気になる法律の話題「絵文字」 1169

Golden Gate sanfran

法律ノート 第1169回 弁護士 鈴木淳司
July 14, 2019

 夏真っ盛りですね。友人家族の誕生日パーティーに呼ばれて行ってきましたが、子どもたちはプールに入って出てきませんでした。今週末はとても暑くてビールがとても美味しく感じました。みなさんは夏を楽しまれていますか。

気になる法律の話題「絵文字」 1169

 さて、今回は、皆さんからいただいている質問にお答えするのを一回休ませていただき、気になった法律の話題を取り上げていきたいと思います。絵文字です。今の世の中、人と連絡を取るのに、電話は少なくなってきて、メールやテキスト、それにLINEなどがごく一般的になってきました。

 今の若い人たちにはわからないかもしれませんが、30年ほど前は、サラリーマンが帰宅前に「カエルコール」などといって、家に電話をしてから帰ったりしたものです。私が弁護士になった20数年前には、ポケベルなんてものもありました。私もポケベルをベルトに挿し、小さな弁当箱くらいの携帯電話を持って仕事をしていた記憶があります。あ、もう電池がないや、というのが日常茶飯事でした。

 時代は変わって、電子機器の文字入力も定着して、今や電話で話しながら仕事をしている人のほうが少ないのかもしれません。そして、文字入力もさらに進化して、絵文字が発達しました。LINEなども絵文字があったからさらに浸透したわけですが、動画もあり、キャラクターもあり、もう普通におじさんおばさんも使っています。私も使いますが、ちょっと気恥ずかしいのは年代でしょうかね。

 ちなみに、仕事でLINEなどを使っている人は便利だからといっても気をつけたほうが良いと思います。機密情報はない、と思って行動するべきだと私は思っています。特に私は仕事柄、事件の情報を扱うのにソーシャルメディアは絶対に使いません。簡単にソーシャルメディアで相談を受ける弁護士というのは、営利至上主義なのか知りませんが、理解できません。実際にいろいろな事件を扱っていると、絶対に法律相談はしないほうが良いと思うのですが。

”Emoji”が、法律の世界でも論点に

 横道に逸れましたが、絵文字という言葉は、布団(Futon:アメリカではちょっと意味がちがうものがでてきますが)などのように日本語がそのまま英語になっています。Emojiといえば通じますね。

 この絵文字が、法律の世界でも、論点になりつつあります。2018年から興味深い判例も出てきています。もちろん、その前からも少しづつ法律的な問題がありましたが、絵文字が判例にでてきているのは興味深いことです。問題となるのは、雇用などが絡むセクハラ訴訟です。絵文字が事件の帰趨を左右しているのです。

絵文字が判決に影響

 アラバマ州で争われて、去年判決に至った事件があります(Murdoch v. Medjet Assistance, LLC, 294 F. Supp. 3d 1242 – Dist. Court, ND Alabama 2018)が、この事件では、会社を解雇された女性がセクハラ等があったと逆に提訴したシナリオです。

 そして、セクハラがあったのかなかったのか、裁判所はかなり詳細に解析しています。解析する裁判官も大変ではあります。そして、女性と上司の電子的なやり取りが裁判にあがりました。裁判所は要するにセクハラを認定しませんでした。

 その理由の一つになったのが絵文字なのです。女性から上司に宛てられたメッセージには、スマイル絵文字が多用されていました。裁判所は、そういう絵文字をセクハラされている人が使いますか、という疑問を呈しています。

 一方で、2018年にワシントンDCエリアで、スターシェフとして活躍していたマイク・イザベラがセクハラで訴えられます。その後彼は破産をしました。このセクハラ訴訟の内容にはメッセージが多数引用されていましたが、やはり絵文字が使われていました。

 イザベラさんの使った絵文字には、その絵文字だけ見ると、別にどうってことがないようなものが多いのですが、彼の書いているメッセージと合わせると、ダメダメな感じのものでした。法律ノートで取り上げるほどのものでもない、くだらないものです。

ハートの絵文字がセクハラに!?

 このように、近年絵文字が裁判に顕出されるようになったというのは、時代ですかね、興味深いことです。上記の裁判で出てきた絵文字は文章と相まって使われる絵文字ですが、LINEなどは、返答そのものが絵文字というか、画像や動画だったりするので、今後、それらの意味も裁判で出てくるのでしょうか。

 こういう状況になってくると、企業も従業員のコンプライアンスとして絵文字ということを考えなくてはならなくなると思います。アメリカはそういうのは好きですし、実際に裁判になるわけですから。私も、今後クライアントにいろいろ絵文字の指導とかアドバイスをすることになると思うとちょっとシュールな気分になりますが、そういう時代なんでしょうかね。

 こういう裁判になると思うと、絵文字の使用も気をつけないといけないのでしょうか。ハートマークの入った絵文字を使うと、セクハラだ、と言われる時代になっていくのかもしれませんね。

 長くなりましたが、次回は皆さんからいただいている質問をまた考えていきたいと思います。私の事務所でもインターンが来て賑やかです。夏の祭りやパーティーを楽しみながらメリハリつけてまた一週間がんばっていきましょうね。


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作成者: jinkencom

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