法律ノート 第951回 弁護士 鈴木淳司
Aug 12, 2015
今日は、一回皆さんからいただいている質問にお答えするのを休ませていただき、調停(Mediation)において感じることを考えさせてください。調停というのは、仲裁と似ていて非なるものですが、代替的紛争解決手段(AlternativeDispute Resolution、またはADRといいます。)と呼ばれるもののひとつです。つまり裁判所で裁判を通じて事実判断を仰ぐのではなく、裁判所外で紛争を解決する手段です。
仲裁というのは、ミニ裁判であって、相対する当事者が証拠を出し合って、仲裁人の判断を仰いで事実に決着をつけます。調停というのは、相対する両者がお互いに譲歩をしながら落とし所を見つける紛争解決手段であります。裁判所から仲裁をするように命じられることもありますし、当事者が積極的に調停を利用して、紛争を解決しようと試みることもあります。このところ、私も裁判手続の一環として調停を利用することが多くあって、感じることがありました。
カリフォルニア州弁護士コラム「調停で思うこと」(1)_951
調停というのは、調停人が仲立ちをして、紛争当事者を説得したり、事件を解析しながら、事件を合意解決する方法です。
調停人は弁護士だったり、元裁判官であったり、紛争の内容が専門的な場合、たとえば建築関係であれば、建築関係の専門家だったりしますが、調停人としての資格はありません。調停の場所も問わないので、法律事務所を利用したり、裁判所を利用したりと様々なパターンがあります。
紛争当事者が基本的には合意しなければ開かれませんので、時間についても自由に設定ができるのが基本です。連邦裁判所では、和解をするのに裁判官が仲立ちをすることもよくありますし、州の裁判所でも事実審が近くなると裁判官が仲立ちをすることもあります。
アメリカでは裁判中に調停が設定されるのが一般的
調停は紛争当事者が合意に至れば、紛争はそこで解決となり、裁判も終わります。ですので、ある意味手軽にある程度納得のいく結果を得ることが可能になる場合もあります。
調停が不調に終われば、裁判をするということになるわけです。日本では家族事件などでは調停前置主義といって、調停を経なければ裁判ができないというシステムになっている場合もあります。アメリカでは、基本的に裁判中に調停が設定されるというのが一般的です。
調停に出席すると、相手方当事者といきなり対峙することはなく、別室に分けられて、調停人が押したり引いたりして当事者や弁護士を説得していきます。「相手方はこう言っているがどうなんだ」とか「もう少しこういう観点から事件をみると、違う結果になるのではないか」などと進めていくわけです。
弁護士にとっても悪くない機会
調停が成立しないとしても、相手方がどのように考えているのか、どのような証拠を持っているのか、など情報入手の機会としても使えるわけです。弁護士にしても、事件の見通しや勝算などを相手方の主張を聞きながら考えられるわけなので、悪くない機会なのです。
調停はどのような事件でも使えます。家族事件にかぎらず、契約の債務不履行事件、ビジネスの紛争、不動産の紛争、知的財産の紛争、など、紛争当事者が合意すれば、どのような事件でも有効に利用が可能です。
調停で解決するメリット
調停によって事件を解決するメリットについて、法律家は語ります。文献にもたくさん書いてあります。事実審で紛争を解決すると、勝ち負けがはっきりする。そうすると控訴される可能性もあるし、時間がかかる。勝ち負けというのは、陪審員制度があるので、はっきり勝つとは言えない。そうすると、不安定な結果を待つよりも調停で解決した方がはるかに安心できる。
また、勝ち負けをはっきりさせると、負けた側がお金を払わなければならないとすると、自発的に払わない。回収するのも大変である。なので、調停は有効なのである、といった論調のものが多いわけです。実際に的確といえていると思います。
調停人は、このようなポイントを調停において力説するのです。事件において「絶対勝つ」ということは弁護士も言えませんし、ある意味このような事件の帰趨の不安定さについて論じるのは悪いことではありません。
ところが、お金のことに関して調停人が言うことについて、私も20年間弁護士をやっていて、「うむ~」と思うことがあります。次回続けて考えていきたいと思います。
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