法律ノート 第1373回 弁護士 鈴木淳司
Jul 2, 2023
今回の記事は、私が第1367回から1369回にかけて考えた、禁止命令について、jinken.comに転載されたところ、読者の方から質問というかコメントをいただきました。
別に取り上げるほどのことでもないのですが、私が考えた内容が不足していたかもしれませんので、反省しつつ、今回はもう一度禁止命令についておさらいしながら、考えていきたいと思います。
米_しつこい元彼への対処法(4)_1373
いただいたコメントについて
いただいたコメントをまとめると「禁止命令、接近禁止、order of protectionの事ですよね?何処の裁判所に行くと良いのか書かれていなくて詳細が不明で合ったと思います。こちらのオーダーに関しては、ご相談者さまと元恋人、関係は終わっているので裁判官は却下します。通訳等で実際に数回裁判所へ行ったことがあります。なのでこの様な記事を残されたままでは、あまり時間のロスやストレスが多くなると思います。電話がかかってくるのであれば拒否すれば良い、脅しであれば警察へレポートを重ねる等、のアドバイスからではないでしょうか。何か暴力を与えられて逮捕されれば、こちらのオーダーは出て更新も可能ですが期限以内に更新を劣ると、再逮捕がない限り更新自体は出来ません。(警察の方とお話済みです。)」というものです。
今回いただいたコメントを読むと、第1369回(③)だけ読まれてコメントされているようです。
これは、私がいけないところもあります。
一つの記事を三回に分けて三週に渡って配信しましたので、忙しい読者のなかには、「前回から続けて」というところを読み逃している方もいるのだということが良くわかりました。
私も毎週、長い一つの質問に対する完結ができませんので、これについては、皆さんの注意と善意に頼るしかありません。どうか今後とも宜しくお願いいたします。
コメントには、「電話がかかってくるのであれば拒否すれば良い、脅しであれば警察へレポートを重ねる等、のアドバイスからではないでしょうか。」と教示されていますが、詳しくは第1367回(①)で、どこに相談したほうが良いのか考えました。
そして、コメントには「禁止命令、接近禁止、order of protectionの事ですよね?」という質問がありましたが、これについては、第1368回(②)で、CH-100という定型フォームがあるということを考えました。
今回、コメントをくださった方が思い込まれているのは、刑事事件が起こったときに出される、禁止命令と、民事上申請可能な禁止命令を混同されていることです。
ここが少し分かりにくかったのかもしれませんので、ここで考えてみましょう。
民事事件としての禁止命令
まず、法律ノート第1369回まで三回にわけて考えた内容は、民事事件としての禁止命令です。
フォームも民事事件のCH-100というものをご紹介しました。
CHというのは、Civil Harassmentの略です。
民事事件の禁止命令は、警察の介入如何を問わずに、申請が可能です。
民事事件ですので、当事者の意思に基づいて決定されます。
第1369回(③)までに考えた内容は、刑事事件が絡んでいるわけではなく、民事事件として対応できないか、という内容でした。
今回コメントをされている方はどうも、刑事事件、それもDV事件が起きたときのことを前提に語られているようです。
コメントに「何か暴力を与えられて逮捕されればこちらのオーダーは出て更新も可能ですが期限以内に更新を劣ると、再逮捕がない限り更新自体は出来ません。(警察の方とお話済みです。)」とあるので刑事事件における禁止命令を前提にされていることが良くわかります。
カリフォルニア州でDV事件が起きたら
カリフォルニア州でDVが事件化したときには、被疑者に対して直ちに接近、コンタクト等の禁止命令が出されます。
これは、CH-100というフォームではなく、DV-110というフォームが用意されています。
そして、ほぼすべての事件において、まず逮捕されたときに接近することやコンタクトすること、そしてハラスメントをすることの全部を禁止する命令が出されます。
そして、最初の公判の日に、たとえば、私が被告人と初回の出廷すると、そこでもう一度その禁止命令について裁判所で議論します。
被害者の胸三寸のところがあるのですが、Peaceful Contactのみが科されて、接近やコンタクトの禁止が解かれることもあります。
そして、その法廷で決まった内容がDV-110というフォームに記載され、被告人にその場で渡されます。
民事事件のように当事者が望んで禁止命令を出すわけではなく、刑事事件では自動的にまず禁止命令をだされる点も違います。
注意していただきたいのは、私が第1369回(③)までに考えた禁止命令は民事の禁止命令のことであり、刑事事件に付随して出される禁止命令とは色が違います。
この刑事事件に付随した禁止命令の詳細はまた皆さんの質問を待って考えていきたいと思います。
禁止命令には、民事と刑事がある
ただ、ここで皆さんは、禁止命令といっても、法律上、民事事件に基づく禁止命令と刑事事件に基づく禁止命令が存在して、それぞれ用途が違うということを覚えておいてください。
今回、コメントいただいた方も、ぜひ刑事事件の禁止命令だけではなく、民事事件の禁止命令も勉強されてください。
今回のコメントをされている方は、「こちらのオーダーに関しては、ご相談者さまと元恋人、関係は終わっているので裁判官は却下します。」と言われていますが、民事事件の禁止命令にもちろんこのような制限はありません。
関係が終わっていても、ハラスメントがあれば、民事の禁止命令は出ます。
法律は難しいのかもしれませんが、民事事件と刑事事件では様相が違うということの現れです。
読者のみなさんも早合点せずに、難しい内容もあるので、良く法律ノートを読んでください。
どこの裁判所で審理を行うか
もう一つ有用なコメント部分は、どこの裁判所が審理するのが適切か、ということを第1369回までの三回の中で書いていませんでした。すみませんでした。
刑事事件の禁止命令が出されるのは、もちろん被告人が刑事裁判に服する場所です。
逮捕され、公判が行われる場所となります。
一方で民事事件は、違います。
被告人の住所地、すなわち住んでいるところ、または不法な行為が行われたところを管轄する裁判所において基本的に審理は可能と法律に定められています。
そうすると、相手方が住んでいる場所か、脅迫などの行為が行われた場所ということになります。
裁判所は比較的同じ州内であれば、広く訴えを民事事件でも認めてくれるので、まずはどこで何が行われたかを確定して、第1367回(①)で考えた団体などに相談されるのが良いと思います。
今回コメントされている方は、「通訳等で実際に数回裁判所へ行ったことがあります。」と書かれていますが、たぶん刑事事件に付随する通訳をされたのかもしれません。
法廷通訳の方なのかは、不明です。
数回裁判所に行かれたことで実際に見聞されたことで「この様な記事を残されたままではあまり時間のロスやストレスが多くなると思います」と言われているのかもしれませんが、法律に興味を持たれているのであれば、法律ノートなどを使って横断的に法律に接することをお勧めします。
法律を学ぶというのは、一生、大きな海を航海していくような感じです。
私も勉強は続けていますので、一緒にどんどん考えていきましょう。
今回いただいたコメントを見て、私が弁護士になった当初のことを思い出しました。
私が当時所属していた事務所に日系の弁護士の方が居て、名刺に日本語で名前と肩書を入れたいと申されていました。
日本政府から勲章ももらっている重鎮の方なので、私は弁護士の「弁」を本来あるべき「辯」という字で印刷に回しました。
そうしたら、サンフランシスコの日本街で顔を効かせていた方が、鈴木は、日本語を知らない「弁」って書くことも知らないのだと、茶々を入れられました。
ご自身が経験してきた範囲で、世の中で使っていたのは「弁」なのでしょう。
似たような概念でももともと違うことがたくさんあるのですね。
私は当時、そのことについて何も言いませんでした。
皆さんは、もともと、「弁」という漢字は複数の漢字を簡略化して一本化されたということをご存知でしょうか。
たとえば、似たような職業の弁理士でも、旧漢字では「辨」理士と書きます。
似ていても元々は異なるのです。
今ではインターネットも発達していますので、元々「弁」にどのような意味があったのか、検索してみてください。
たくさんでてきます。
「弁」というのは中国語でいう簡体字のようなものなのですね。
また、次回から新しくいただいている質問を考えていきましょう。
独立記念日、アメリカという国の誕生日が間近ですが、私は亡き母の誕生日が7月3日なので、まずは母を尊びたいと思います。
カリフォルニア州の内陸部は暑い日も出てきました。
夏ですね。
水分補給をしながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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