じんけんニュース 2023/03/28 弁護士 鈴木淳司
最近ではテック業界の雇用が揺れています。
かなりの数の被用者が解雇されていますね。
アメリカでは終身雇用と言うのは原則ありませんので、市場によって雇用数や内容も左右されるわけです。
大手のIT企業が軒並み人員削減を行なっている現状で、金融業界にも不安が広がっています。
解雇されるとどうなるか、どうするか
このような経済状況のなか、アメリカ国内にいる外国人で、就労ビザを保持しながら働いている人達にも人員削減の影響があり、就労ビザは持っているものの、解雇されるとどのような影響が発生して、どのような対応策があるのか、簡単に今回総括しておきたいと思います。
その就労ビザでは合法滞在できない
永住権保持者でない限り、就労ビザを保持している外国人は、そのビザをスポンサーしている企業でのみしか働くことができません。
そのスポンサー企業に解雇される場合、原則としてその就労ビザに基づく合法滞在期間の効力は失われます。
合法滞在期間とは、アメリカに入国する際にビザに基づいて与えられる滞在期間です。
これは、I-94という今では電子化された書類でコントロールされます。
合法滞在期間
では、外国人が解雇された場合、合法滞在期間はすぐに失効するのでしょうか。
結論としてはすぐには執行しませんが2パターンの状況が考えられます。
一つ目は、解雇または辞職した場合には、その離職日の翌日から起算して60日間は、猶予期間(Grace Period グレースピリオド)として、合法的に滞在することを移民局は許可しています。
その60日間においては、就労して賃金を得ることはできませんが、一方で不法滞在にはカウントされません。
もう一つのシナリオとして、もともと入国時に与えられた合法滞在期間があり、その期間が状況猶予期間60日間より短い場合には、その合法滞在が失効する期間が最大限となります。
したがって、60日間よりも、猶予期間が短い場合があります。
難しいですが、簡単にいうと、解雇や辞職してから、60日間以内に合法滞在期間がそもそも切れる場合には、その期間が猶予期間になり、それ以外のケースでは60日間が猶予期間ということになります。
先にやって来る期限 | 合法滞在期間 |
入国時に定められた合法期間 | 入国時に定められた合法期間(60日もりも短縮される) |
離職日の翌日から起算して60日間 | 離職日の翌日から起算して60日間(合法滞在期間が60日に短縮される) |
猶予期間の計算は正確に
この期間中は、アメリカに滞在するのは合法ですが、就労などで給与を得ることはできません。
この60日間以内に合法滞在期間が切れるケースにおいては、別途移民法でプラス10日間の猶予を与えていることを計算をするときに、注意が必要です(8 CFR 214.1(l)(1))。
それから猶予期間がいつから起算されるのだという話ですが、解雇された次の日です。
解雇がいつか曖昧であったとすれば、賃金が最後に支払われた日ということになりましょう。
次に解雇されて猶予期間に突入した場合、基本的に猶予期間が終了する前にアメリカを出国しないと違法滞在ということになってしまいます。
ですので、原則としては自国に戻り、もしアメリカに戻ってきたいというのであれば、新たなビザの許可を得るなりして、再入国をすることになります。
米国外に出国せずに合法滞在とみなされるには
一方で、家族もいる、そのままアメリカに滞在したいという方も多いと思います。
せっかく就労ビザで仕事もしているのですから、アメリカで仕事を続けたいというのはもっともなことであります。
猶予期間中は、少なくとも合法に滞在できているので、いくつか、対応策があります。
もちろん、ここで述べることが全ての方法論ではありませんが、日本人の方々にも適した方法論は、以下のようなものだと思います。
永住権申請を開始する
一つは、婚姻か雇用ベースで永住権を申請する方法があります。
永住権の取得には基本的にスポンサーが必要なわけですが、一部の雇用ベースの永住権は自分自身で申請できる可能性も十分にあります。
長期的にアメリカに滞在することを考えられているのであれば、永住権の申請を猶予期間中に考えると良いと思います。
ステータスチェンジの申請をする
次に、他のビザステータスをアメリカ国内にいながら得ることが考えられます。
ビザは、アメリカ国外にあるアメリカ大使館領事館で発給されますので、アメリカ国内に留まりつつビザそのものを得ることはできませんが、I-94記載の合法滞在期間は得ることができます。
具体的にいうと、他の就労先が見つかればすぐにその就労先をスポンサーとして、就労ビザを申請できます。
それが一番スムーズなのかもしれません。
また、解雇された雇用者に再雇用をされる場合もあります。
その場合には、新たにビザを取得する必要はなく、元のビザに基づいて雇用を継続できることになります。
新たな雇用者が見つかったら、E、L、Hビザなどが考えられるかもしれませんが、ビザそのものが許可されるわけではないので、一旦ステータスチェンジが成功したとしても、もう一度、アメリカ国外に出ると、アメリカ大使館、領事館でビザ申請をする必要が出てきます。
他の種類のビザに切り替える
仮に、すぐに就労先が見つからない場合には、就労ビザではありませんが、Bビザというのが用意されています。
これは、長期滞在ビザで、最長で連続一年間(6ヶ月更新で2回)滞在することができます。
手っ取り早く、このBビザを申請して、その審理中、または許可を得ている期間中に、ゆっくり就労先を見つける方法論も考えられるかもしれません。
Hビザをお持ちで、また新たにHビザのスポンサーが見つかれば、新たな雇用者のもと、雇用をすぐに始めることも可能になるなど、特殊でかつ、被用者に有利なルールがあります。
まずは、具体的に再就職を考えて、それからどのようなステータス変更が可能なのか考えていく必要があると思います。
また、雇用の雲行きが怪しくなってきたら、すぐにいくつか新たな就職先を探すというのも一つの考え方かもしれません。
次回また新しいトピックを考えたいと思います。
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