法律ノート 第1359回 弁護士 鈴木淳司
Mar 26, 2023
花粉症になりました。
はじめてひどい症状がでて、風邪を引いているような状況になって頭が重いです。
今まで何も反応しなかったのに、空気に悪いものでもまじっているのでしょうか。
頭が重いとなかなか考えるにしても集中力が欠けてしまいます。
我慢していたのですが、薬を飲んでいます。
少し症状が和らぎましたが、なんだかせっかく季節が良くなってきたのに悔しい気分になっています。
みなさんは大丈夫ですか。
米国_窃盗にあった際の損害回復方法(3)_1359
さて、前二回考えてきた「昨年、車を盗まれました。数日後に車は出てきたのですが、もう乗れるような状況ではなく、車内にあったものも出てきませんでした。損害は保険でカバーしてもらえました。最近になって、その車を盗んだ犯人が見つかったということを警察から言われました。場合によっては、裁判で証人となってほしいと言われています。この盗んだ人がわかったということなので、保険では賄ってもらえなかった額や、不便を被った被害を民事訴訟で追求できないかと考えているのでしょうが、可能なのでしょうか。」という質問を続けて考えていきたいと思います。
検察官が介在してくれる被害者賠償制度
前回は刑事事件における被害者賠償制度を考えました。
被害者賠償は、連邦や州の裁判ではかなり制度が違いますが、検察官が被害者のために被害内容と額を裁判上顕出して回復を促すという形になります。
司法取引で刑事事件が終了する場合には、通常被告人が被害額を認め、支払いをするか、分割で支払いをするという約束をします。
ただ、全額刑事事件が終了する前に支払をすべて終わらせている事件は少ないと思います。
被害者本人主導の民事訴訟
損害が回復できないということで、民事事件を提起する場合には、検察官は関係なく、みなさんが主導して裁判を提起していく必要があります。
また、コストや弁護士費用も自分持ちとなります。
民事事件を提起するには、提起するだけでもコストがかかりますし、すぐに回復できるわけではありません。
ここでは、民事事件の手続きを端折りますが、かりに民事訴訟に勝訴したことを前提に考えましょう。
民事なら、損害請求設定がフレキシブル
民事訴訟の良いところは、被害者賠償制度に比べて、請求できる内容がフレキシブルに設定できます。
実損だけではなく慰謝料などの二次的に生じる損害も請求できます。
ですので、理論的には、今回質問されている方のように、足りない損害填補についても、追求するには良いのかもしれません。
刑事なら、損害回復を確定しやすい
一方で、刑事事件における被害者賠償制度は、被告人やその弁護人にとっては、できるだけ被害者に良いことを言ってもらって、刑を軽くするというベクトルがあります。
ですので、自主的にある程度払ってもらうという場面をみるのも少なくありません。
民事で勝訴=100%損害回収 ではない
ところが、民事事件で仮に勝訴したとしても、すぐに被害を払ってくれるという場面はありません。
和解の良いところは、必ず相手が払うという前提で約束するわけです。
なので、回復を確定するためには和解が良いのです。
一方で、勝訴をした場合、相手方が何も約束していないので、強制執行をしていく手間が生じて、これが簡単ではありません。
民事事件で勝訴しても、相手方が支払う財産を持っていない場合には、回収が難しくなります。
私自身も悔しい思いをしたこともあります。
正義を通せということで民事訴訟に勝ったとしても、回収ができなければあまり意味がなくなります。
なので、和解することも必要になる場面もありますし、自分が期待していることを通すのも100%はかなわないかもしれません。
なにより、コストや弁護士費用が多く発生します。
そういった面が民事訴訟では露呈するのです。
その方法で結果、納得できるかどうか
今回質問されている方にしても犯罪被害というすべて補填されるべきである被害があるわけですが、即すべて満たされるまで被害を回復できるか、というと難しいかもしれません。
ここまで考えてきたように主に2つの方法で被害を回復する方法がありますが、パーフェクトではありません。
自分の権利にとても神経質な人がいますので、そういう人たちは犯罪に巻き込まれても、納得する結果になる損害賠償はなかなか考えづらいのかもしれません。
しかし、社会で生きているとどこかで利益を得るところも不利益を被るところもあるわけです。
民事訴訟まで起こしても空振りをする確率も高いですから、相手の資産や態度を観察しつつ、被害者賠償制度を主に利用して、場合によっては民事訴訟を起こすという想定をしていたほうが良いかもしれません。
次回また新しい質問を考えていきたいと思います。
みなさんも花粉に注意してまた一週間がんばっていきましょうね。
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