アメリカ永住権と市民権の違い(1)_1287

サンフラン SF滞在

【JINKEN.COM事務局より|2026年10月 追記】

この記事は、鈴木淳司弁護士が2021年10月に執筆した法律ノートです。新型コロナやステイホームなど、本文中の時事的な表現は執筆当時のものです。本文は執筆当時の趣旨を保ったまま、表記と用語を整えています。その後の制度の動きや補足は、本文中の「事務局注」としてお示ししています。


法律ノート 第1287回 弁護士 鈴木淳司
October 31, 2021

私の事務所に所属している日本の弁護士と、最近まで所属し、現在は日本で執務を再開した日本の弁護士が、そろって2021年夏のニューヨーク州司法試験に合格しました。おめでとうございます。身内の合格は格別ですね。二人とも、私には真っ先に知らせてきました。

別に私は、弁護士かそうでないかで人の評価を変えることはないのですが、本人たちにしてみれば、勉強してきたことの一里塚でうれしいでしょう。これで、私も酒を飲む機会が増えるのでうれしいです。

ただ、試験は受かってなんぼで、この業界は、実務家になるならその免許に基づいた実務をしなければ意味がありません。自分はこの免許に基づいて何ができるのかを考えながら、今後も実務に接してもらいたいものです。

まあ、ニューヨーク州の免許を持っていても、カリフォルニア州ではまったく意味がないので、次は全米で一番の難関といわれるカリフォルニア州の試験にもチャレンジしてもらいたいものです。


さて、今回から、新しくいただいているご質問について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

アメリカ人の夫と一緒にカリフォルニア州に住んでいます。すでに子どもたちは巣立ち、夫と二人で暮らしています。私は日本人で、夫と結婚する際に永住権を取得し、現在も永住権のままです。コロナ禍になる前は毎年日本に里帰りをしていたのですが、コロナ禍のなか身内を亡くしたこともあり、これからの老後はアメリカで夫とゆっくり過ごそうと思うようになりました。今持っている永住権を、アメリカ市民権にするべきか迷っています。市民権を取得するべきなのでしょうか。

ステイホームが、将来を考えるきっかけに

似たご質問は、ほかにもいくつかいただいています。

コロナによって生活様式が変わり、特に旅行や国境をまたぐ行き来が制限されてきました。ステイホームが長く続くなかで、人々の考えもいろいろと変化してきたのでしょう。それぞれの人生ですから、ゆっくり考える時間もあったのではないでしょうか。

今回のご質問は、つまるところ、アメリカで暮らし続けるうえで市民権を取得するべきか、永住権のまま暮らすのか、という内容だと思います。

普段の生活では、永住権と市民権に大きな違いはない

ご質問者は、永住権でアメリカに暮らすことの不都合については特に書かれていませんでしたが、普通に生活するうえでは、市民権でも永住権でも、そこまで違わないのではないでしょうか。

しかし、もちろん要所では違いがありますので、以下で考えていきましょう。

違い1:強制送還されるかどうか

まずは、移民法の観点から考えていきましょう。

アメリカ国内で何か罪に問われると、永住権保持者は、日本(またはパスポートを持っている国)へ強制送還される可能性があります。市民権を取得すると、強制送還されるような状況はなくなります。

もちろん、すべての罪について強制送還が認められるわけではありません。対象となるのは、移民法が定める一定の重い犯罪に限られますので、ある意味、よっぽどの場合に限られます。

【事務局注(2026年10月)】
強制送還の対象となる犯罪は、移民法(INA §237(a)(2))に類型が定められています。主なものは、加重重罪(Aggravated Felony)、道徳違背犯罪(Crime Involving Moral Turpitude)、規制薬物に関する犯罪、ドメスティック・バイオレンスに関する犯罪などです。日常の軽微な違反がただちに該当するわけではありませんが、どの類型に当たるかは、罪名だけでなく州法上の要件や刑の内容によって個別に判断されます。(以上、事務局注)

アメリカ市民権を取得する2つの方法-出生と帰化

ここで、市民権を取得する方法には、原則として2つの道筋があります。1つは出生によるもの、もう1つは帰化によるものです。

アメリカでは、アメリカ国内で生まれればアメリカ国籍が与えられます(出生地主義)。一方、日本は血統主義といい、親の国籍によって子の国籍が決まります。アメリカとは、制度に根本的な違いがあります。

永住権を持つ外国人が市民権を申請する場合は、帰化(Naturalization)という方法によることになります。帰化によって市民権を取得すれば、基本的に強制送還されることはありません。ただし、帰化の申請で虚偽の情報を提供していたことなどを理由に、市民権が取り消されることもあり得ますので、絶対ではない点に注意したいところです。

【事務局注(2026年10月)】

出生による市民権について
2026年6月30日、連邦最高裁判所は、出生による市民権を制限しようとした大統領令を憲法違反と判断しました。アメリカ国内で生まれた子に市民権が与えられる扱いは、引き続き維持されています。また、国外で生まれた場合でも、親がアメリカ市民であれば、一定の条件のもとで出生時に市民権を得ることがあります。

帰化の主な要件について
帰化の申請には、永住権を取得してから原則5年、アメリカ市民の配偶者と婚姻・同居を続けている場合は3年の継続居住が必要です。
あわせて、その期間の半分以上アメリカに実際に滞在していることも求められます。

6か月を超える出国は継続居住が途切れたとみなされることがあり、1年以上の出国では原則として途切れます。帰化を考えている方は、長期の日本帰国等の予定とあわせてご検討ください。(以上、事務局注)

違い2:長期の出国後の再入国

次に、移民法の観点から市民権と永住権で大きく違うのは、外国に長く滞在したあとの再入国です。

市民権保持者であれば、アメリカから長期に離れても、再入国についてなんら制限はありません。自分の国に帰るわけですから。

一方、永住権保持者には、アメリカとは別に「自国」があるわけですから、長期間アメリカを離れると、再入国の際に「今後もアメリカに永住する意思があるのか」を確認されることになります。ですので、永住権をお持ちの方が長期間アメリカを離れる場合には、再入国許可が必要になってくるのです。

【事務局注(2026年10月)】

6か月を超えてアメリカを離れると、再入国の際に永住の意思を確認されることがあります。
1年以上離れると、グリーンカードだけでは再入国できず、永住権を放棄したものとみなされるおそれがあります。

1年以上の不在が見込まれる場合は、出国前に再入国許可(Reentry Permit、Form I-131)を申請しておくのが基本です。

再入国許可は原則として最長2年有効で、申請時にはアメリカ国内にいる必要があります。なお、1年未満の出国であっても、生活の本拠が国外にあると判断されれば、永住権の放棄とされる場合があります。
→ アメリカ再入国許可証 取得サポート
(以上、事務局注)

ここから次回、考えていきたいと思います。


ハロウィンですね。秋のお祭りを楽しみながら、また一週間がんばっていきましょうね。

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本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の個別案件に対する法的助言ではありません。記載内容は執筆時点の情報に、2026年10月時点の事務局による追記を加えたものであり、法律や規制は変更される可能性があります。

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作成者: jinkencom

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