法律ノート 第1170回 弁護士 鈴木淳司
July 23, 2019
アメリカの現大統領が、現職の女性議員に対し、「犯罪が多く政府が崩壊している自国に帰れ」と言って、差別的な考えだと叩かれています。共和党は、このコメントに関して、黙ってやり過ごそうとしています。このソーシャルメディアでの発言は低俗極まりないですが、この状況も直接選挙の歪みなのでしょうか。ところで、これら女性議員の自国はアメリカですから、犯罪が多く政府が崩壊しているのは、アメリカのことを言っているとすれば、現大統領が自国につばを吐いているようなものですよね。
日本の健康保険、アメリカ在住で使えるの?(1)_1170
さて、今回から皆さんからいただいている新しい質問を考えていきたいと思います。
いただいている質問をまとめると「フリーランスでIT関係の仕事をしています(在日本)。今度、あるベイエリアのIT企業からオファーをいただき研修として行くのを楽しみにしています。その米国の会社から、色々条件を言われているのですが、健康保険等については自己負担ということを言われています。海外旅行者保険には入ろうとは思っているのですので、日本の健康保険(国民健康保険)もそのまま使えるような話も聞いています。できるだけ出費を減らしたいのですが、やはり任意保険も入るべきなのでしょうか。」という質問です。
今回の質問は、日本では弁護士への質問というよりは、他の士業の方に質問された方が的確な回答を得られるかもしれません。ただ、私がアメリカにいること、それから偶然過去に巻き込まれた案件で体験していることから、法律ノートで考えてみたいと思います。
今回のシナリオは、現在日本に居住されていて、現在何らかの健康保険に加入されている方が対象になります。日本人でアメリカに在住されていて、日本の健康保険に加入されていない方には適用されない話ではあります。主に旅行者ということになりましょうか。
日本の国民保険と海外療養費
アメリカでは、国民共有の保険がないことから、問題になりますが、日本は健康保険の濫用などが問題になります。
近年でも、タレントの親が、不正受給に関わったとニュースになったこともありますが、日本の健康保険制度は充実しています。
詳細は、日本の各自治体に相談されるか、情報をもらうのが良いと思いますが、日本の健康保険があると、現在では海外で治療を受けた場合には、「海外療養費」というのが一定の条件を満たせば受給可能です。もちろん、治療目的でアメリカに行く場合や、日本の健康保険でカバーされないような治療は、支給範囲外であります。
日本で保険が適用されないのに、海外で保険が適用されることはありえないわけですね。
治療費の算出は日本の制度に則して
この海外療養費というのは、海外で受けた治療の全額を負担してもらえるわけではなく、日本の制度にしたがって計算された治療費にまず基づいて全額の治療費が算出されます。
そして、自己負担金額、今回質問されている方であれば国民健康保険に加入されているわけですので、自己負担額である3割を差し引いた額が基本的な海外治療費ということになるわけです。
ということは、往々にして高額になるアメリカでの治療費の全額が負担されるわけではなく、日本の物差しで治療費が図られて、さらに3割は自己負担ということになるのですね。
もちろんもらえないよりもマシなわけですが、かなり大きな疾病や事故がある場合には、かなりの実費負担を覚悟しなくてはならなくなります。
任意での保険加入は必要
この観点から、少なくとも実費填補を受けられる程度に任意で海外旅行者保険に加入するというのは、普通に考えられると思います。
ただ、任意の保険というのは、色々な種類やカバーの額がありますから、空港で簡単に申し込むのではなく、充分に時間を取って、どのような負担で何が得られるのか慎重に検討するべきものだとは思います。
慎重に検討するといっても、ではどのような観点で保険を選べばよいのか、なかなか分かりづらいと思います。少々私の経験を基に、次回もう少し考えていきたいと思います。
私は夏を楽しんでいますが、皆さんの夏はいかがでしょうか。仕事も忙しい方々もいらっしゃると思いますが、気分転換をしながら年の真ん中を有意義に過ごしながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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