アメリカで転職する際の注意点(2)_960

Golden Gate sanfran

法律ノート 第960回 弁護士 鈴木淳司
Oct 9, 2015

 日本人がノーベル賞に続けて選ばれましたが、何よりも大事なことは物事に興味を持って続けるということなのですね。継続は力なり、というのは秀逸なことわざなのですね。知り合いの大学の教授に聞くと、日本人の研究者がいろいろな事情でなかなか国外に出難くなっているということですが、若い人はアメリカに限らず海外で刺激を受け、友人をたくさんつくり、どんどん見聞を広めて、引いては日本を牽引していって欲しいものです。

アメリカで転職する際の注意点(2)_960

 さて、前回から「現在シリコンバレーで、日系企業に勤めています。日本の本社から派遣されて現地企業で働いているのですが、来年、他の企業に転職しようかと思っています。できるだけ、波風を立てないように転職したいのですが、契約の関係やビザの関係などについて注意点を教えてください」という質問を考え始めました。今回続けていきましょう。

最重要である、現在の雇用主との関係から考えていく

 前回は、総論的に注意点を考えましたが、今回から各論を考えていきましょう。最初に考えるのが最重要なポイントです。現在の雇用主との関係についてです。

 今回質問されているかたは、日本の本社に勤務していて、一時的に米国に駐在をしているということですが、まずどのような雇用関係があるのか、整理しなければなりません。通常の駐在員であれば、日本の本社との雇用関係を維持しているはずですし、なんらかの金銭の授受が生じていることもあるでしょう。一方で、米国で就業するわけですから、米国の子会社や関連会社と本人との契約関係もあると思います。

 雇用契約には、いろいろな内容が盛り込まれますが、まず期間が決められているのかどうかをチェックしなければなりません。期間が決まっている場合には、その期間内に離職する場合には契約の債務不履行となってしまいます。

 もちろん正当な理由があって、雇用契約を解除することは問題ないのですが、転職をするというのは、正当事由にはならないのが一般的です。契約において、期間設定がなされていない場合には、会社のポリシーに基いて、辞職をすることが可能になります。

 しかし、法律や就業規則によって、辞職はある程度の時間を決めて通知をするなどの仕組みがあるのが一般的ですから、どの程度間を置いて通知をするのかを確認する必要はあります。

 また、2つの雇用契約がある場合には、一方だけではなく、両方の契約書に適合するように辞職を考えなければなりません。もっとも、就労期間が決まっていても、会社側とネゴをすることで、合意して契約を解除することも可能な場合もあります。ですので、会社側とはじっくり話ができた方がベターではあります。

 期間だけではなく、備品の返還や引継ぎなど法律以外の部分でも話し合いが必要ですから、立つ鳥跡を濁さず、という態度があったほうが良いのでしょうね。

すべての疑問を解決してからサインをする

 現在の就労先との契約関係を整理しながらも、新たな就労先との関係も吟味しなければなりません。米国では、就労する際に均一ということはなく、色々ネゴができる場合もあります。したがって、就労の対価だけではなく、いつから就労を開始するのか、就労にどのような条件をつけることを許されるのか、など考えなければなりません。

 米国では契約書にサインをすれば、契約が成立しますので、サインをしてから考えるのではなく、必ずすべての疑問を解決してから、サインをしてください。

 また、一般的に契約書がない場合もあると思います。就業規則はあっても、雇用契約書がない、ということも多々あります。この場合は、就業規則を就労前にサインすることを求められると思います。その場合でも必ず目を通すことと、できれば、オファーレターを作成してもらい、雇用内容の骨子について書面で確認すると良いと思います。

転職に問題がないか、守秘義務契約書を確認

 第三点目ですが、雇用契約書の他にも、守秘義務契約書など付随する契約書があります。私の経験から、この守秘義務契約書が結構後日トラブルを生じさせます。守秘義務に違反しないように、契約書の内容をよく確認して、転職に問題がないかまず確認します。

 契約書によっては競業を一年間禁止するといった条項があるからです。また、守秘義務契約書は、辞職後も効力を持つということになっていますので、会社の情報などの扱いにはかなり注意する必要があります。

 次回続けて考えていきたいと思います。最近私は刺し身や寿司などの生魚よりも、焼き魚を好んでいますので、秋の焼き魚を楽めるとよいな、と思っています。秋を楽しんでまた一週間がんばっていきましょうね。


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作成者: jinkencom

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