じんけんニュース 弁護士 鈴木淳司 07-25-2026
July 25, 2026
2026年7月も、移民行政は目まぐるしく動きました。特に今月は、留学生や研究者、報道関係者といった幅広い層に構造的な影響を及ぼす大きな規則改正が連邦官報(Federal Register)に公布されました。今回は、(1)就労許可証(EAD)等の予告なき取消の問題、(2)「Duration of Status(D/S)」を廃止する国土安全保障省(DHS)の最終規則(Final Rule)、そして(3)その経過措置(Transition Rules)と実務上の対策、という3つのトピックを考えていきたいと思います。
1 就労許可証(EAD)の取消と事前旅行許可(Advance Parole)の終了
ここ数日、米国市民権移民局(USCIS)が、いったん承認したはずの就労許可証(EAD、Form I-765)を取り消し、また事前旅行許可(Advance Parole、Form I-131)を終了させる処理を、オンラインのケースステータスを書き換える形で行っている、という報告が移民法実務家の間で相次いでいます。
その多くは、永住権ステータス変更申請(I-485)などの原申請がすでに承認され、付随的な就労許可等が不要となった事案のようです。しかし問題は、その処理が事前の通知なく行われている点にあります。連邦規則集(8 CFR 274a.14(b)(2))は、EADの取消に先立ち、取消理由を示した上で15日以内に反論の機会を与える事前通知を要求しています。この告知と聴聞の機会は、適正手続(Due Process)の基本です。通知を欠く取消は、原申請が係属中(ペンディング)の申請者やその代理人から、移民局に照会して就労資格の空白(ギャップ)を回避する機会を奪いかねません。さらに、本来であれば審査未了として「却下(Denial)」と処理されるべき申請が、「取消(Revocation)」や「終了(Termination)」として処理された例も報告されており、行政処分の法的性質としても疑義があります。
皆さんへの実務上のアドバイスとしては、まず、myUSCISのケースステータスを定期的に監視することです。そして、原申請が係属中であるにもかかわらず有効なEADが突然取り消された場合には、明らかに異常な処理ですので、放置せず、速やかに移民法に精通した弁護士に相談し、移民局への照会を行ってください。
2 「D/S」を廃止するDHS最終規則の骨子
次に、より構造的な大改正です。DHSは2026年7月17日、F(学生)、J(交流訪問者)、I(報道関係者)の各在留資格について、従来の「Duration of Status(D/S)」、すなわち在留目的が継続する限り適法に滞在できるという運用を廃止し、固定された在留期間(Fixed Period of Admission)を導入する最終規則を公布しました。施行日は2026年9月15日です。
新規則の下では、F-1はプログラム期間に応じて最長4年、J-1はプログラム期間プラス30日のグレースピリオド、Iは原則240日(中国本土旅券の保持者は90日)という固定期間で入国が認められます。所定の期間を超えて滞在する必要がある場合には、USCISに対して在留期間延長申請(Extension of Stay、Form I-539)を行うか、いったん出国して再入国することが必要になります。延長申請には生体情報(バイオメトリクス)の収集や背景調査も伴い、在留の可否が改めて行政の審査に服することになります。
3 経過措置(Transition Rules)と実務上の対策
施行日である9月15日時点で有効な地位で在米しているF-1およびJ-1については、経過措置により、現在のI-20(F-1)またはDS-2019(J-1)に記載されたProgram End Dateまで(施行日から最長4年、すなわち2030年9月15日まで)滞在が認められます。F-1は60日、J-1は30日のグレースピリオドも維持され、この恩恵を受けるだけであればI-539の提出は不要です。
最大の落とし穴は国際渡航です。施行日後に出国して再入国すると、I-94はProgram End Date等で区切られ、F-1のグレースピリオドは30日に短縮されるなど、経過措置の恩恵の相当部分を失います。また、OPTやSTEM OPTについては、2027年3月18日までにForm I-765を提出すれば経過措置としてI-539の提出は不要とされていますが、施行日後に渡航すると、I-539とI-765の両方の申請が必要になります。I(報道関係者)については、規則公布から300日、すなわち2027年5月13日までが移行期限とされています。
実務上の対策としては、第一に、施行前に学校やプログラム・スポンサーと連携してSEVISの記録を更新し、延長されたI-20またはDS-2019を取得しておくこと、第二に、OPT等の対象者はできる限り早期にI-765を提出すること、第三に、施行日前後の一時帰国など不要不急の国際渡航を避けること、が中心となります。夏の一時帰国を予定されている留学生の方は、渡航計画の見直しを含め、慎重な判断が必要です。
移民行政の厳格化は、まだまだ続きそうですが、今回は、日本からアメリカに仕事や就学で一時滞在目的をする外国人にはドラスティックに運用が変わる内容が発表されたので特に取り上げたく思いました。また、新たな政府発表が出てきたら、共有していきたいと思います。
このシリーズを読む
- 移民法速報 2026年5月(1)-ビザ優先日の実質後退 他
- 移民法速報 2026年5月(2)-H-1BビザとOPTの制限
- 移民法速報 2026年5月(3)-在留資格切替え申請(永住権)
- 移民法速報 2026年5月(4)-AOS 永住権の米国内申請に重大変更
- 移民法速報 2026年6月-解雇とステータス変更【本記事】
関連する米国法律リソース
- D/S廃止に関するDHS最終規則(連邦官報)
- 8 C.F.R. § 274a.14(就労許可の取消・事前通知義務)– eCFR
- Form I-765(就労許可証申請)– USCIS
- Form I-131(事前旅行許可・Advance Parole)– USCIS
- Form I-539(在留期間延長申請)– USCIS
- Study in the States(SEVP公式情報)– DHS
免責事項
本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の個別案件に対する法的助言ではありません。記載内容は執筆時点(2026年7月)の情報に基づいており、法律や規制は変更される可能性があります。
本記事の内容に基づいて行動される場合は、必ず専門の弁護士にご相談のうえ、個別の状況に応じた適切な法的助言を受けてください。本記事を読まれたことにより、当所または執筆者との間に弁護士・依頼人関係が成立するものではありません。
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