アメリカLGBTQ_婚姻と事実婚、何が違う?(2)_1319

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1319回 弁護士 鈴木淳司
June 20, 2022

 オフィシャルに「夏」になる前の最後の週末でしたが、かなり色々な集まりが行われていましたね。
私もゴルフ場に行き来するときにかなりのお祭りが行われているのを目にしました。マスクをしている人はほぼいなかったですね。
ただ、夏休みを取る人も多くなってきたこの頃、またコロナに罹ったというニュースを周りでも聞きます。
ワクチンのおかけで重症化はしないようですが、人の集まるところではなだ気をつけないとですね。
皆さんは楽しい一週間を過ごされましたか。
明日は、ウォーリアーズの優勝パレードが私の所属する事務所の近くが行われます。

アメリカLGBTQ_婚姻と事実婚、何が違う?(2)_1319

 さて、前回考えはじめた「私(男性)は日本から90年代初頭にアメリカに学生として来ました。それから、アメリカに住んでいますが、アメリカ人のパートナー(男性)とすでに15年ほど一緒に住んでいます。もともと、私は仕事を通してアメリカの永住権は取得していますので、移民法の問題はなく、私も彼も、お互いにそれぞれ仕事をしていますが、最近はリタイアメントの話をするようになりました。現在結婚のことも話にあがっているのですが、個人的な事情がそれぞれあるので、躊躇しています。結婚しない場合には、相続などでお互いの財産をどうするのかなどを私は考えたいのですが、彼はあまり真剣に取り合ってくれません。今すぐでなくても良いのでどのようなことを考えておいたほうが良いのか教えてください。」という質問を続けて考えていきたいと思います。

 前回は、同性カップルが、連邦やカリフォルニア州法で認められたことから、異性婚のように結婚をしなければ、相続時に法定相続(Intestate)を通して自動的に守られることにならないことを確認しました。
また行政関係の公的扶助も婚姻をしなければ主張しづらいことも考えました。

お互いのことを考えると婚姻したほうが、特に長い間一緒にいるのであれば、メリットはあると思います。
しかし、婚姻するかどうかなどは、お互いの問題で、弁護士がどうのこうの言うことではありませんし、色々な事情があると思います。

婚姻はなかなか想定できないカップルはどのような用意をしていくと良いのでしょうか。

 まずは、カップルそれぞれが遺言なりリビングトラストを作成し、他方のパートナーを受益者・相続人としてはっきり指定することが考えられます。
遺言やトラストを作成しておけば、法定相続に優先して、その分割の意思が反映されますので、家族でないパートナーであっても、はっきり遺言やトラストに指定しておけば、財産はパートナーに移転されます。

たとえば、家などを二人のパートナーで共有している場合には、一方の持ち分は相続の時点で他方に移るということを書いておけば、少なくとも二人のパートナーが他界するまでは住み続けることができます。
また、不動産の場合には、また、ジョイントテナンシーという共有形態にしておけば、一方が死亡した場合他方が自動的に全体の所有者となります。
銀行口座についても、一方が死亡したときに他方を受取人に指定するPay of Death(POD)口座というのがあります。
このPOD口座をつくっておけば、銀行預金は名義人である一方のパートナーの死亡時に、他方のパートナーに預金は移転することにできます。

このように、遺言やトラストがなくてもパートナー同士で、死亡時の相続財産移転ができる場合もあります。

 ただ、このように不動産が一方のパートナーが死亡した場合、他方にジョイントテナンシーに基づき自動的に移るとか、遺言やトラストに基づいて他方に相続されていくことになると主に3点問題が考えられます。

 1つは、たとえば一方のパートナーが亡くなって他方のパートナーに不動産の所有権がすべて帰属することになると、その生き残ったパートナーが今度は好きなように財産の相続を決めることができます。
死亡したパートナーに家族がいたとしても、いったん他方のパートナーに財産が帰属してしまうと、その後、何も財産を分けることを法的に要求することはできなくなります。
したがって、両方のパートナーが生きている間は財産を自由に使え、その後両方のパートナーが死亡したあとには、それぞれの家族が相続財産を受益できるような複雑ですが設定可能なトラストを作成しておくと安心かもしれません。

 2つめは、遺言やトラストを2人のパートナーがそれぞれ作成していると、その遺言やトラストについて、他方のパートナーに内容を見せる義務はまったく負いません。
口では、「きみに全部あげる」と言っていても実際の遺言やトラストの内容は違ったなどという例もありました。
お互いに同じ専門家をつかって、内容をオープンにしているといったような場合を除いては基本的に相手の言っていることを信用するしかないわけです。
自分は死亡時にすべての財産をパートナーにあげる、と書いてあっても相手方がそのように書かれているか保証はないわけです。

また、いったん遺言やトラストを作成したとしても、いつでも内容を変えることが可能です。
一回見せてもらって安心していたら、相手方が内容をまったく変更していたということもあり得るわけです。
この辺りはお互いの信頼関係によるのでしょうか。

3つめは、婚姻をしていない場合には、婚姻している場合と違うレートで連邦や州の相続税がかかってくる可能性があります。
婚姻関係にある控除等を利用できない可能性があるのです。
こういった婚姻をしていないカップルは必ずエステートプランニングをする際に、税法に関するアドバイスも忘れないようにすることが重要です。
 
それから、同居を長くしていたとしても婚姻関係がない場合に気をつけなければいけないのが、健康とファイナンスに関する委任状です。この委任状(Power of Attorney)というのは、死亡したわけではないが、植物人間状態になった場合、医療機関に対して処置をやめるかどうか、と、金銭的な対応、たとえば税の支払い、不動産のメンテナンスなどを代理で決める人を指定する書類です。
死後の世界のことではないですが重要です。
長い同居の事実があったとしても、一方のパートナーが植物人間になってしまうと他方のパートナーは何も事実的に代理できません。
婚姻関係にあれば、別ですがない場合には、確実に健康とファイナンスに関する委任状をお互いにつくっておくことをおすすめします。

 今回の話題はこの辺にしてまた次回皆さんから頂いている質問を考えていきたいと思います。
今年の夏も暑くなり、水不足がいまから思いやられますが、健康に注意しながらまた一週間暖かな季節を楽しんでいきましょう。

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作成者: jinkencom

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