法律ノート 第1419回 弁護士 鈴木淳司
May 27, 2024
メモリアルデー三連休です。
アメリカではこの3連休を境にして「夏」ということになります。
いろいろなところでバーベキューのお誘いがでてきましたし、屋外アクティビティーが本格的になります。
今年は暑くなるのでしょうか。
一方日本では梅雨でしょうか。
日本からの便りをみると蒸し蒸しジメジメという感じが伝わってきます。
私の所属する事務所は、この夏は色々ポジティブな理由で忙しくなりますが、楽しみでもあります。
またどこかで皆さんにお伝えできることもあると思います。
みなさんは、何か夏に楽しみなことは予定されていますか。
米_日本人学生とのトラブル(1)_1419
さて、今回からまた皆さんから頂いている新しいトピックを考えていきたいと思います。
いただいている質問をまとめますが、英語でいただいた質問なので、私が要点をまとめて考えます。
「日本人の友人で大学院(カリフォルニア)に来ていた留学生がいました。一緒にオンラインセキュリティー関係のアプリを開発していました。その友人がもともとのアイディアを持っていたのですが、友人数名とともに会社をつくろうという話になっていました。資金も5万ドル程度親族や学校の友人から借りてはじめていたのですが、その日本人の友人は資金の大部分を持って日本に帰ってしまい、連絡が取れなくなってしまいました。なぜ日本に帰ったのかとか、お金を持っていってしまったのか、など背景はまだわかっていないのですが、やはり状況を明らかにしたいです。会社の運営もできず、困っています。カリフォルニア州で訴訟をしても無駄なのでしょうか」
という質問です。
質問者の方は、日本人が相手となっている紛争なので、法律ノートに相談を送られたのだと思います。
法律ノートの回答は日本語なので、英語で簡単に返答しておきましたが、なかなか相談できるところがないのだと思います。
せっかく、会社までつくって運営をしてきたのに、仲間割れか、なにか事情があったのかわかりませんが、起業が頓挫するのは気持ち良いものではありません。
また、せっかく貯めた資金が一部でも持っていかれてしまっては、実損も生じているわけですから、訴訟をしてでも咎めたいと思う気持ちも理解できます。
背景がわかりませんし、法律ノートでは具体的にアドバイスをする場ではありませんが、今回いただいた内容を基礎にして、今回の質問について考えていきましょう。
学生のアメリカ滞在ステータス
まず、日本人の学生ということで、よく素性はわかりませんが、学生ビザまたは永住権などを持っている学生なのでしょう。アメリカ市民権を持っている可能性もあります。
学生ビザを持つ外国人でも株主になることはできますので、いずれの可能性もあります。
財産回復の糸口-米国内の財産
市民権や永住権を持っていれば、アメリカで自分または家族が税務申告をしている可能性もありますので、アメリカ国内に居場所や家族がいるかもしれません。
一方で、問題となるのはビザを持っている学生の場合です。
アメリカで、銀行口座を持っている可能性はありますが、不動産や、他の重要な財産というのは、持っていない可能性があります。
そして家族関係も希薄かもしれません。
そうするとまず、この日本人学生を紐づけるアメリカ国内のつながりがないということになります。
かりに、カリフォルニア州で訴訟が係属し、日本人学生が責任を負うということになった場合でも、アメリカ国内に財産がなければ、損害が回復されない可能性が高くなります。
裁判による情報開示請求はできるが…
このように、この日本人学生が、どのような移民法上のステータスがあるのかを、なんらかの方法で確認しなければなりません。
大学に事情を話したとしても、プライバシーの関係から情報を開示してくれないかもしれません。
一方で、裁判を通して、大学に証拠開示を開示してもらう方法も考えられますが、手間もお金もかかってしまいます。
アメリカ市民権、永住権をこの学生が持っているのであれば、アメリカ国内で訴訟ができる可能性が高くなりますが、一方で、日本人でビザしか持っていない学生であると、何らアメリカとのつながりがなくなっている可能性があるので、アメリカ国内での責任追及が難しくなってくると思われます。
学生本人とのつながりを調査
まずは、できる限りこの日本人学生のアメリカとのつながりを調査する必要があると思います。
学生だったので、学校に事情を説明し、学校内でプライバシーを尊重しつつ何かできないか模索してもらうこともできるかと思いますし、同じ学生同士なので、連絡先やアメリカのつながりをできるだけ利用して情報を得ることからはじめるしかないと思います。
ここから次回、実際に訴訟がでるのかということを考えていきたいと思います。
天気が良いので、あとの三連休の残りを楽しみながら、また一週間がんばっていきましょう。
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