日本は梅雨の時期ですが、日本の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。カリフォルニア州は水不足で困っているので少し雨を分けていただきたいものです。
今回は、移民法における同性婚の申請について考えていきたいと思います。
DOMA(婚姻保護)法と同性婚
まず、1996年に連邦政府は婚姻保護法とでも訳せましょうか、Defense of Marriage Actという立法をしました。よく、DOMAと呼ばれているものです。
この頃、同性結婚を認める動きが活発化していました。そして、連邦政府とは異なる州法レベルにおいては、同性結婚を認めるという状況となりました。このトレンドに逆らうように、連邦政府はDOMAによって連邦レベルでは同性婚を認めないという立法を行っていました。2013年になって、このDOMA法の適法性が争われ連邦最高裁判所まで達したという経緯があります。
Windsor事件(United States v. Windsor, 570 U.S. 12 (2013))において最高裁判所は、DOMAにおける婚姻(Marriage)および配偶者(Spouse)という定義に、同性婚を含まないのは違憲である、という判断をしました。この同性婚を含まないDOMAの定義は、憲法修正5条にいう適正手続違反があるということになったのです。ちなみに、連邦法を違憲にする場合には、修正5条違反になり、州法が違憲であるという判断をする場合には修正14条違反になります。
Windsor事件
Windsor事件において、原告の女性は適法にカナダで同性婚をしていました。パートナーが死亡したことを受けて、連邦相続税の配偶者控除を利用しようとしたところ、同性婚であることを理由に連邦政府は控除を認めませんでした。この点が争われて、最終的には違憲判決に至ったのです。
オバマ大統領は違憲判決を受けて、移民局にも判断に従うように通達し、移民法全般について、「婚姻」および「配偶者」という定義に同性婚を含むように解釈されることとなりました。
同性婚に基づく永住権申請の実務
私の所属している事務所でも、同性婚に基づく永住権申請などを徐々に行うようになってきました。いくつかのポイントを以下考えていきましょう。
基本的に、移民法の解釈をするにあたって、今まで異性同士が婚姻している場合とまったく同等の権利を同性婚のカップルにも与えると理解してください。
したがって、婚姻による永住権申請、フィアンセビザの申請、一時滞在用ビザの付帯ビザ申請など、すべて婚姻による申請については、同性婚に基づいて行うことができます。
また、同性婚を通して、永住権の許可を受けた場合、市民権を申請することができるのは、永住権を得てから3年という異性同士の婚姻の場合と同様ということになります。
通常は、永住権の許可を得てから市民権を申請するには5年間待たなければいけません。しかし、婚姻によって永住権の許可を得た場合には、市民権の申請は2年短縮でき、3年間待てば申請できます。
したがって、同性婚の場合も申請待機期間は3年ということになります。
移民法は、連邦の法律ですので、基本的には州法や外国の法律に影響を受けません。しかし、今回考えている同性婚に基づく移民法申請に関しては、合法な同性婚が成立していることが原則になります。同性婚が成立したことを移民局に提出しなくてはなりませんので、合法的に同性婚ができる州またはWindsor事件の原告の方のようにカナダなどの外国で同性婚をする必要があります。申請の際の居住地において、同性婚が認められているかどうかは関係ありません。とにかく、合法に同性婚をしていれば、連邦法における「婚姻」および「配偶者」として足りるのです。
移民法以外への広がり
今回は移民法に関する部分だけ取り上げましたが、いろいろな分野で、「婚姻」および「配偶者」の定義が同性婚にも適用されるようになりました。税法、ソーシャルセキュリティーなど、婚姻に関係する分野で移民法と同様の運用変更が行われています。
同性婚をされている方々は積極的に情報を得られると良いと思います。
また、次回新しいトピックを考えていきましょう。