アメリカ永住権と市民権の違い(2)_1288

サンフラン SF滞在

【JINKEN.COM事務局より|2026年10月 追記】
この記事は、鈴木淳司弁護士が2021年11月に執筆した法律ノートです。新型コロナや当時のニュース、「前政権」など、本文中の時事的な表現は執筆当時のものです。本文は執筆当時の趣旨を保ったまま、表記と用語を整えています。その後の制度の動きや補足は、本文中の「事務局注」としてお示ししています。


法律ノート 第1288回 弁護士 鈴木淳司
November 9, 2021

日本では電車内で火をつけて、悠々とタバコ吸っている輩がニュースになっていましたが、アメリカだったら即銃口を向けられるのではないでしょうか。
アメリカの銃社会はネガティブに考えられている部分もありますが、自分で自分のことを守るのだ、という考えが根強いわけで、日本とは考え方が根本的に違うなぁ、ということをこういうニュースで感じます。
最近ではドライブレコーダーができて、あおり運転など危険なことをしてくる人がニュースになる日本ですが、アメリカだったらお互いに銃を持っているかもしれない、と牽制するものです。
銃の存在があるかどうかで、犯罪の形態も変わるのかもしれませんね。


さて、前回から考えてきた「アメリカ人の夫と一緒にカリフォルニア州に住んでいます。すでに子どもたちは巣立って、夫と二人で暮らしています。私は日本人で夫と結婚する際に永住権を取得しています。現在も永住権のままです。コロナ禍になる前は毎年日本に里帰りをしていたのですが、コロナ禍のなか、身内がコロナに罹患し亡くなったこともあり、これから老後はアメリカでゆっくり夫と過ごそうと思うようになりました。現在持っている永住権をアメリカ市民権にするべきなのか迷っています。市民権を取得するべきなのでしょうか」という質問を続けて考えていきたいと思います。

前回は、アメリカに再入国する際、すなわち移民法の観点からのアメリカ市民権、永住権の違いについて考えました。

今回は、アメリカに腰を落ち着ける場合にどのような違いがあるか、ということについて考えていきたいと思います。

呼び寄せられる家族の範囲

まずは、また移民法の観点ですが、アメリカ市民権保持者と永住権保持者がたとえば家族をアメリカに呼び寄せる場合、範囲の違いが生じます。

永住権保持者の場合、配偶者ビザの優先度も低いですし、家族のメンバーの永住権申請も優先度が低いということになります。
ただ、ご自身だけに限ると移民法の観点からはアメリカ国籍であろうが、永住権であろうが大きな違いがないように思います。

【事務局注(2026年10月)】
アメリカ市民の配偶者、21歳未満の未婚の子、親(市民が21歳以上の場合)は「近親者(Immediate Relative)」として、年間の人数制限なく永住権を申請できます。市民は、既婚の子や兄弟姉妹を呼び寄せることもできます。
一方、永住権保持者が呼び寄せられるのは、配偶者と未婚の子に限られます。

なお、永住権保持者の配偶者・未婚の子の待ち時間は時期によって大きく変わり、2026年10月分のビザ・ブレティンでは、ほぼ待機なしに手続を進められる状況です。(以上、事務局注)

選挙権と行政サービス

一方で、アメリカに滞在を続けるうえで、アメリカ国籍である場合と永住権しかない場合とでは違いが生じる場面もあります。

永住権保持者は、アメリカの国政には参加できないので選挙権はありません。
アメリカ国籍があるとこの制限がなく、選挙に参加できます。

また、行政サービスに関して、アメリカ国籍がないと利益を得られない場合もあります。
永住権保持者の権利をできるだけ制限しようと前政権はがんばっていましたね。
永住権保持者だけであると、時々の政治によって権利や受けられるサービスが制限される可能性は十分にあるわけです。

【事務局注(2026年10月)】

選挙について
アメリカ市民ではない方が連邦選挙で投票すること、また有権者登録などで市民であると偽ることは、連邦法上の犯罪となるだけでなく、強制送還や将来の入国禁止の理由にもなり得ます。運転免許の更新時などに有権者登録を勧められても、永住権保持者は登録しないよう注意してください。

行政サービスと公的扶助について
本文の「前政権」は、執筆当時(2021年11月)から見た第1次トランプ政権を指します。
その後、2025年からの第2次トランプ政権のもとで、公的扶助(Public Charge)の審査基準が再び見直され、新しい基準が2026年9月18日に施行されました。Medicaid(カリフォルニア州ではMedi-Cal)や食料支援(SNAP)などの受給歴も、永住権の審査で考慮され得ます。

この審査は主に永住権の申請者が対象ですが、180日を超えて国外に滞在した永住権保持者が再入国する場面などでも論点になり得ます。
→ 移民法速報 2026年10月-D/S廃止の施行延期、公的扶助の新基準、EB-2・EB-3の後退
(以上、事務局注)

二重国籍の課題は残る

アメリカ国籍を取った場合(帰化した場合)、アメリカでは二重国籍を認めていますが、日本では国籍法上、認めていません。

出生によってアメリカ国籍を取得した場合ではなく、自分の選択でアメリカ国籍を取得するわけですから、自動的に本来であれば日本国籍を失うことになります。
ただ、二重国籍の問題は、今日本でも訴訟になっていますし、難しい問題ではあります。

ここでは深入りしませんが、アメリカ側の観点からみると、二重国籍は問題にはなりません。
また、この国籍問題は別の法律ノートで考えたいと思います。

【事務局注(2026年10月)】
自分の意思で外国籍を取得すると日本国籍を失うと定める国籍法11条1項については、その後も裁判所が合憲と判断しています。2026年10月時点で、この規定は変わっていません。

アメリカに帰化して日本国籍を失った場合は、国籍喪失の届出が必要です(国外にいる場合は、喪失を知った日から3か月以内)。

届出をしないまま日本のパスポートを使い続けることはできませんので、ご注意ください。(以上、事務局注)

外国人か市民か

以上のように、質問者が、かりにアメリカにこのまま滞在し続けていくうえで、市民権を取得するのか、永住権のままでいるのか、あまり生活上は違いがないようにも思います。

もちろん、選挙に参加するとか、行政のサービスを受けたいという希望があれば別ですが、通常の生活で何か違いが出てくることは考えにくいです。

しかし、永住権は外国人であるというステータスは変わりませんので、アメリカに滞在する上で、アメリカ国籍を取っておけば滞在は盤石なものになると思います。

いったんアメリカ国籍をとっても、元日本人であれば(日本国籍を失った場合でも)、日本に永住することは可能です。
ですので、将来日本に戻るということも問題はないと思われます。

【事務局注(2026年10月)】
日本国籍を失った元日本人が日本で暮らす場合は、日本では外国人として扱われ、在留資格が必要になります。日本人の子として生まれた方は、在留資格「日本人の配偶者等」の対象となり得ますので、まずはこの在留資格で生活し、その後に永住許可を目指す方法が一般的とされています。

また、帰化によって日本国籍を取り戻すこともでき、元日本人には要件の一部が緩和されています。ただし、その場合は原則としてアメリカ国籍を手放すことが求められます。将来の日本帰国も視野に入れている方は、帰化の前に、日米両国の手続を確認しておくと安心です。詳しくは、日本の専門家にご相談ください。(以上、事務局注)


季節替わりですね。
コロナが減ってきたといっても、油断せずに体調に注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。

次回また新しい質問を考えていきたいと思います。

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作成者: jinkencom

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