トラストや遺言は不要?(2)_1303

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1303回 弁護士 鈴木淳司
March 1, 2022

 ロシアの宣戦布告は憂鬱なニュースですね。
国の宰相が国を牛耳って裸の王様的な素行をしていると、法の支配という考え方の尊さを再確認できます。
しかし、びっくりしたのは永世中立国であるスイスまで、一定の政治的スタンスを取ることを表明したニュースでした。
かなりヨーロッパ全体においても事態を深刻と見ているのでしょうね。
一方で中国の動きは不気味に感じます。
一体何を裏でしているのかわからない感じが伝わってきます。
戦争ではなく政治家なのですから政治をやってもらいたいですね。

トラストや遺言は不要?(2)_1303

 さて、今回は前回考えてきた「カリフォルニア州に家族で10数年住んでいます。コロナ禍になり、私の家族が付き合っている人たちが、トラストや遺言など、相続の準備をしているという話をするようになりました。私の家族は何もしていません。やはり周りでコロナで死者が出るといったニュースがあり、私どもも相続のことを考えなくてはと思うようになりました。ただ、色々聞くと、トラストや遺言がなくても相続はちゃんと行われる、という話も耳にしますが、一方で、相続がうまくいかないと政府に財産を取られてしまう、ということも聞きます。トラストや遺言を作成しなくても良いのか、どのように考えれば良いのか教えてください。ちなみに銀行口座や株などはありますが、不動産は所有していません。」という質問を続けて考えていきたいと思います。

法定相続

 まず、再確認したいですが、家族や親族がいれば、遺言やトラストがなくても、法定相続という法律で決まっている方法で皆さんの死後、財産は分配されていきます。

たとえば、カリフォルニア州の法律(法定相続は州ごとに規定されています)では、配偶者だけがいる状態であれば、配偶者が全部相続します。

配偶者はいなくて子供だけいれば子供や場合によっては孫が全部相続します。

配偶者と子供がいる場合には、共有財産は配偶者が相続し特有財産(特有財産とは婚姻前後に発生する死亡した人が持っている財産で、遺産相続で相続した財産なども含まれます)は配偶者と子供の数に応じて等分に相続されます。

配偶者や子がいない場合には親が相続します。

このように、死亡した人に近い家族から順に相続が発生するのです。

同じように法定相続の制度は日本の民法にも規定されています。

したがって、皆さんが死亡して遺言がなくても、相続財産は基本的に家族に承継されていくのですね。

国籍や滞在ステータスは無関係に相続

家族のつながりで相続がされることになりますが、相続する人がどこの国籍でも、たとえアメリカ国内に違法に滞在していたとしても、相続できます。

移民法は関係ないということになります。

州ごとに異なるルール

一つ、カリフォルニアの法律で覚えておいたほうが良いのは、相続する人が、死亡した被相続人を少なくとも120日以上超えて生きていなければならないというルールがあります。

まだ、私もこのルールが実際の実務で適用される例は見たことがありませんが、仮定で話をすると、夫婦が乗っている船の沈没があって、夫はすぐに死亡したが、妻が3日後に死亡した場合、夫の財産は妻が法定相続することにはならないということになります。

 このように、法定相続という制度があるので、遺言やトラストがなくても、まずお金は政府に取られるということはありませんし、誰がどの程度もらえるかは法律で決まっているので、別に何も書類を残さずとも無事に相続はできそうです。

ですので、今回質問されている方の場合でも、遺言やトラストをお金や時間をかけて作成しなくても、別に深刻な問題は生じないといいうことになります。

指針を示し紛争を防止

 では、なぜ特にアメリカでは多くの人が遺言やトラストをつくるのでしょうか。

単に「トレンド」というわけではなく、ちゃんと理由があるのです。

一番の理由は、残された財産について、家族や親族に指針を予め示すことで、無駄な紛争などを防ぐ機能があることです。

等分にこどもたちにわけるにしても、法律であとから決まるのと、最初から親が考えて子供に指針を示すのでは、子どもたちにとってみたら随分精神的なインパクトが変わります。
また、遺言やトラストで、持っている財産の全体を明記しておけば、何をどのようにわけるのか残された人にわかりやすいというメリットがあるのです。

実際問題として、人が何を持っているのかその人の死後に探すのはかなり大変な作業であります。
また、これで全部だと思っていても「なにかまだあるんじゃないか」という不安感は残るわけです。

このようなメリットは一般的に遺言やトラストをつくるべきか、というときに気にはされると良いと思います。

 次回もう少し、なぜ遺言やトラストをつくるのか、掘り下げて考えたいと思います。

暖かい日もあり、コロナ規制もずいぶん緩和されてきました。
日光を楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。

 

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作成者: jinkencom

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