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大統領令による出生地主義の制限について_1134

法律ノート 第1134回 弁護士 鈴木淳司
Nov.6、2018

 今回は、皆さんからの質問にお答えするのを一度休ませていただき、法律に関する最近のトピックを考えてみたいと思います。

大統領令による出生地主義の制限について_1134

 明日(2018年11月6日)はアメリカ議会選挙が行われます。同時に多数の住民投票も各州、各郡で行われる大事な日であります。今年は、現大統領就任後、初のリトマス試験紙になるため、大統領は勝機を固めるべく様々なパフォーマンスを提供してくれています。

アンカーベビーとチェーンイミグレーション

 アメリカの南では難民申請を願ってアメリカに向けて進んでいるキャラバンのことを取り上げ、5000人以上の軍隊を国境に送っています。複数の退役幹部軍人がこれは明らかな政治的な軍事利用だと厳しく批判していますが、大統領は意に介さず税金を投入しています。

 現大統領は当選前、移民問題を大きく前面に押し出していました。その結果、正当な難民申請を目指している外国人に対しても、強く出ていることは明らかですが、もう一つ出生地主義の制限について中間選挙前に大々的にマスコミのインタビューで再度謳いました。「アンカーベビー」や「チェーンイミグレーション」を許すな、というものです。前者は、子供にアメリカ市民権を取らせ、それをきっかけにアメリカに移民をしてくること、後者は、一人がアメリカ市民権を取るとその家族もアメリカに移住してくること、を指します。この国は、現状の連邦制になってから歴史は浅く、現大統領の妻を含めほぼ後者のような形でアメリカに入ってきています。これを廃止させようとしているのです。

アメリカ国内で出生すればアメリカ国籍

 大きく分けて、世界の国々には、生まれた人に国籍が認められるには2つの方法があります。一つは出生主義、もう一つは出生地主義です。出生地主義を認める国家は、形は様々ですがアメリカを含め30以上あります。(現大統領がインタビューで、「このような出生地主義を取っているのはアメリカだけだ」と言っていたのは間違っています。)日本は出生主義を歴史的にとっていて、日本人の子でなければ日本人には出生時になれないのが原則です。

 したがって、現在アメリカ大統領が言っていることは、日本人には実は親和的に聞こえると思います。アメリカでは、アメリカ国内で出生すれば、アメリカ国籍が与えられます。移民国家であるアメリカではほぼ当たり前に受け止められていました。

これまでまもられてきた出生地主義に制限が?

 今回、現大統領は、大統領令によって、この出生地主義を制限する、とインタビューで明言しました。中間選挙前というタイミングは偶然なのでしょうか。以前、現政権は、アメリカに渡航禁止をする国を包括的に指定する大統領令を発令し、最高裁判所まで争われ、内容は一部改定したものの、大統領令が支持された過去があります。今回も本当に大統領令を発令することで出生地主義を制限できるのでしょうか。

 アメリカは立憲国家ですので、憲法が最高法規であります。その憲法の修正14条は1868年に現在の最終型として議会で制定されました。この修正が行われるまでは黒人であるがゆえにアメリカ市民として認められなかった過去があります。修正14条の原文は、該当する箇所について、この原稿の最後に記載しておきます。

「アメリカ合衆国で生まれた、または帰化したすべての人は、合衆国の管轄に服する場合、米国籍保持者である(筆者訳)…」とされています。米国で司法試験を受けるには、修正5条などとともに、暗記が要求されるほど、重要な条文です。

 1898年には、この修正14条が試された事件があります。中国籍の両親を持つ人が中国に滞在後、米国に再入国拒否され、最高裁判所まで争って、修正14条に基づいて、国籍を認められました(United States v. Wong Kim Ark (1898))。その後、この根本的に米国で出生した者に米国籍を与えるという考えは変更されていません。米国最高裁判所は、修正14条で認められた権利を文言通りに解釈しながら、広く権利を認めてきたのです。

 この流れで、1982年に判決に至ったPlyer v. Doe 457 U.S. 202 (1982)という事件では、不法移民の子で、米国籍を持たない子にも、修正14条の保護が及び、不法だからといって、教育費の削減をすることはできない、と判示されました。不法移民の子でも修正14条にいう「人」である、と判決文にあります。

このように、修正14条で出生地主義はかなり広汎に守られてきましたし、不法移民に対する修正14条の適用も最高裁判所判例で明確になっています。

「合衆国の管轄に服する場合」の解釈をめぐる議論

 しかし、上記修正14条の訳した一部である「合衆国の管轄に服する場合」の解釈について、ごく少数の政治家や法律家が噛みつきます。上記1982年の判決において「合衆国の管轄に服する場合の解釈は、判決本文ではなく、脚注で取り上げられているだけなので、少数派は、まだこの部分について、最高裁判所は判断していない、と主張しています。

 すなわち、不法移民であれば、合衆国の管轄に服していないと言えるというのです。1982年判決の根本的な趣旨に反している主張なので、簡単に通る考え方ではありませんが、このような議論の余地があり、これを現政権が使ってくる可能性は残ります。

 上記を見ると明らかですが、議会が制定した修正14条、司法の最高機関である最高裁判所が決めた判決が存在するなか、三権の一つである行政の長が大統領令を出すだけで、人権を制限できるのか、というとなかなか難しいことがわかります。

 今まで、まったく眠っていた問題ですが、司法界でもこれから議論されていくことになるトピックかもしれません。最高裁判所にも、現政権が指名した判事が二人入っています。今後上記を踏まえて注視したい問題ですね。 

(米国憲法修正14条原文抜粋)
All persons born or naturalized in the United States, and subject to the jurisdiction thereof, are citizens of the United States and of the state wherein they reside. No state shall make or enforce any law which shall abridge the privileges or immunities of citizens of the United States; nor shall any state deprive any person of life, liberty, or property, without due process of law; nor deny to any person within its jurisdiction the equal protection of the laws.


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アメリカで万引き、移民法上の影響は?[4]_1113

法律ノート 第1113回  弁護士 鈴木淳司
June 10, 2018

 夏になることにプロバスケットボールの最後の試合になるのですが(これからは野球のシーズンです)、ベイエリアのチームが優勝しました。最後の試合も見ましたが、ちょっと一方的な感じはしました。優勝はベイエリアに住んでいる人にはとても嬉しいことと思います。私も同じです。しかし、負けたチームの主力選手がインタビューで、楽しかった、幸せだと言っていた姿に私はスポーツの素晴らしさを感じました。

アメリカで万引き、移民法上の影響は?[4]_1113

 さて、「私の配偶者(妻)についての質問です。私(夫)は日本からアメリカに赴任しています。妻も私と一緒に一昨年から渡米してきました。子供はいません。私は忙しく家を空けることも多いことも影響していたのかもしれないので、反省していますが、妻が万引きで裁判になるようです。妻はストレスから商品をポケットに入れてしまったということです。商品は高額なものではありませんでした。このような事態になった場合、法律上どのように扱われるのでしょうか。また移民法の観点も心配しています」という質問を考える今回は最終回にしたいと思います。

強制送還になる可能性は2つ

 前回までで、司法と行政(移民法制度)の2つ違う角度から考えてきました。行政に関して、強制送還となる事由はどのようなものか考えてきました。道徳違背の罪という移民法独特の考え方も考えました。窃盗犯でも、「道徳違背」と考えられる類型もあり得るということは理解していただけたと思います。流動性があるところですから、今後もしっかり見ていかなければならないところです。

 今回は、今回の事例を使って、強制送還などの問題が生じる可能性があるのかを考えていきたいと思います。

 現在の移民法において、まず有罪となったことで強制送還になる可能性は大きくわけて2つあります。一つは、最終的に入国して5年以内に道徳違背の罪を犯して、その罪が重罪であり、道徳違背の罪の場合です。もう一つは、アメリカ滞在中に2つ以上の独立した道徳違背の罪で有罪になった場合です。

 今回質問されているケースでは、最終入国から5年以内ということは明らかです(この「最終的な入国」に関しても、争える場合もあります)し、初犯ということです。そうすると、1つ目のカテゴリーでどのように判断されるかということになります。

万引き一罪で強制送還にされる事例はあまりない

 まず、重罪(禁錮1年以上の設定がされている罪に問われている)かどうかという点ですが、微罪になります(前回までを参照)。ですので、この点ですでに強制送還の対象から外れて、「セーフ」です。さらに、道徳違背の罪かどうか、というポイントですが、移民裁判の審判例で時事変わっていくのですが、一般論的に捉えると、罪に問われている行為者が、重度の、身体、財産、などに損害を加える意思があると道徳違背と移民法では判断されます。したがって金額が軽微であれば、道徳違背とはされない事例ではないかと思われます。

 このように考えると、一般的に万引き一罪で強制送還にされる事例は現状でもなかなかないと思われます。一方で、飲酒運転やドメスティックバイオレンスで逮捕された場合、最近ではビザそのものを無効化して、もう一度自国に帰って申請をさせる方法も取られています。これについてもまた機会を見つけて考えていきたいと思いますが、少額の万引き事例で、すぐに強制送還になったり、ビザの取消をされたりしている事例はまだ見かけません。

「道徳違背」の罪については専門家に相談を

 とにかく、今回考えた移民法における「道徳違背」の罪というのは、なかなかわかりにくいですから、専門家に相談して、悩みを解消するのがとても大事な分野だと思っています。強制送還をすぐにされるということはない事例ですが、次回のビザの取得などにも影響しますので、気をつけて考えていきたいところですね。

 今回は、この辺にして、また移民法と刑事法にかかわる質問を待って考えていきたいと思います。次回はまた、新しいトピックを考えていきましょう。

 天気がよくなりましたが、カリフォルニアでは火事に注意しながらまた一週間太陽を楽しんでいきましょうね。


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アメリカで万引き、移民法上の影響は?[3]_1112





法律ノート 第1112回 弁護士 鈴木淳司
June 02, 2018
ラジオですでに今年最初の台風がアメリカ沿岸で発生したと報じていました。雨も少なくここ数年天候の異常による火事などの自然災害が続いていますが、今年はどうなることやら、です。
カリフォルニア州はかなり乾燥した夏になりそうで、もう少し雨が降ってくれると良いと思っているのですが。ベイエリアはプロバスケットボールの試合で盛り上がっていますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
アメリカで万引き、移民法上の影響は?[3]_1112
さて、今回も前回に引き続き、次の質問を考えてみます。
「私の配偶者(妻)についての質問です。私(夫)は日本からアメリカに赴任しています。妻も私と一緒に一昨年から渡米してきました。子供はいません。私は忙しく家を空けることも多いことも影響していたのかもしれないので、反省していますが、妻が万引きで裁判になるようです。妻はストレスから商品をポケットに入れてしまったということです。商品は高額なものではありませんでした。このような事態になった場合、法律上どのように扱われるのでしょうか。また移民法の観点も心配しています」という質問です。
 
万引きを移民行政の視点で考える
前回までで、司法的な観点で考えましたが、今回は移民行政の観点から考えてみたいと思います。
まず、今回質問をされている方のように一時的にアメリカにお住まいの方は、ビザまたは永住権などをもってアメリカに滞在されていると思います。
すなわち、アメリカのパスポート(市民権)を持たない状況でアメリカに滞在されていることになります。
こういった方々はアメリカから見ると「外国籍」ということになり、市民権保持者とは別の移民法が適用されます。
 
市民権者か、ビザ・永住権滞在者か
米国籍の方であれば、前回まで考えた司法による判断を受ければその事件に関することは終了といっても良いのですが、外国籍の外国人であると、移民法の絡みも考えなくてはいけません
移民法はかなり入り組んだ規定がなされています。
毎年のように法律がかわり、基本的には移民行政を律する法律ですから、行政の通達や、大統領令によって運用が変わります。
 
移民法の運用は厳しさを増している
もちろんみなさんご存知でしょうが、現政権は移民行政に関し、今までにない厳しさで入国制限をしていますし、現に移民に関する大統領令もいくつか出されているので、移民法そのものが変わらなくても、移民行政の運用はかなりドラスティックに変わってきています。
 
強制送還事由に該当するか
外国籍の方々に移民法は適用されるのですが、その内容としてひとつ挙げられるのが強制送還事由に該当するかどうか、という論点です。
ここで注意が必要なのは、アメリカ国外にいる外国人にビザ・永住権が発給されるかどうかを判断する入国禁止(Inadmissibility)事由と、すでにアメリカ国内にいる外国人をアメリカから自国に強制送還(Deportation)する強制送還事由とは、2つ別のものであるということです。
今回は、すでにアメリカ国内にいる外国人が強制送還されるかどうか、という論点なので、強制送還事由に絞って考えたいと思います。また、皆さんから、移民法に関する質問を待って、入国禁止事由については考えたいと思います。
 
窃盗が原因で強制送還はあるのか
さて、今回のような窃盗事例、いわゆる万引き事例について強制送還があり得るのかどうか以下考えていきたいと思います。
まず、一般的に強制送還になりえる根拠はいくつかありますが、刑事事件で有罪になった場合に一定の要件を満たしてしまうと強制送還になることがあります。
はじめに、一般論を考えていきます。移民法上強制送還になる場合は主に以下の2つの場合があります(8 USC § 1227(a)(2)(A) 参照)。
まず、一つの罪で強制送還事由になる場合があります。
(1)有罪となり、
(2)道徳違背の罪に該当する場合、
(3)法定刑が1年以上の場合、
(4)アメリカ入国より5年以内に(1)となった場合
です。
この5つの要件を満たすと強制送還になる可能性があります。
もうひとつの場合は、
(1)2つ以上の有罪となることで、
(2)2つ以上の罪が包括的にひとつの行為ではなく、独立した2つの行為から有罪になっている、という場合に強制送還になる可能性があります。
この法律をみると、1つの罪で強制送還とするには、色々要件を揃えないといけないわけですから、逆の立場、すなわち弁護士から見ると色々防御をする方法も見えてきます。
次回、今回の事由を使って、この2つの罪の要件についてさらに考えていきましょう。
カリフォルニアは天気の良い週末になりそうです。太陽を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。


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アメリカ市民に仕事を休んで投票に行く権利はある?_1089

法律ノート 第1089回 弁護士 鈴木淳司
Dec. 27, 2017

 皆さん、クリスマスはいかがお過ごしになりましたか。いろいろな宗教がありますが、クリスマスというのは世俗化しているので、街全体がほんわかムードになるものですね。東海岸は雪がすごかったようですが、今年ベイエリアは、例年に比べて暖かかったように思います。とにかく、今年の冬は雨が少ないですので、来年また干ばつの問題が発生しないと良いなと少々憂慮してしまいます。

アメリカ市民に仕事を休んで投票に行く権利はある?_1089

 さて、もう年末年始ですが、緩めずに皆さんからいただいている質問を考えていきたいと思います。いただいている質問をまとめると「最近、外国人への締め付けが厳しくなっているという風潮もあり、思い切ってアメリカの市民権をとりました。市民権があると、各種の投票なども参加できることは理解しています。ただ、仕事を休んで投票をする権利、というものはあるのでしょうか。また投票に行くと、仕事に行けないので、その分給与は減るのか、有給なのでしょうか」という質問をいただきました。

アメリカ市民権を得ることのメリット

 アメリカ市民権を得るには、アメリカ国内で出生することが一つの道ですが、帰化することも一つの道であります。帰化するには、永住権をまず取得し、場合によって、3ないし5年間待つと、市民権(帰化)申請が可能になります。アメリカ市民権を取ると、永住権と比べるといくつかメリットがあります。一つは、自国がアメリカになるわけですから、強制送還をされない、ということがありますし、アメリカ国外であっても、子供が生まれると市民権者となります。ちなみに、アメリカ大統領だけは、帰化した市民権者はなることができません。アメリカで出生しないとならないのですね。

 市民権を得た場合、市民しか与えられない権利義務が生じる面もあります。今回の質問にある選挙権も一つですし、アメリカでは陪審裁判の陪審員になることも一つあげられます。選挙権というのは、かなり重要な権利であって、政治の行く末を決める一票を市民は握っているのです。

各州に選挙に関する法律がある

 この選挙権ですが、アメリカのすべての州で、投票に行くための休暇取得について、何らかの規定はされています。州によっては、投票に行くための時間について、無休のところもあれば有給の規定をしているところもあります。ですので、各州の選挙に関する法律は必ず確認する必要があります。

 また、就業規則にも通常記述がありますので、これもチェックしたいところであります。多くの州では、選挙について、2時間までは欠勤を許すという書き方のところが多いですが、4時間のところも存在します。

カリフォルニア州の例

 ここで、カリフォルニア州の例を見てみましょう。カリフォルニア州選挙法(Election Code)第14000条以下には、以下のように定められています。

 カリフォルニア州では(1)最大で二時間の休暇が権利として許されている。(2)この(1)でいう二時間は、就業時間の最初か終わりの部分で取る必要がある。(1)と(2)の範囲であれば、有給休暇として、賃金が支払われる。となっています。

 ただし、例外があって、就業時間外に投票にいくことが可能であれば、休暇取得は認められないことになっています。また、投票のための休暇取得は、少なくとも2勤務日前に雇用主に通知しなければならないということになっています。

選挙のための有給休暇取得は可能

 このようにある程度詳しい規定がなされているので、仕事を休まないと投票に行けないという場合には、権利行使のための担保が決められています。ですので、雇用主に通知をすることは前置ですが、ぜひ選挙に行かれてみてください。

 ただ、もちろんですが、選挙のための有給休暇取得は、選挙に行くことが前提ですので、かりに、選挙に行くと偽って、実際は別のことをすることは許されませんし、懲戒の対象になります。したがって、純粋に休むために、この有給休暇を取ることは許されていませんので、注意されてください。

 もう、次の法律ノートで2017年が終わりです。皆さんからいただいている質問でまだお答えしきれていないものもたくさんあります。申し訳ありませんが、来年まで持ち越しとなりそうです。ただ、忘れているわけではなく、私の原稿が追いついていないだけなので、少々お待ちいただければと思います。年末は色々忙しいですが、健康に留意してもう少し2017年、がんばっていきましょうね。


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米国永住権者と結婚。配偶者の永住権は?[2]

法律ノート 第1067回 弁護士 鈴木淳司
July 24, 2017

 
友人や縁ある方から勧められた「決意なき開戦」(堀田江理著)、大沼保昭や和田春樹著の慰安婦問題に関する本を読み、国際社会における日本のこの80年間程度の歩みを学んでいます。こういった近代史を読み解いていくと、色々な想いが湧いてきます。日本という国は、多様な政治思想がぶつかりあい、普通の人々がそれに巻き込まれてきたという切なさを感じています。一方で、いつの時代でも慈愛の心を持ち平和を願うバランスのとれた優れた思想を持った日本人が存在していることに感心しています。本は頭の肥やしですね。
 
米国永住権者と結婚。配偶者の永住権は?[2]
さて、前回から考えてきた「私(男性)は米国永住権を持っている日本人ですが、日本から留学してきている彼女ができました。そこで、結婚をすることによって、彼女にも永住権を取ってあげられたらよいな、と思っています。永住権の申請はどの程度時間がかかり、どのような手続きをすれば良いのか教えてください」という質問について、続けて考えたいと思います。
 
配偶者永住権と「待ち時間」
前回は、配偶者の永住権申請をする際に、待ち時間が現在数年発生しているというところまで考えました。この「待ち時間」について今回考えます。
配偶者が今回質問されている方のように、外国籍(日本国籍)を持ち、ビザでアメリカに入国している場合、基本的に婚姻をしたからといってすぐに合法的にアメリカに滞在できるわけではありません。
 
別に米国の滞在資格が必要
永住権の許可がおりるまで、何らかの合法的な滞在資格(一般的には非移民型のビザ)を維持する必要があります。もちろん、日本に一旦戻り、永住権の申請を待つことはできます。米国に滞在し、永住権の申請を待つ場合には、米国に滞在する合法的な資格が必要となるのです。
今回の事例ですと、この「待ち時間」の間に、これから永住権を申請する配偶者が学生ビザを継続して維持していれば問題がありません。他にも就労ビザなどの維持をしていれば問題がないことになります。
 
具体的な事例
ここで、最近目にした事例をご紹介しておきたいと思います。
Aさんは、配偶者である永住権保持者のBさんのスポンサーで永住権を申請することになりました。永住権申請書を無事に提出し、「待ち時間」となりました。Aさんは、この「待ち時間」の間に、米国内で就労し、金銭を得ていました。ほそぼそとした自営業者です。税務申告を近年までしていませんでしたが、永住権申請が近づいてきたこともあり、税務申告を遡って行いました。
ところが、永住権の申請が終わって、やっと面接にこぎつけたときに、面接官から、税務申告について指摘を受けました。すなわち、永住権の申請の審査に、移民局は税務申告についても調査をしていることになります。
申請は却下とはなりませんでしたが、許可を得るためには、遡って申告をしたことにより発生した過去の税金を支払わなければ、永住権は認められない、という条件を付けられました。もちろん一括で税金を払え、ということではなく、国税局と分割の合意ができているということでも構わないという話にはなっていました。
 
税務申告と移民法上の審査
家族ベースの永住権申請については、税金の支払いうんぬんを聞くことは、完全な裁量になっていましたが、この事例では税務申告を許可の条件にされてしまったということになります。近時、移民関係の審査が厳しくなってきたので、このような事例がでてきているのでしょうが、これから永住権の申請をされる外国人の方は気をつけなければならないポイントです。
永住権申請の「待ち時間」において、学生ビザを維持しているだけであれば、税務申告のうんぬん、という問題は発生しないと思われます。しかし、一方で、何らかの収入を米国内で得ている申請者は、税務申告をする場合、ちゃんと税金も納めていることが許可の前提になります。
 
データベースが関連付けは密に
かなり政府内のデータベースが連動している時代になっていますから、移民関係の申請について、移民関係の書類の整備だけではなく、税金など他の政府関係の申請者の義務についても、しっかり書類を整備することが求められているということに注意してください。
 
 
次回からまた新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。暑い日が続きますが、健康に留意して水分を多く取りながらまた一週間がんばっていきましょうね。
 

米国永住権者と結婚。配偶者の永住権は?[1]

法律ノート 第1066回 弁護士 鈴木淳司
July 20, 2017

今週末、飛行機のなかで、たぶん「エアーマーシャル(航空保安官)」と呼ばれる人を現認しました。同時多発テロ事件以降、アメリカに所属する飛行機には、マーシャルが隠密に乗っていると聞いていました。飛行機が着陸し、降機する前に荷物を取り出しますよね。通路を挟んで反対側に座っていた人が荷物を取り出すために背伸びしたとき、腰のシグ・ザウエルの自動拳銃が見えました。ごく普通の服装をしていた彼は、考えると機内で酒を飲んでいませんでしたね。こういう人がいるので、飛行機テロの牽制になるのでしょうね。でも、隣に座っているのは何かあったときにちょっとコワイなと思ってしまいました。
 
米国永住権者と結婚。永住権は取得できるか
 
さて今回から皆さんから新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。
いただいている質問は「私(男性)は米国永住権を持っている日本人ですが、日本から留学してきている彼女ができました。そこで、結婚をすることによって、彼女にも永住権を取ってあげられたらよいな、と思っています。永住権の申請はどの程度時間がかかり、どのような手続きをすれば良いのか教えてください」というものです。
 
配偶者永住権の申請
移民関連の法律や行政規則については、随時、別途「現役移民弁護士ブログ(じんけんニュース)」というところで取り上げていますので、そちらに質問をしていただくほうが良いのですが、今回の質問に関して、最近移民局が目を付けて聞いてきているポイントがあるので、そのポイントを中心にしながら皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
今回、永住権保持者の配偶者永住権申請というパターンについて生じる問題について考えていきたいと思います。
 
永住権は永住の「許可」。権利ではない
今回質問されている方は永住権をお持ちです。一般的に永住権というのは、米国に永住をすることができる許可をもらっている外国人に給付されるもので、正確には権利ではなく、永住の「許可」であります。
ですので、運転免許証(ライセンス)と同じように、国や(州から)永住する、とか、運転するとか、一定の行為を「許可」されているだけなのです。
だれが永住「権」という言葉を使いだしたかわかりませんが、ニュアンス的には「権利」ではなく、永住する「許可」が与えられているだけ、ということになるのです。なぜこのようなお話をするかというと、人によっては「永住する権利を持っているのだから」なぜ、配偶者もすぐに永住できないのだ、と安易に考える方もいるからです。
 
市民権との違い
アメリカ市民権は、国民としての「権利」ということになり、永住許可とはかなり色合いが違います。市民権は、国民の「権利」ということで間違いありません。
誰にも奪われない権利ですし、政府でも「許可」ではないので、取消しや制限をすることが基本的にはできません。
市民権と永住許可というのは、たしかに、「米国に住むことができる」という面ではかなり性質は似ていますが、実際の法律的な権利についてはかなり違う面があります。永住権保持者というのは、結局、外国のパスポートを持っているのです。
 
申請処理は市民権保持者を優先
市民権と永住許可というのは、法律的には違う性質があり、市民権保持者をまず優先するというのは、国として当たり前なわけです。そうすると、移民法でも米国市民権を持っている人の申請を優先することになります。
米国の移民局は「優先順位」を行政規則で決めていて、第一順位は、米国市民の配偶者、第二順位は、米国市民の近親者、そのあとに、はじめて永住権の配偶者申請ができることになっています。
優先順位というのは、順位が高ければ優先的に処理されるということです。現在で第三順位は、申請の処理がはじまるまで、約2年待つことになっています。
この「待つ期間」について少し考えておきたいことがあります。
 
 
ここから次回続けて考えていきたいと思います。
 
夏休みを取られている方もいらっしゃると思いますが、今年はかなり熱中症にやられているという人の話を聞きます。陽に当たるのは気持ち良いですが、疲れますし、さらに病気になっては困りますので、水分を取り注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。