トラスト作成、コスト高い?(1)_1381

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1381回 弁護士 鈴木淳司
Aug 29, 2023

 最近になって、またコロナの話が私の周りで出てきました。
私の所属する事務所の職員の家族も罹患して、また以前のような隔離をしたり、病院などでは入院患者が増えたりしているようです。
このところ、以前のような生活が戻ってきていましたし、一般的な社会の活動が正常化しています。
しかし、一方でコロナのことを少し私も忘れていたように思います。
少し気を引き締めてやっていかなければならないなと反省しています。
皆さんは、コロナのことは未だに注意して生活されていますか。

トラスト作成、コスト高い?(1)_1381

 さて、今回からまた、皆さんからいただいている新しい質問を考えていきましょう。

いただいている質問をまとめると、「先日、トラスト(信託)についてのセミナーに出席しました。弁護士の方が、トラストは作ったほうが良いということを説明されていました。しかし、トラストを作成するには、弁護士などに相談しなければならず、コストも高いことを知り、本当にトラストは作らなくてはいけないのか、迷っています。そこまで財産は持っていませんが、やはりお金を使ってでも、トラストをつくっておくべきなのでしょうか」という質問です。

終活もそのコストも永遠のテーマ

 最近はサボっていますが、私もトラストと遺言についてのセミナーを結構やったりしていましたし、できるだけわかりやすくトラストや遺言について説明をしてきました。
法律ノートでも何回もトラストや遺言は考えてきたと思います。
しかし、自分の死の準備をすることは永遠のテーマであり、法律も変わったりするので、質問も絶えませんし、悩むこともでてくると思います。
いつでも、ためらわずに法律ノートに質問をしていただければと思います。

 今回、質問されている方は、コストについて悩んでいらっしゃっているようですが、たしかに私もコストについてはしっかり考えておいた方が良いと思います。
今回考えていきましょう。

遺言作成はシンプル、トラスト作成は複雑

まず、遺言はかなり低額で作成することができます。
遺言はシンプルなものが多く、多くても10ページ程度の書類になると思います。
一方で、トラストというのは、セットアップする段階では後述しますが、複雑な仕組みを作る必要があります。
ですので、ページ数も50ページほどになることもあります。
弁護士にとっての仕事量も実際にトラストを作成するほうが増えると思います。
現在では、AIなどを利用して、遺言やトラストを作成することも可能ですし、とても精緻な書類がつくれるようです。
私は使ったことはありません。

トラストは作成過程が重要

ただ、遺言に比べてトラストをセットアップするためには、その過程が重要で、どのような財産をどのような形をつかって、如何に組み立てるのかを対話する必要性が増えることは避けられません。
そうすると、ご自身である程度勉強されていて、自動作成をされるのであれば良いのですが、一方で相談をしながら組み立てを行うことも重要だと私は相談を受けていて感じています。
トラストを作成するには、このように相談をするという過程が重要になる可能性があるので、その分でも弁護士の仕事量は増えることになるとは思います。
そうなると、ある程度はコストもかかるという部分があるのです。

遺言は法律要件を満たせば完成

 それでは、なぜトラストを作成することになると、複雑になり、コストもかかることになるのか、というのを考えてみましょう。

遺言というのは、人から人(または団体など)に財産を譲渡するための書類です。
人がその人の意思を明らかにするだけの書類ですから、誰が、どのような財産を持っていて、そして誰に対して財産を譲渡するのかを明記しておけば良いのです。

英米法でも、日本法でも、古くからある、財産を譲渡する制度であります。
何を遺言に書かなければならないのかは、法律で決まっていますので、その要件を満たせば立派な遺言になります。

一方で、トラスト(信託)というのは、遺言のように人から人に財産を譲渡するのではなく、トラストという箱をつくります。

次回ここから考えていきたいと思います。

 まだ、暑い日が続くところが多いですが、どうか暑さ対策をしながら秋を待ちたいと思います。
体調に注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。

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作成者: jinkencom

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