系の方の転職は欧米に似てきて長期の雇用というよりは、契約期間を設定する雇用、プロジェクト毎の雇用といった形態がかなり増えてきたと思います。私が仕事上目にする契約書も、ほぼすべてのもので契約期間が設定されていると思います。伝統的な日本の雇用形態とは確実に違った形になっているように思います。
転職もまったく珍しいことではなくなった今の世の中で、転職にまつわる法律問題を今回の質問を使って考えていきたいと思います。
今回いただいている質問には、かなり具体的な内容が書かれていたのですが、できるだけ多くの読者の方にも有用になるように法律的な論点をよりぬいて、それを考えていくという形にしたいと思います。かりに、回答が一般的になりすぎている場合には、今回質問された方は再度質問をしていただけると幸いです。
雇用関係とは契約
さて、転職というのは、一つの雇用契約関係を終了させ、別の就業先と雇用関係を締結するということといえると思います。子会社への出向や、長期出張とは異なります。基本的に、法律的に現在締結している雇用契約を解除して、新たな雇用契約を締結する行為といえます。
雇用関係というのは、契約ですから、その契約内容を個別に吟味しなければならないところではありますが、転職によって、今現在の就労先との契約関係が終了するということになるわけです。この基本的な部分を理解してください。
日本人なり外国人が就労ビザを使ってアメリカ国内で就労する場合、通常の転職に比べて、気をつけなくてはいけない点がいくつかでてきます。もちろん、すべての項目を網羅することはできませんし、具体的な事例では他にも考えるべきことがあるとは思います。
できるだけ、一般的なもの、重要なものを抜き出して以下考えていきましょう。今回は、どのような点があるのか指摘し、次回具体的に踏み込んで考えていきたいと思います。
日本人がアメリカ国内で就労する注意点
まず、最重要なのは現在の雇用主との関係です。今回質問されている方のように日本の本社に勤務し、米国に駐在をするという場合、契約関係が日本と本人、現地企業と本人という2つのラインが考えられますね。2つの雇用主を持つことは理論上、実務上可能ですから、どのような契約関係があるかはしっかり抑える必要があります。
次に、雇用契約の内容を吟味する必要があります。雇用の期間、条件などです。3点目としては、雇用の際に付随して守秘義務などの契約関係があるのかチェックする必要があります。4点目は、現在勤務している企業においての福利厚生に関する処理があります。5点目ですが、ビザの関係に関する処理を考えておかなければなりません。6点目は新た就労先との関係を事前にどの程度考えておくべきか、ということになろうかと思います。
上記だけでは、完璧なリストと言えないかもしれませんが、確実にこれらのポイントを事前に考えておく必要があると思います。
上記のように、考えるポイントは多岐になりそうです。次回以降、いろいろ考えていきますが、もう少し具体的に内容を知りたいかたなどは、小さなことでもぜひ質問をされてください。転職については、アメリカで働くうえでは重要なトピックだと思いますので、ぜひ皆さんからのインプットをいただけると幸いです。
アメリカでも松茸を見る季節になりました。季節を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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