アメリカ人観光客とトラブル_日本で訴訟は?(1)_1396

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1396回 弁護士 鈴木淳司
Dec 11, 2023

 日本の政治家のニュースを観ていたのですが、パーティー券を売るのは、まあ良いとして、そこから得た利益を裏金にして派閥の中で回しているというのは国民にとってはいただけない話であります。かりに、一般の私企業でおなじことをやったら、脱税ですよね。故意に収入を記載しなかったのですから。

コツコツ税金を払って生きている一般の人たちにしてみたら、税金から国会運営のお金や政党交付金がはらわれているのに、さらに儲けを出して裏金を作っているといったら、踏んだり蹴ったりの状況です。

さらに増税まで考えているとなると、国民は働いて税金を収めようとする気概を失ってしまうように思います。困ったものですね。
皆さんは、政治に対してどのように思われているのでしょうか。

アメリカ人観光客とトラブル_日本で訴訟できる?(1)_1396

 さて、今回からまた皆さんから頂いている質問について考えていきましょう。

 今回考える質問をまとめると「日本在住の者です。外国人、主に英語圏から来る観光客に自転車ツアーを個人で提供するビジネスを副業でやっています。先日アメリカ(カリフォルニア州)から来た家族に自転車数台を貸し出しました。ちゃんと前金で貸し出すお金とツアー代金はもらっていました。さらに数日自転車レンタルのみを延長したいということで、その分も支払ってもらったのですが、最終的には返却に来ず、連絡も取れなくなってしまいました。盗難届を出したところ、後日見つかりました。しかし、貸し出した数台のうち2台はもう乗れるようなコンディションではありませんでした。カスタムメイドの自転車で1台15万円ほどします。被害を弁償してもらいたいのですが、アメリカでの訴訟を日本にいながらできるものでしょうか。」という質問です。

まずは事前のリスク対策を

 最近では、コロナの話題も少なくなり、外国人観光客も増えているので、もちろんトラブルも増えるような状況なのでしょう。

 まずは、今回の質問にあるような事例に備えて、ちゃんと前金に加えて保証金をもらうとか、加入できる保険を探すとか、自衛策は必要なのでしょう。
 もちろん、副業ということでお金をあまりかけたくない部分もあるでしょうが、商売においてリスクはあるものですから、そのリスクを認識しつつ事前対策をするのが最重要だと思います。

 今回質問されている方もなんらかの保険があるのかは確認する必要があります。質問からははっきりとは判断できませんでした。

日本で起きた被害は日本で裁判できる

 さて、今回の質問をみると、日本で被害が発生していますので、その被害が発生した地が第一次的に裁判ができる場所(裁判管轄)になりそうです。
 また、契約も日本で締結していますので、日本法も適用されそうです。

訴えられる人がいる地にも裁判管轄がある

 一方で、被告となる自転車を借りた人はカリフォルニア州にいるのであれば、訴えられる人がいる地も裁判管轄があるということになり得そうです。
 今回のような事例で、裁判管轄が契約書に規定されていない限り、質問をされている方はカリフォルニア州で訴訟を提起して、損害賠償を求めていくことは理論上可能ではあります。

アメリカで少額請求裁判を起こすのは現実的か?

 問題は、訴訟を提起することが現実的なのかということでしょうか。

 金額的にはかりに今回質問されている方が自転車2台分の金額を請求していくとすると2,000ドル程度でしょうか。
そうするとカリフォルニア州においては、少額請求裁判所(Small Claims Court)という1回で結審する制度を用いることになります。
金額が少ないからです。

 少額請求裁判所では、個人が訴える場合には上限が1万ドル、その他の場合には5,000ドルが上限になりますので、この裁判所が適当ということになります。

fly high

少額請求裁判なら一度渡米する必要あり

 少額請求裁判を提起する場合には、一つ今回のような事例では問題になることがあります。それは、この制度を利用できるのは請求者本人のみになるからです。

つまり、弁護士をつけることはできませんから代理出廷は許されていません

 そうすると、日本にいる方がわざわざこちらに一度は出廷してこなくてはならないということになりそうです。

 コロナ禍があったので、ビデオ出廷もゆるされる場合もありますが、これは各裁判所の運用に任されています。
かりにビデオ出廷であれば、日本から出廷することも許される可能性はありますが、本人出廷が一度は必要になるのが原則ですから、かりに訴訟を提起しても日本からわざわざカリフォルニアにまで来て訴訟をするとなるとコスト倒れになる可能性が高くなります。

 ここから次回続けて考えていきましょう。

冬なのに暖かい日も多く、不思議な年末ですが、ホリデーシーズンを楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。

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作成者: jinkencom

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