アメリカ_賃貸住宅のキャンセルポリシー(2)_1384

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1384回 弁護士 鈴木淳司
Sep 15, 2023

 最近、ある医師が私の体を慮ってくださり、かなり怒られました。
ある理由があったので飛行機の移動をやめるように、強く説得されたのです。

私は軽く考えていたのですが、強く言われて「はっ」としました。
医師はもちろん、私の体のことを真剣に考えてくださっていたわけで、言われなければ私も軽く考えていたところがあります。

つくづく、何歳になっても注意をして何かを気付かされるということは幸運だと思いました。
また、このように怒ってもらえることに関して感謝をしなければなりません。

自分では自分のことがわからないことも、何年生きていてもわからないこともあるわけです。
みなさんはお元気にお過ごしですか。

アメリカ_賃貸住宅のキャンセルポリシー(2)_1384

 前回から考え始めた質問は「はじめまして。いつも楽しくニュースレターを読ませていただいています。とても丁寧で、わかりやすく、ためになります。私はロサンゼルス在住です。家を借りることになり、昨年末入居ということを口頭で合意しました。前払いを求められ、2ヶ月分の家賃と1ヶ月分の家賃をデポジット(保証金)として振り込みました。しかし、入院することになり、入居前に医師の勧めで引っ越しをキャンセルする電話をしました。大家さんは、遅れた分1ヶ月分の家賃はもらうと言いました。そして、デポジットは返金しますというメールが来ました。しかし、返金されませんでした。何度かメールしても返信がなく、無視されています。私と大家の間に契約書は全くありませんでした。そして、このキャンセルポリシーについての説明もありませんでした。入居2週間前に初めて聞かされました。解約すると1ヶ月分の家賃を取られるとは知りませんでした。」というものでした。

質問をみると、2ヶ月分の家賃と、1ヶ月分の保証金を前払いしたということになります。
この事実を前提として、法律的に質問者がどのような主張ができるのか、考えていきたいと思います。

今回の質問を考えるにあたり、まず保証金と家賃とは、性質が違うお金でありますので、ここで分けて考えておきたいと思います。

保証金ーカリフォルニア州の場合

まずは保証金(デポジット)について考えてみましょう。

前回、保証金というのは、日本でいう敷金に近いコンセプトということはご紹介しました。
保証金については、カリフォルニア州民法1950.5条に以下のように法律として詳細が決められています。
ここでは、すべての1950.5条を網羅できませんので、主に重要な事項と、その例外を考えます。

カリフォルニア州民法1950.5条

 第一として、賃貸借契約を締結する際に大家が受け取れる保証金の最高額は、賃貸物件が家具なし(Unfurnished)の場合には家賃の2ヶ月分とされています。
一方で、家具付き(Furnished)の場合には、最高で家賃の3ヶ月分とされています。
加えて、ベッドがウオーターベッドの場合には、半月分の保証金を乗せられるということになっています。
そして、2020年に加えられた法改正では、「サービスメンバー(定義では、現役軍人であることなど)」に関しては、一部の例外はあるものの、前述保証金から家賃1ヶ月分引かれた金額(家具なしの場合最高額家賃1ヶ月分、家具付きの場合は2ヶ月分が限度)に引き下げられました。

ペットがいる場合で、大家がペットを許すときには法律上はペットに関する保証金は別途請求することが形式的には可能です。
ただ、そのペットが介助動物である場合には、一般的な条件と変えてはいけないので、保証金を別途大家が請求することはできません。
ここまでは基本です。

細かい例外にも注意

 いくつか上記の保証金に関する例外もあります。

たとえば、モービルホーム(土地に接着されていない移動できる住居)の賃貸借は保証金の上限は家賃の1ヶ月分とされています。
商用の賃貸借には、家賃何ヶ月分という制限は法律では規制されていません。
まだ、細かい例外はありますが、基本的には上記の家賃2ヶ月、3ヶ月分の保証金という限度を覚えておいてください。

求められた保証金は法律の範囲内か?

今回いただいている質問には「2ヶ月分の家賃と1ヶ月分の家賃をデポジット(保証金)として振り込みました」と書かれていますが、たぶん、本来2ヶ月分は保証金で、1ヶ月分の家賃前払いを求められたというのが正しいのではないかと思います。
かりに、2ヶ月分の保証金を求められたのであれば、それは、法律の範囲内になると思います。
ただ、もちろんその保証金が返金してもらえるかとは別問題であり、また次回以降考えていきたいと思います。

次回は前払いの家賃について考えていきたいと思います。
まだ続きますがこの質問は皆さんから色々お問い合わせをいただくところでもあります。

また、一週間、天気の変化が激しい時期ですが健康やコロナに注意してがんばっていきましょうね。

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作成者: jinkencom

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