法律ノート 第1297回 弁護士 鈴木淳司
January 18, 2022
私の所属する事務所でも家族がコロナの陽性になったとか、ちらほら聞くようになりました。
今回のオミクロン種はかなり急拡大していますね。
アメリカでは、ある記事によると人口の半分程度が罹患すれば集団免疫ができてくるだろうという考えが強いみたいです。
死亡率が高くないですから、「肉を斬らせて骨を断つ」という方法論なのでしょうか。
日本やオーストラリアの完全シャットダウン政策とは真逆な考え方です。
どちらの考えが正しいかは歴史が教えてくれることになるわけですが、大きな視点からみると政治判断は非常に興味深い局面だと思っています。
皆様もくれぐれも気をつけてください。
アメリカ失業給付-Unemployment Benefit(1)_1297
さて、今回からまた皆さんから新たにいただいている質問を考えていきたいと思います。
いただいている質問をまとめると「共働き夫婦の家庭です。コロナ禍になり、子供たちの学校の予定が変則的になりました。夫の会社は自宅からリモートで仕事をすることを許可しているのですが、私(妻)の職場では一定程度の復帰を求められています。子供たちがいるので、今の職場よりもフレキシブルにリモートで仕事をさせてくれる求人に応募しています。このように新しい仕事を得ている段階で前の仕事をやめた場合、失業給付は受けられるのでしょうか」という質問です。
失業給付 窓口は州や自治体
失業給付(Unemployment Benefit)は各州が制度として義務付けていますが、コロナ禍でかなり脚光を浴びています。
連邦も州も失業者に手厚いサポートをしてきました。
雇用主は給与を支払うときに一部州から支払いの一部を引かれ、州がそのお金と州の引当金を管理して、失業給付に充当しています。
州によっても仕組みや運用が違ってはいますが、一定の理由がある失業者に対して給付をするというコンセプトは統一です。
各州やコロナ禍で申請する場所にも様々なローカルルールがありますので、今回の質問にお答えするにあたり、一般論として考えておきたいと思います。
具体的に失業保険を申請するには各州、各自治体の行政窓口にお問い合わせください。
自己都合の退職と失業給付
今回質問されている方の場合、会社都合で解雇されるのではなく、自己都合で退職するということを考えられているようです。
基本的に退職する「正当事由」がない場合には自己都合で退職すると失業給付は受けられません。
考え方としては会社に辞めさせられるのではなく、自分から辞めた場合には、失業保険を受け取ることはできないのです。
しかし、自分から辞めるにしても、辞めるうえで正当化できるような事由が法律上あれば、失業給付を受けることはできます。
この理由を「正当事由」と言います。
自分で「正当だから辞める」と思っても正当事由になるわけではなく、法的に正当事由と認められる必要があるのです。
失業給付につながる「正当事由」?
今回の質問にあるように、今の仕事はリモートを尊重してくれないので、より良い職場環境を求めたい、とか、より自分にあった職を見つけたい、というだけでは「正当事由」になりません。
したがって、失業給付を直ちにもらえるような状況ではなさそうです。
できれば、はやく転職先を見つけて、職をつなぐほうが子供さんもいらっしゃるみたいなので楽そうには思えます。
しかし、正当事由があれば、自己都合退職でも失業給付を受けられる場合があります。
もちろん、新たな職を得ているのであれば給付対象外になりますが、次の仕事を見つけられないという前提です。
次回この「正当事由」について考えていきたいと思います。
基礎的なことですが、失業給付は職を失い、次の仕事がないためにいわゆる食いつなぐための社会保障です。
したがって、次の仕事があれば失業給付を受ける根拠がないわけです。
他に手段がなければ、使うべき制度であります。
コロナ禍で、いろいろな社会保障的な意味合いの給付が広く行き渡ることは良いのでしょうが、一方で、人が働かなくなる原因にもなると言われているところであります。
アメリカの人手不足が深刻化している一方で困窮した人たちを救済しなくてはいけないというジレンマが政治課題になっています。
皆さんは新春をどう過ごされていますか。
私は、仕事が忙しく事務所にも顔を出しますが、コロナが再燃していてサンフランシスコのダウンタウンはガラガラです。
なんだか寂しい感じがします。
とにかく伝染しないように各自気をつけて行動するしかないですね。
また注意しながら一週間がんばっていきましょうね。
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