重罪としての児童ポルノ(4)_1529

法律ノート 第1529回 弁護士 鈴木淳司
June 20, 2026

今までサッカーにはあまり興味がなかったのですが、ワールドカップを実際に観戦してとても楽しく盛り上がる体験をしました。90分間全力で走り回るだけでも大変でしょうが、競り合っていかなければならないわけですので、これは過酷なスポーツです。少し歳を取るだけでも重圧になるでしょう。長年、出場し続けている選手もいますが、体のコンディショニングもストイックにならなければ、国の代表はなれないのでしょうね。また、国ごとの戦いというのもプライドや自国愛などで特別な雰囲気をつくっていますね。皆さんはワールドカップを観ていらっしゃいますか。


さて、前回から引き続き「日本から駐在に夫が駐在に来ていて私も同行しています。子供はまだいません。夫の勤める会社の現地社長(日本から赴任)が最近逮捕されたようで、私も夫も不安です。どうも、ポルノ動画関係らしいということなのですが、調べてもピンときていません。実は私の夫もポルノ動画などを見ていることは薄々わかっているのですが、夫もなにかトラブルに巻き込まれないか心配です。ポルノを観ると処罰されるのかアメリカの法律を教えていただけないでしょうか」という匿名の方からいただいた質問を考えていきたいと思います。処罰される児童ポルノ(CSAM)に焦点を当てています。

前回は、カリフォルニア州の犯罪としてのCSAMを考えましたが、今回は続けて連邦法についても考えていきたいと思います。州でも連邦でも独立して、犯罪を立件できるところが日本とは違っています。さて、連邦法(主に18 U.S.C. § 2252A)においては、CSAMの所持は連邦法でも処罰の対象となり、所持罪では最高10年、配布・受領罪では最低5年・最高20年の義務的最低刑が定められています。州法・連邦法双方による訴追は二重の危険の禁止に抵触しないため、証拠量が多い事案や組織的配布が認められる事案では、連邦当局がより重い刑事制裁を見込んで連邦裁判所での訴追を選択する傾向にあります。私も、ほとんど手掛けた事例は連邦事件で、深刻な事例が多かったです。このように、州単位だけではなく、アメリカ全土でかなり厳しく処罰される罪ということは少なくとも覚えておいていただきたいところです。

次に、カリフォルニア州の法律に戻りますが、有罪判決ないし有罪答弁(Plea of Guilty)に至った場合、刑そのものではなく、有罪に伴って生じる不利益は、かなり当事者の生活に影響を及ぼします。

第一に、刑法典第290条に基づく性犯罪者登録義務です。2021年施行の改正により三段階(Tier I〜III)の分類制度が採用され、CSAM所持罪は原則としてTier IIまたはTier IIIに該当し、それぞれ最低10年間または生涯にわたる登録義務を負います。登録情報は州管理の公開データベース(Megan’s Law Website)に実名・住所・写真等が掲載され、就職・住居確保・社会生活に重大な支障が生じます。登録義務違反それ自体も独立した重罪を構成します。

第二に、居住・行動の制限です。刑法典第3003.5条により、学校・保育施設・公園・プレイグラウンド等から一定距離(通常600フィート以上)以内への居住が禁じられ得るほか、都市部では事実上居住可能地域が著しく狭まり、児童との接触を伴う職業(教員・保育士・医療従事者・スポーツ指導者等)に就くことが実質的に不可能となります。

第三に、在留資格・入国資格への影響であり、外国籍保持者にとって特に深刻です。永住権(グリーンカード)や就労ビザの保持者が有罪判決を受けた場合、移民国籍法(INA)上の「道徳的退廃犯罪または「未成年者に対する性的虐待」に該当するとして、強制退去手続の対象となり得ます。CSAM所持罪は両類型に該当し得ると解され、在留資格を問わず即座に移民審判における手続が開始されるリスクがあるほか、帰化申請においても道徳の欠如を理由とする不許可事由となりえます。

第四に、専門職免許への影響です。弁護士・医師・看護師・公認会計士・教員等の免許は、有罪判決を根拠に各行政機関により取消または停止され得ます。カリフォルニア州弁護士会は、重罪による有罪判決をもって当然に弁護士資格を停止します。

代表的な影響を取り上げましたが、このように生活全般に影響する犯罪なのです。しつこいようですが、アダルトの画像や動画は基本的に合法ですが、CSAMに関しては、違法です。それも、かなり厳しく罰せられる罪ということをよく今回の法律ノートを読んで確認してください。現在では、AIによるトラッキングもかなり正確になってきていますし、捜査機関も積極的に導入しています。CSAMに関しては常時監視されていることをよく理解し、気軽にアクセスできるからといって、インターネットを利用する場合にはとても注意をしていただきたいところです。

今回いただいた匿名の質問に関して考えるのはここまでにしておきます。また追加の質問があれば、法律ノート宛に匿名でも結構ですので質問を送っていただければと思います。とにかくCSAMに関しては、軽く考えられている方もいらっしゃるようなので、アメリカで生活をするうえでは特に気をつけなければいけないということを理解してください。今回の記事を暗記する必要はありませんが、漠然と深刻な罪であるということは頭に置いてください。

それでは、次回からまた新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。もう父の日が過ぎれば、オフィシャルな夏ですね。皆さんは楽しい夏休みを計画されていますか。虫が多くなる季節ですから、体をしっかりガードしながらまた一週間がんばっていきましょうね。

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