法律ノート 第1125回 弁護士 鈴木淳司
Sep. 4, 2018
レーバーデーを含む3連休でした。天気も良く、野外活動に最高の週末でした。私もかなり体を動かして気分転換をしました。レーバーデーのときは、野外遊園地やフェスティバルも多いので、みなさんも楽しい時間をお過ごしになったのではないでしょうか。日本は台風などの話題で落ち着かないですが、皆さんお元気にされていますか。
アメリカで経営が困難に、破産すべきか(3)_1125
さて、前回まで、まとめると「抽選でアメリカの永住権を取得できたので、5年ほど前からアメリカに移り住み、輸出入の会社を経営しています。最近では、競争が激しくなり思うように利益があがりません。他社との値段競争についていけない状況なのです。夫婦でやっている会社なので、実際個人の負債もかなりあります。色々相談をしているのですが、ビジネスを現在売っても負債がすべて返せない状況にあり、破産を勧められています。本意ではありませんし、日本人的な感覚かもしれませんが、破産ということについてかなり抵抗があります。アメリカで破産した場合、永住権しか持っていない私にはどのような影響があるのでしょうか。また破産した場合、負債は本当に減るかなくなるのでしょうか」という質問を考えてきました。今回、個人保証がついている会社の財産がある場合について続けて考えていきましょう。
破産でも内容が異なる消滅型と再建型
前回、個人保証がついている場合は、会社が破産をしたとしても、債権者は個人を追いかけてくるということを考えました。ですので、会社のように、ある程度の収入があり、個人保証のついた財産がある場合には、完全に債務を消滅する形のチャプター7は使いにくいことになります。
かりに、会社がある程度収入を維持でき、将来的に収支の計画を建てることができれば、いわゆる再建型である破産を利用することがオプションとして考えられます。チャプター7は、担保のついていない債務に関しては免除されるというメリットはありますが、一方で、担保そのものは消滅しないので、残額が残っている不動産やら、車などは手放さなくてはならないことになりますし、保証人に対して追いかけることができます。
他方、再建型においては、今までの負債について一旦整理をして、払えるだけ払っていこうという、ある意味、責任のとり方を再構築する方法ですので、将来を見据えての財務的な責任は負うことになります。どちらも「破産」ですが、内容的には異なるものなのです。どちらかというと再建型であるチャプター11とか13などは、責任からすべて逃げるということではなく、過去の負債を将来においてどのように整理するか、という方法論を取るわけですから、ある程度責任を負い続けるというところに、いわゆる「責任感」はあるとも言えると思います。
しかし、日本社会と違ってアメリカでは、他人の目はあまり気にしません。自分で何をしなければならないのかを第一次的に考える文化ですので、消滅型、再建型、どちらの破産方法をとるかは、まず自分の財務的状況に応じて判断するしかないと思います。
破産しても免責されない債務もある
破産申請が受理され、免責がされるといっても、上述したように担保はなくなることはありません。金融機関は、お金を貸すにあたって担保を取りますが、一部この破産を想定していることは明らかです。担保がついていない場合でも一定の場合には、破産しても、免責されない債務があります。
アメリカでは、主なものを挙げると、離婚に伴う元配偶者や子の養育の支払いは、破産があっても免責されません。払えないとしても、その債務は残ります。税金の支払いについても、例外はありますが、基本的には支払義務は破産をしても残ります。税金はどこまでも追いかけてくる、というのはこのことです。
税金に似ているかもしれませんが、罰金や被害者弁済など裁判所を通して支払い義務が生じたものについては、基本的に支払義務は残ります。私が経験したものでは、通常の交通事故によって発生する損害賠償義務は破産で免責の対象となりますが、これらの損害が飲酒・薬物に起因した事故で発生した場合には、免責の対象外となります。こういったファクターを考慮して、どのような破産をするのかを考える必要があります。
破産をしてもすぐに永住権の保持に影響しない
それから、今回質問されている方は永住権保持者ということですが、破産をしたからといって、すぐに永住権の保持に影響はしません。まったく別系統の話なので、永住権を持っていれば、何も滞在資格に直接的な影響はありません。一方で、非移民型のビザで滞在されている外国人が破産をする場合には、滞在資格が影響することがありえます。ビジネスビザで滞在している場合、更新はかなり難しくなると思います。
まだ色々考えたいところですが、今回はこの辺までにしておきたいと思います。また、皆さんからの質問を待って考えていきたいと思います。今週もまだ「夏」が続きますが、今週末、鹿の子供を見ました。秋が近づいてきているということでしょうか。体調管理に気を配りながらまた1週間がんばっていきましょうね。
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