法律ノート 第1376回 弁護士 鈴木淳司
Jul 25, 2023
週末は私の誕生日があったので、自分で決めて、久しぶりにゆっくり過ごしました。
読みたい本を読んだりして、色々仕事の考え事を排除してのんびりしました。
それで週末法律ノートを書くのもお休みにしていたので、週明けに書いています。
今回は最近目にしたニュースについて私の考えについて書いてみたいと思います。
親権~アメリカと日本~_1376
数度、一緒に呑んだことのある元プロ棋士の橋本くんが、元妻のいる実家で傷害事件を起こして逮捕されたというニュースをみました。
新宿で呑んだのはもう10年以上前だと思います。
他の若い棋士に比べてやんちゃ感はありましたが、元気な若手という程度で、悪い子だとは思いませんでした。
結婚したのも子供が生まれたことも間接的には聞きましたが、本人から聞いたわけではありません。
彼が将棋界から去ったことを聞いたときは、あんなに天才的でじっくり守り抜く将棋をしていた彼が若くしていなくなるというのは衝撃でした。
才能は超のつく一流でした。
数度すでに名誉毀損で逮捕されていること、住居侵入し傷害(一部では殺人未遂と書かれている)をしていることなどをニュースで読みました。
有罪判決を名誉毀損で受けていることは事実として受け止めなければいけませんし、どこか自分のなかで歯止めがかからなくなっていたところもあると思います。
将棋界のなかでも、相談できる人はあまりいなかったのでしょうか。
人は皆そうですが、歳をとるにつれ、自分のことを注意してくれたり、本気で考えて怒ってくれる人がいなくなるものです。
私も、同様です。
若いときに色々私のことを考えてくれて、怒ってもらったおかげでなにか気づくことがあったものです。
橋本くんにしても、誰かに相談して、冷静になれる環境がなかったのかな、と寂しく思います。
私とは面識があるのですから、私に早いうちから相談してくれれば良いのに、と悔しく思います。
彼の犯罪行為に肩入れする気はまったくありませんし、罪は償うべきです。
しかし、今回の一連の原因のことはどうも生まれた子供さんの親権問題にあるようです。
子どもの養育は両親どちらかになる日本
日本の離婚制度において、子供の養育は親のどちらかの親権に服することになっています。
そして、通常母親が親権者になります。
橋本くんの場合も母親が親権者になったようですね。
そうすると、母親が主に子供の人生の帰趨を握ることになります。
今回の母親も実家に戻り、橋本くんからいえば元義理の親と一緒に暮らしていたことがうかがえます。
面会交流制度を使って、子供に会えることもできたのかもしれませんが、子供にしても母親と母親の親のところでほぼ生まれたときから育っていれば、自分から面会したいとは言わない可能性も高いと思います。
実際どのような状況かわかりませんが、この子供に会えないということが、一連の犯罪行為の引き金になっていたように思います。
どんな親でも共同親権を持てるアメリカ
アメリカでは、基本的に子供がいれば共同親権です。
たとえば、親が犯罪者であろうが、麻薬中毒患者であろうが、基本的に親権を拒絶されることはありません。
両親がそれぞれ親権を持ち、子供の生育に関与していきます。
そして、裁判所がずっと関与していきます。
どの程度双方が子供と時間を過ごせるのか、どのような教育を受けさせるのか、など、両親が話し合って決め、話し合いがうまくいかなければ裁判所が判断をするということになっています。
このような共同親権制度があったとしても子供の連れ去りなどの問題が絶えないのが現状です。
ただ、少なくとも、アメリカでは、何も問題がなければ、親権は5分5分になるのが原則です。
このように、アメリカの共同親権が常識という立場から見ると、橋本くんは、どのくらいのパーセンテージで子供と時間を過ごしていたのだろう、とか、どのくらい子供の生育についてかかわっていたのだろう、と思いを巡らせてしまいます。
また、調停員や裁判所はどの程度関与していたのだろうとかと考えてしまいます。
橋本くんの性格等は置いておいて、橋本くんがどの程度子供との関わりを持っていたのか、それに対して裁判所がどの程度関わってくれていたのかなどを、いつか橋本くんに直接聞いてみたいものだと思います。
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