米国_現政権の移民政策_1469

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1469回 弁護士 鈴木淳司
Apr 27, 2025

「またか」と思われるかもしれませんが、米国現政権の移民政策および、その行政の移民に対する行為について司法の場での戦いがエスカレートしていて毎日新しいニュースが入ってきます。
皆さんの質問にお答えするのが法律ノートの趣旨ですが、皆さんにとっても影響のある内容でもありますので今回も続けて、現在のアメリカにおける移民政策について考えていきたいと思います。

米国_現政権の移民政策_1469【号外】

1.地方裁判所判事逮捕について

数日前にウィスコンシン州の地方裁判所判事が逮捕され連邦の裁判所で起訴されました。
これは司法で働く私にも衝撃でした。

最近、州の裁判所周辺で、移民局が逮捕を繰り返していますが、州の裁判所としては、被告人・被疑者が恐れて出廷してこないと、繰り返し主張していました。

今回は、地方裁判所の判事が不法滞在をしている外国人を裏の出入り口から「逃がした」という罪になっています。

事実関係はよくわかっていませんので、ここで詳細は考えられませんが、考えさせられる事例です。

どうも、政府が逮捕しようとしていたのは、重罪で起訴されている不法入国者で、不法入国・強制送還を繰り返していたようです。
裁判官は法廷内の秩序を維持しようとしていたのかもしれません。

とにかく、判事が不法移民に関して逮捕されるというのは衝撃的な事件でした。

2.学生ビザ、SEVISデータの取消について

別の話題ですが、すでに直近の法律ノートで取り上げましたが、学生ビザまたはSEVISデータの取消が何千件も行われていました。
私の所属する事務所も多くの相談を受けていました。
そして、かなりの訴訟が提起されていました。

この学生ビザ、SEVISデータの取消ですが、現政権は何も告知せずに、取り消されたSEVISデータなどを元に戻している例が増えているようです

まったく基準もなく、告知もなく取り消されたことがかなり深刻な状況を生んでいましたが、今後は移民局がどのような基準でSEVISデータやビザの取消を行うのか基準を制定するということをまだ公にしていませんが、匂わせている状況です。

まだ、不安な状況は続いていますが、不合理な取消事例が元にもどされてきています。

3.外国人登録義務について

規則草案が発表される

3つめのトピックとして、外国人登録義務について考えていきたいと思います。

指紋採取・登録・住所変更届・携行書類などについての規則草案が現政権から発表されました。
登録対象者はForm G325RをUSCISオンラインアカウントで提出する必要があります

まず、G325Rには出生地、過去5年の住所歴、入国日・在米活動、バイオ情報、犯罪歴、家族情報など詳細な記載が求められ、提出後に米国内の移民局においてバイオメトリクス採取(指紋・写真・署名)が行われます。

規則では、登録や住所変更届を怠った場合、民事・刑事の優先取締対象になると規定されています

外国人登録が不要なケース

以下の外国人は登録が不要になります。

登録が免除される例は
(1)米国市民
(2)カナダ生まれで50%以上アメリカン・インディアンの血を引く者(8 U.S.C. §1359)
(3)TexasBand of Kickapoo Indiansのメンバー
などが挙げられています。

外国人登録済み扱いになるケース

第二点目ですが、すでに登録済みとみなされる外国人には
(1)永住者(LPR)
(2)I94/I 94Wを発給されたビザ保持者
(3)就労許可証(EAD)保持者など
が含まれます。

新たにオンライン登録が必要なケース

そして、新たに、オンライン登録が必要な主な例として
(1)陸路で入国し I 94が発行されなかったカナダ人訪問者
(2)入国審査を受けていない滞在者
(3)パロールで入国し未登録の者など
がありますが、
皆さんにとても気をつけていただきたいのは、お子さんがいる家庭で在米で14歳になった外国人も含まれます

日本や他の外国からアメリカに来ている外国人で、未成年者がアメリカ市民権をもたないとき、アメリカに在住されている場合には登録が必要になることは覚えておいてください。
とても重要です。

外国人登録義務を怠ると罰則

第三点目ですが、この登録義務を怠った場合には、罰則が課せられ、登録を故意に怠った場合には、最大5000ドルの罰金および最長で6月の禁錮が定められています。

全ての外国人は住所変更の届出が必要

第四点目ですが、AおよびGビザ(外交ビザ)保持者とビザ免除入国者を除き、全ての外国人は住所を変更した後、10日以内にUSCISへ届出が必要です。
この住所変更を怠ると、罰金や禁錮の対象になると定められています。

外国人登録証明は常時携帯が義務化

第五点目ですが、外国人は、外国人登録証明と認められる書類を常時携帯する義務が明確になりました。
(1)I94 / I 94W(期限切れでも可)
(2)I 551(グリーンカード)
(3)I 766(EAD)
(4)I797A の下部 I 94およびI 221/I862(強制送還手続通知)など
が考えられます。

以前、法律ノートに永住権者が日本のパスポートを常時携帯しなければならないか、という質問がありましたが、これは要件に明記されていないので不要となりそうですが、コピーは持ち歩いたほうが良いと思います。

そして、外国人登録証明書類を紛失した場合は直ちに再発行を申請する必要があります

外国人登録の方法

上記を読まれて、外国人登録が必要と思われる方は、以下の流れで登録をされてください。
(1)myUSCISアカウント作成(子供用も可)
(2)G 325Rをオンラインで入力・提出(現時点で無料)
(3)移民局のサービスセンター(ASC)でバイオメトリクス採取(将来30ドルの可能性があります)
(4)FBI犯歴照会後、「Proof of Alien Registration」 が申請に対して発行、そして
(5)PDFをダウンロード・印刷し、常時携帯すること
が必要になります。

このように、外国人はアメリカに滞在する限り登録が必要になる、という規則の草案ができていますので、今後は登録の義務化の施行について注意していかなければなりません。

気をつけるべき重要なポイント

長くなりましたが、重要な点を繰り返しておきます。

(1)外国人がI 94を電子取得したら必ず印刷し携行(モバイル保存のみは推奨されていません)
(2)永住権申請者でも、I485等を提出したものの指紋未採取の外国人は未登録扱いになる危険性があるので、どのようにアメリカに入国したのか等を必ず確認してください。
(3)そして、アメリカ国内に滞在している外国人で、14歳になる子どもがいらっしゃる家庭においては、子どもの登録をすることを怠らないでください。

また次回、移民法関係の重要なニュースがあったら、質問をくださっている皆さんには申し訳ないのですが、優先して扱っていきたいと思います。

ニュースをみると気が休まらない日が続きますが、健康に注意してまた一週間がんばっていきましょうね。


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