米国_インターネット利用詐欺(4)_1444

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1444回 弁護士 鈴木淳司
Nov 18, 2024

南カリフォルニアで大規模な火事が起こっていて、秋の強い風がさらに消火を困難にさせているようです。
秋だと思ったら、既に山の方では雪が散らついているようで、ボーッとしていると直ぐ冬に突入してしまいそうです。
山間部にいる私の友人も、ゴルフに行くのに躊躇するような寒さになってきたと言っていました。
何となく、春や秋の季節が楽しめる年がどんどん減っていっている気がします。
皆さんは季節が終わりにどのようにお過ごしになっていますか?

米国_インターネット利用詐欺(4)_1444

さて、前三回、考えてきている「実際に過去親交のあった方が亡くなったと連絡があり、私が相続人であるというメールが弁護士を語る人から私のメールアドレスに届きました。すっかり信じてしまい、メールのやり取りをしていました。相続をするのにある程度の弁護士費用がかかるということで、合計で約3万ドルを送りました。銀行口座が現在監査か何かで使えないので、ビットコインで支払うように指示があったので、それに従って送ってしまいました。その後、詐欺に気が付きましたが、どこに相談しても、お金が戻ってくるのは難しい、と言われています。実際何らかの方法で、お金は戻ってくる可能性はないものでしょうか」という質問です。

今回は取り上げているような詐欺に遭った場合に、被害者として何ができるのか考えていきたいと思います。

詐欺に遭う前なら、法律家に相談

まず、詐欺に遭う前であれば、法律家に相談する実益があると思います。

私も含め、いろいろな相談に乗っている弁護士であれば怪しいことにすぐに気づけるかもしれません。
そうすれば詐欺被害を事前に防げる可能性があります。
そういう意味では周りに相談しやすい法律家を1人備えておく事も良いでしょう。

ただ詐欺被害に遭ってしまった後だと、弁護士等の法律家でもできる事はかなり限られてくると思います。

私だけでなく他の弁護士の話を聞いても、法律を使って素性のわからない詐欺師を追い詰めていくのはなかなか根気も要りますし、時間もかかり、さらに空振りをする可能性もかなり大きく、費用対効果も怪しくなるところです。
ですので、被害に遭ってしまった場合に、弁護士が積極的に何かできるかと言うと、なかなか難しい事件が多いと思います。

被害者救済の行政機関を利用する

そこで考えられるのが、弁護士ではなく、各州や連邦に設置されている被害者救済のための行政機関を利用することが考えられます。

各被害者救済機関には、ウェブサイトがそえられていますし、被害を申告することもできます。
今までに私もこれらの行政機関を利用して、クライアントが被った被害を申告し、捜査を求めていましたが、実際に解決に至ったケースは1件だけでした。その1件にしても詐欺をした相手方がある程度容易に特定できるという性質があったからです。現在においてはかなり詐欺の行為が複雑化かつ高度化していて、なかなか誰が詐欺をしたのかを特定することが容易ではありません。
もちろん、場合によっては何度も詐欺をする輩がいるので、どこかでしっぽが掴まれる事はあります。しかし、実際のところ行政に詐欺の情報を提供する機能はあっても、そこから犯人逮捕に至る事件は、残念ながらあまり多くないような気がします。

金融機関、連邦政府の対応

この数年、金融機関もマネーロンダリングや詐欺に使用される危険性をかなり踏まえていて、銀行口座等の実際の所有者を明らかにするように情報開示をかなり深く求めています。

今年からアメリカ連邦政府もBOI(Beneficiary Ownership Information)といい、実際の受益者は誰なのか表面上の銀行口座からわからない情報の提供を求めています。
したがって、近年では、この手の詐欺事件で、銀行口座に振り込めと言う手口は少なくなってきている状況です。
銀行口座であれば、場合によれば銀行に対して出金差止めを求めて、銀行預金を差し押さえていくことも考えられるかもしれません。
しかし、多くのケースでは振込が終わってからも、詐欺を続け、被害者が気がつくときにはすでにお金が引き出されているというケースが多発していました。

ビットコインなど、仮想通貨の振込に注意

この手の詐欺で、銀行口座が使えないとなると、他に使う手口としては、金融価値のあるギフトカードなどを利用して、その番号を詐取するという方法もありましたが、被害者にギフトカードを買わせるとすると、騙されている人以外の第三者に気づかれてしまう可能性が大きく、この方法もずいぶん減ってきているように思います。
現在台頭しているのは、ビットコインなどの仮想通貨を使ったものです。
何らかの方法で仮想通貨を振り込ませるという方法です。

この仮想通貨を使った詐欺は、今後アメリカでは仮想通貨が注目を集める4年間になりそうですので、減ってはいかないと思います。
もちろん、仮想通貨自体が悪いものではありませんが、仮に詐欺にあって、仮想通貨で振り込んでしまうと、口座をいくつも介して、すぐにお金がどこか別の口座に送金されていって、どこに振り込まれたのか、結局後追いするのが不可能になってしまいます。
また、日本やアメリカとは関係の薄いような国の口座を介されると余計に追跡が難しくなってしまいます

履歴が消えるSNSに注意

今回質問されている方もビットコインを振り込んでしまったということで、実際は追跡がかなり難しくなってきて、簡単に返金を求めることはできないかもしれません。
実際のところ、お金の追跡をするよりも、誰がこのような行為を行ったか追跡するほうがまだ可能性はあるかもしれません。
しかし、最近では履歴が消えるSNSを利用することも増えています。
見ず知らずの人から、SignalなどのSNSでのやり取りにしましょう、と言われたら即詐欺であるという見立てをしたほうが良いと思います。

自己防衛のポイント

被害回復をすることはかなり困難な現実がありますので、自己防衛をとにかく強化する必要があると思います。

まずこの原稿を書いている時点で、

(1)前回までに考えたようなパターンで話を持ちかけられた場合には、まず信頼できる第三者の意見を聞いて、その意見にまず従ってみること
(2)仮想通貨で振り込めと言われた場合には、どのような場合でも、支払いをしない、ということ
(3)SNSでやり取りをする、特に匿名性の高いSignalなどで、やり取りを促された場合には、詐欺だと認識すること
(4)知り合いや政府からの連絡がある場合、電話や実際にやり取りがなければ、まず詐欺であると疑うこと

などを常時気にしていることが重要だと思います。

やはり、今回の質問にあるような状況であると、振り込んだ金銭を回復するのはかなり難しいので、まずはうまい話などには乗らないように上記(1)ないし(4)のような点はいつも頭にいれておかれると良いと思います。

次回また新しい質問を考えていきたいと思います。
体調がすぐれずに咳が多い人もみかけますが、まだコロナも流行っていますので、気を抜かずにまた一週間がんばっていきましょうね。



あなたがずっと抱いている疑問を解消しませんか?
しかし、アメリカの法律事務所はハードルが高い!!確かに。

JINKEN.COMでは、アメリカの弁護士事務所への橋渡しのサービスを提供しています。
お客様の状況とニーズ、ご希望を聞き取り、必要な書類等をまとめる お手伝いです。
私たちは、ジャッジをいたしません。
皆さんの頭の中、お気持ちを、できるだけ正確に表現する業務を行います。
ご料金は事前に明確にご提示し、追加のご請求は一切ございません。
i@jinken.com または こちらから直接お問い合せください

■関連記事

米国_インターネット利用詐欺(1)_1441

米国_インターネット利用詐欺(2)_1442

米国_インターネット利用詐欺(3)_1443

運営弁護士

アメリカ暮らしを現実に。
JINKEN.COMにアカウント登録して最新のアメリカ移民法にキャッチアップ

■アメリカの永住権を抽選で取得ーDiversity Immigrant Visa Program

アメリカの永住権を抽選で取得する制度があるのをご存知ですか?
日本からも、毎年永住権者として長期合法滞在する方々がいらっしゃいます。

応募サポート希望の方はこちらから

日本出生の方は、高校卒業時点からご応募ができます!当選後も安心のサポート。まずは正しい応募から。

■グリーンカードDV当選後サポート

グリーンカードDV抽選に応募して、当選の確認を忘れていませんか?当選は、忘れた頃にやってきます!

グリーンカード当選後サポートはこちらから

充実した当選後サポートで、安心してグリーンカード取得まで進めましょう。家族・仕事・結婚・離婚・海外在住・介護に闘病と場面は様々ですが、お客様のニーズに柔軟にお応えしています。

作成者: jinkencom

jinkencom について JINKEN.COMの運営者であり、カリフォルニア州弁護士として活躍中の鈴木淳司弁護士のブログです。「移民法ブログ」では米国の移民分野についてホットな話題を取り上げて月に一度更新、「アメリカ法律ノート」は広くアメリカの法律相談に答える形で、原則毎週更新しています。なお、本ブログの著作権は著者に帰属します。 *たびたび法制度が変わりますので、最新情報をご確認の上、手続きされてください。