米国_窃盗にあった際の損害回復方法(1)_1357

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1357回 弁護士 鈴木淳司
Mar 12, 2023

 シリコンバレーバンクが破綻しました。
全米でも大きい銀行です。

特徴としては特に90年代からスタートアップ企業を支援してきたところです。
この破綻は、金利の上昇やIT関係企業の成長鈍化、雇用縮小など色々なファクターがあると思いますが、他の銀行が貸さないような事業にもリスクをとって貸していたことが影響しているように思えます。

預金が凍結されていたり、借り入れをしている企業はこれから負の影響を受け忙しくなると思います。
もう少し大きな視点でみると、このベイエリアで育まれてきたスタートアップ文化に対し、今回の事件は影を落とすのかもしれません。

現在大手ITが雇用を縮小し、新たに小さなスタートアップで働きだしている人も少なくないと思います。
影響が憂慮されます。

米国_窃盗にあった際の損害回復方法(1)_1357

 さて、今回から新しく皆さんからいただいている質問を考えていきたいと思います。

いただいている内容をまとめると「昨年、車を盗まれました。数日後に車は出てきたのですが、もう乗れるような状況ではなく、車内にあったものも出てきませんでした。損害は保険でカバーしてもらえました。最近になって、その車を盗んだ犯人が見つかったということを警察から言われました。場合によっては、裁判で証人となってほしいと言われています。この盗んだ人がわかったということなので、保険では賄ってもらえなかった額や、不便を被った被害を民事訴訟で追求できないかと考えているのでしょうが、可能なのでしょうか。」という内容です。

アメリカで盗難事件は多い

 今回いただいた質問にある、盗難事件はかなりの頻度で起きています。
とにかく、車の中には貴重品は絶対に放置してはいけません。
といいつつ、貴重品かどうかわかりませんが私もいつもゴルフバッグは車にいれていますが。

このところ、高く売れるということで、ハイブリッド車両のキャタリスティックコンバーターが盗まれるケースが多く、政府まで再販業者を取り締まるなど社会的な盗難問題になっています。

今回質問された方もハイブリッド車両を盗まれているので、場合によっては部品狙いの盗難だったのかもしれません。

窃盗犯の検挙=被害回復とはいかない

窃盗犯が検挙され、刑事裁判にかけられていることは良かったかもしれませんが、たしかにそれだけでは被害が満足できるまで回復できるわけではありません。
もちろん犯人憎しという気持ちは理解できますが、憎んでもお金を払ってくれるわけではありません。

警察が来たのは、たぶん盗難車両が質問者のものかどうかを確認し、いつ、どのように駐車したのかなど犯行の態様を確認することだったのだと思います。
そして、刑事裁判になる場合には、証人として盗まれたことを証言してほしいという内容なのでしょう。

ただ、実際問題としてこのように警察に協力したとして、窃盗犯を有罪に導くことができたとしても、イコール保険では賄えていない損害を回復することには資しません。
このような背景から、質問者の方は、窃盗犯に対して民事訴訟を提起できないか、という考えにつながったものだと思います。

それでは以下考えていきましょう。

考えうる2つの損害回復方法

 このような犯罪に巻き込まれ、損害を被った場合、保険で填補されるかどうかは別として、主に2つの損害回復方法が考えられます。

今回質問者の方が提起されている民事訴訟はひとつの方法になります。

もう一つは、刑事裁判における、被害者賠償制度です。

どちらの方法が良いのか、というと簡単にお答えできないのですが、具体的事件にもよると思います。

刑事裁判における被害者賠償制度

まず、刑事裁判における被害者賠償制度を考えていきたいと思います。

刑事裁判というのは、刑法に抵触する行為をした人をどのように罰するのか決める手続きですが、刑事事件には、被害者というのがでてくることがあります。
今回の質問にあるような窃盗被害者は典型例ですが、DV事件の被害者、詐欺のような財産犯の被害者などみなさんもニュースで観る身近な例はたくさんあると思います。

一方で、麻薬所持使用のような罪では、自己被害というか違法薬物を自分で使って捕まるということですので、第三者の被害者はいないということになります。

犯罪被害者がいる場合、法律で被害者賠償制度というのが定められています。
刑事事件では、被告人の罪を決めますが、それに付随して被害を被告人に支払わせることを判決に含めるのです。
この犯罪被害については検事、保護観察局、連邦ではプリトライアルサービスなどが裁判上被害を明らかにして(顕出して)いきます。

ここから次回続けていきましょう。

 ベイエリアは雨が多いですが、暖かくなると今度は、高度の比較的低いところに積もった雪が一気に溶ける心配があるようです。
夏時間になり、春を迎える季節ですが、花粉に注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。

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作成者: jinkencom

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