法律ノート 第1318回 弁護士 鈴木淳司
June 12, 2022
弁護士というのは、事件や紛争を解決する役割を負うわけですし、解決は早いほうが良いわけですが、最近つくづく「急がば回れ」ということを思い知らされる場面にいくつか遭遇しました。
いつか法律ノートで取り上げたいと思っていますが、「時の流れに身をまかせ」ることも案件によっては必要なことなのかもしれないと考えさせられました。
このところ、真夏のように暑い日が続いていますが、皆さんは水分補給をちゃんとされているでしょうか。
アメリカLGBTQ_婚姻と事実婚、何が違う?(1)_1318
今回から考える質問は、いわゆる「LGBTQ」の一部の方々に関する質問です。
特に同性婚については、その婚姻の効力は、2015年に最高裁判所が法的に認めました(Obergefellv.Hodges)。
異性同士の結婚で認められた権利はそのまま同性婚でも認められることになったわけですが、今回考える質問のように、婚姻していないカップルについては考えておかなければならない法律的な問題があります。
いただいている質問をまとめると「私(男性)は日本から90年代初頭にアメリカに学生として来ました。それから、アメリカに住んでいますが、アメリカ人のパートナー(男性)とすでに15年ほど一緒に住んでいます。もともと、私は仕事を通してアメリカの永住権は取得していますので、移民法の問題はなく、私も彼も、お互いにそれぞれ仕事をしていますが、最近はリタイアメントの話をするようになりました。現在結婚のことも話にあがっているのですが、個人的な事情がそれぞれあるので、躊躇しています。結婚しない場合には、相続などでお互いの財産をどうするのかなどを私は考えたいのですが、彼はあまり真剣に取り合ってくれません。今すぐでなくても良いのでどのようなことを考えておいたほうが良いのか教えてください。」というものです。
未婚の同性カップルに法的つながりはない
結婚をしていないカップルですから、いわゆる今までの言い方では「同棲」「事実婚」状態ということです。
もともと、婚姻が認められていなかったカップルですから法的な婚姻はできずに、どんなに長く一緒に住んでいても「事実婚」に留まるというのが実情でした。
私も、今まで実務を通して異性結婚などよりよっぽど仲良く平穏に過ごしていた同性カップルを何組も知っていますが、事実婚であるがゆえに相続などで不利益を被ることを見てきました。
法律というのはドライなもので、六法全書に「愛」という気持ちは定義されていません。
さて、現在、婚姻関係がない同性カップルは、お互いに法的なつながりが認められていません。
同性婚の権利は異性婚の権利と同じ
2015年までは、色々な形で各州が同性カップルについて救済を提供してきましたが、すでに最高裁判所が婚姻関係を認めたわけですから、婚姻関係については法律で認められる方法で成立させなければ、婚姻しているとは認められないことになるわけですね。
したがって、相続などの関係についても婚姻している場合とそうでない場合には、はっきり違ってきます。
異性婚でも同性婚でも同様に解釈されます。
互いの法的な関係を生じさせるのは婚姻
今回の質問にあるような未婚のカップルは「婚姻している」とは、どれだけ長く一緒に住んでいても認められない場合ですから、お互いに法的な関係を生じさせるためには婚姻をするのが手っ取り早いと思います。
一方で、今回質問されている方のように、事実的な関係を今後も継続しそうな状況であれば、何かお互いにある程度の手を打っておく方がよさそうです。
同性カップルで未婚の場合、一方が死亡した場合には、遺言やトラストがない場合、法的には他方が相続する権利は発生しません。
各州には遺言やトラストがない場合には、法定相続(Intestate)という法律が用意されていて、死亡した人に近い親族、主に、配偶者、子、親、兄弟などの順番に相続されていくことが定められています。
未婚のカップル同士は法定相続できない
もちろん、未婚の同性カップルの一方が死亡した場合(遺言やトラストがない場合)、法定相続が発動され、親族に相続がされることになります。
しかし、カップル同士は親族関係にないので、法定相続ができない状況に陥るのです。
そこで、カップルがお互いに元気なうちに、お互いのエステートプランニングはしておくほうが良いと思います。
なかなか話しにくいトピックですが、お互いに思う気持ちがあれば、避けるべきではないと思います。
もちろん、異性同士でも未婚のカップルはお互いに法定相続の対象にはならないので特殊なことではないのですが、ここから次回考えていきましょう。
主に、遺言やトラストを活用する方法です。
もう学校も夏休みでしょうか。
私の所属する事務所にインターンにこの夏来る弁護士も卒業写真を送ってくれました。
夏休み イコール 人がどこでも増えます。
まだまだ、コロナは影を潜めていません。
体調に注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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