アメリカで遺産相続設計、メンテは?(2)_1279

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1279回 弁護士 鈴木淳司
September 5, 2021

夏の終りの三連休です。各地ではコロナの数が増えていることもあり、またさらなるコロナ禍拡大にならないと良いのですが。
私は久しぶりにのんびりバーベキューができそうです。
近くのスーパーでシャトーブリアンが一パウンド8ドル99セントで売っていたので、早速買いましたので楽しみです。
この原稿を書き終えたらシェフになる予定です。
皆さんはどのようにお過ごしでしょうか。くれぐれも安全には配慮してください。

アメリカで遺産相続設計、メンテは?(2)_1279

さて前回から考えている「コロナ禍を機にリタイアした夫婦です。アメリカで子供を育てすでに巣立っています。リアタイアを機に遺産相続について弁護士に相談しています。ダイレクトメールが入ってきたので、その事務所に頼んでいるのですが、毎年メンテナンス費用がかかるということを言われ躊躇しています。毎年、どのような費用がかかるのかわからないので不安が増しているのですが、どのようなメンテナンス費用があるのか教えてください。」という質問を今回も続けて考えていきたいと思います。

相続設計後 毎年のメンテナンスは原則不要

前回は、原則としてメンテナンスは不要である、ということを考えました。よっぽど特殊なトラストなどを作成していない限り、毎年弁護士にお金を払ってなにかして貰う必要はないと思うのです。

相続設計のメンテナンスが必要なとき

今回は逆にどのような場合にメンテナンスが必要なのかを考えておきましょう。

以下を基準にして、必要に応じて弁護士に相談すれば良いと思います。

1つ目ですが、相続の書類に書かれている登場人物に変更がある場合です。

登場人物には大きくわけて2つのタイプがあります。
財産をあげる側(被相続人)財産をもらう側(相続人)です。

被相続人の変更が必要な場合というのは、たとえば夫婦でトラストを作成して配偶者の一方が他界するような場合です。
相続人に変更がある場合とは、相続人が他界する場合もありますが、被相続人が「誰に」財産を渡していくのか、変更したい場合もありますね。

相続先は柔軟に

財産というのは、基本的に誰にでも、どの団体にでも相続させることができますので、なにも子供に限ったわけではありません。

犬や猫の団体に財産を譲渡していくことも見たことがありますし、自分の信じる宗教団体に譲りたいという場合もあります。

このような相続人は遺言やトラストに記載されるものなのですが、気が変わったり、状況が変われば基本的には変更できます。
この登場人物が変わる場合には、相続書類の見直しが必要になります。

2つ目は、相続人に渡す財産の範囲が変わる場合です。

簡単に言えば、家を半分ずつ2人の子供に相続させる、としていたものを、一人には3分の1,もうひとりには3分の2、とするようなときです。
団体に10万ドル渡すという記載を5万ドルに減らす、というずばり金額の場合もあります。
このように相続財産の増減、変更などについては、やはり相続書類を見直した方が良いと思います。

大きく考えると、必ず弁護士に相談して変更するのは上記2点となります。

毎年でも確認すべき場合

もちろん複雑なトラストなどを作成する場合、たとえば、死後、トラスト基金を設立して、そこからお金を特定の方法で運用してもらう、などといったスキームを組み込む場合、には、もちろんもう少し変更したほうが良い部分がでてくるかもしれません。

しかし、一般的な相続に関する遺言やトラストについては、上記二点が主に弁護士に相談する必要がある点です。

重要なことは、上記二点のように、遺言やトラストの根幹に関わる変更をお考えの場合には、必ず迅速に相談をして変更することです。

いくら頭で変更したいとおもっていても、そのまま他界してしまうと、もともとの書類内容で相続されます。
また、変更内容についてメモ書きなどにしていても、それだけでは効果は生じず、もともとの相続書類に基づいて相続されます。

相続設計の変更は迅速に

したがって、変更をしたいと思った場合には、あまり待たずに相談はされたほうが良いと思います。
そのうえでしっかり、トラストや遺言の内容について変更を加えておけば安心なのです。

思っているだけ、メモや紙に書いただけでは、法律的には有効な変更とはなりませんので、その点は注意しておいてくださいね。

もちろん、たまには相談している弁護士にも連絡するのは良いことだと思います。
弁護士にしても、「あのひとどうしているかな」などと思うこともあるわけです。

ただ、毎年なにかお金を出している、という必要はまったくありませんし、上記に書いた二点の変更などがなければ、トラストや遺言の有効性が否定されることはありません。

また次回新しくいただいている質問を考えていきましょう。

安全と健康に留意しながらまた一週間頑張っていきましょうね。

日本とアメリカ 国をまたぐ相続(2)_1243

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作成者: jinkencom

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