過去の飲酒運転と有罪。犯罪歴抹消はできる?(3)_1062

空港これからアメリカへ

法律ノート 第1062回 弁護士 鈴木淳司
June 19, 2017

先日、将棋のプロ棋士と呑んでいたのですが、今話題の藤井聡太四段について話をすると、やはり強いと言っていました。すごい人がでてきたものです。
その友人がプロ棋士として感心していたのは、藤井四段の羽生善治三冠との非公式戦だということです。ちょっとしたリードを終始保ち続け、ジリジリリードを広げていく力があるようです。興味深いのは友人のプロ棋士が最近小学生などと指していると、かなり強い子が出てきているようなので、将来がとても楽しみですね。週末は暑いですが、皆さんはお元気にされていますか。

過去の飲酒運転と有罪。犯罪歴抹消はできる?(3)_1062

さて、前二回「以前(10年ほど前)、学生のとき、飲酒運転で有罪の判決をカリフォルニア州で受けました。当時、罰金を支払い、指定された講習などすべて裁判所から言い渡されたことは終了しました。その後、警察にかかわるような問題はまったくありません。現在、トランプ政権になって移民に厳しくなってきたということを聞いています。私は現在就労ビザでアメリカに滞在しているのですが、以前、飲酒運転があったということで、強制送還などになるのではないかと不安になっています。色々検索すると、犯罪歴を抹消する手続きがあるということがみつかりました。この抹消手続きというものはどのようなものなのか、やはり私はやっておくべきなのか、教えていただけないでしょうか」という質問を考えてきました。

軽罪の場合、前科抹消手続きを進めやすい

前二回、前科抹消手続き(エクスパンジメント)を考えてきました。
今回は、実際にどのような条件が揃うとエクスパンジメントができるのか、考えていきたいと思います。
前回、考えましたが、エクスパンジメントが許されている罪の種類は、各州法で決められていますが、通常軽罪(Misdemeanor、いわゆる一年以下の禁固刑が法定されている罪)であれば、認められているはずです。また、刑の種類によっても、認められる場合と認められない場合が存在します。

飲酒運転での有罪判決の場合

今回質問されている方は飲酒運転で有罪判決を受けているようです。この例を使って考えていきます。
飲酒運転は、カリフォルニア州でも他州でも、エクスパンジメントの対象とされています。
飲酒運転で有罪判決を受けると、通常は、
(1)罰金、
(2)安全講習の参加、
(3)コミュニティーサービスまたは拘留刑、
(4)保護観察期間
がセットになって言い渡されます。
通常、(2)については週一度、15週間行われ、講習終了の通知が裁判所になされます。
(3)については、どのような様態の飲酒運転かによって言渡しにばらつきがありますが、これも、初犯であれば、数日で終わるときもあります。
(4)についてですが、通常3年間は保護観察期間となり、この3年間は基本的におとなしくしていなさい、再犯は許されませんよ、というメッセージが込められています。
エクスパンジメントを申請するには、(1)ないし(5)の要件を満たしたうえで行うことになります。
(1)ないし(4)については、数週間レベルで終わらせることができますが、(5)については、原則として数年レベル、飲酒運転であれば、3年間が必要ということになります。そうすると、今回質問されている方についても、有罪の言渡しから3年間が経過した時点でエクスパンジメントを申請することになろうかと思います。

手続きはそれほど難しくない

エクスパンジメントの手続きは、そこまで難しくなく、上記の例でいえば、(1)ないし(5)の記録は言渡し裁判所にあるわけですので、保護観察期間、何も問題はありませんでした、という内容を添えて申請すれば、ほぼ機械的に認められることになります。
ですので、前科がある方は、とくに外国人はこのご時世ですから、エクスパンジメントが可能かどうか一考されると良いと思います。

未成年の時の罪はエクスパンジメントの幅が広い

それから、エクスパンジメントでも、未成年のときに言い渡された罪は、通常の事件よりも、より簡単にエクスパンジメントをすることは一般的に可能です。
ですので、一般の刑事事件よりも積極的にエクスパンジメントを利用されることをお勧めします。

過去より将来が大切ーエクスパンジメントも将来への一手段として

人間というのは、過ちを犯す動物です。重要なのは、過ちを繰り返さないことですし、過去より将来の方が重要です。ですので、将来を考えるためのツールとして、エクスパンジメントを位置づけておくと良いと思います。
 
 
次回また、いただいている質問にお答えしていきたいと思います。
カリフォルニアはもう夏真っ盛りのような気候です。バテないように注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。

 


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作成者: jinkencom

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