法律ノート 第1333回 弁護士 鈴木淳司
Sep 26, 2022
法律ノートの回数も鎌倉幕府が滅亡した年と重なりました。
これから建武の新政を経て室町時代に突入といった感じでしょうか。
先週、カリフォルニア州の最高裁で面白い判例が出ました。
「ミツバチの一種であるバンブル・ビー(マルハナバチ)は魚の一種である」という判例なのです。
何を言っているのか、というと、バンブル・ビーというのもカリフォルニア州において、絶滅危惧種(Endangered Species)に指定したい団体が推していた事件があったわけです。
そして、魚には絶滅危惧種保護法がすでに制定されていたのですね。
そこで、バンブル・ビーも魚の枠に入るという主張をして最高裁が認めたのです。
形式的には無理筋で新しく法律をつくるべき状況なのですが、最高裁判所の判決文を読むと、バンブル・ビーと魚は無脊椎動物として共通するので、保護に含まれるとしました。
ある意味こじつけ感満載なのですが、動物の保護のためのこじつけなので、微笑ましいと思いました。
週末はまた暑かったですが、みなさんはいかがお過ごしになられたでしょうか。
アメリカで違反切符(2)_1333
さて、前回から考えてきた「コロナの規制が緩くなってきてワクチンも複数回打ったので、友人と久しぶりに飲もうということになりました。そして、市内(サンフランシスコ)のレストランに集まって久しぶりに再会を楽しみました。私は、配車サービスを呼んだのですが、泥酔しているのではないかと疑われ、口論となり乗車を拒否されました。次の配車を待っているときに、警察に止められチケットを切られました。たしかに配車サービスと口論となったことは事実ですが、なにか手を出したことなどはありません。それなのに裁判所に行くようにチケットにはかかれているのですが、なにか罪になるのでしょうか」という質問を続けて考えていきましょう。
平穏を侵害するとは?
前回はカリフォルニア州刑法第415条(平穏侵害罪、Disturbing Peace)について考えました。
この刑法上評価を受ける平穏を侵害するという内容ですが、あまりにも漠然としているようにも思えます。
この415条は、3つの類型を規定して、公で行われた行為を罰しています。
(1)公の場で喧嘩をし、喧嘩の挑発をする行為
(2)故意をもって、第三者に対し、不合理的なレベルの音で迷惑をかける行為
(3)公の場で、挑発する言動を用いて、第三者に暴力的なリアクションを惹起させる行為
が規定されています。
かなり広範囲の言動が処罰対象になっていることがおわかりになるでしょう。
今回の質問者に関してですが、シェアライドの人と口論になったということで、どのような口論か具体的にわかりませんが、センシティブな運転手が警察に連絡したのかもしれません。
そうすると、上記でいう(1)の類型に当てはまる可能性は残ります。
もちろん、質問者も言い分もあるでしょうが、警察からチケットをもらっているのであれば、裁判所に出頭して申し開きをすることになりそうです。
罰金もしくは拘留される場合も
注意したいのは、415条は、罰金は400ドルまでということになっていますが、90日の拘留刑も定められています。
ですので、あまり安易に考えない方が良いかもしれません。
もしかしたら、このシェアライドに車内を映しているビデオなどもあるかもしれませんから、証拠の保全についても考えなくてはなりません。
弁護士に委任するレベルかは、具体的に相談を聞かないとわかりませんが、あまり簡単に考えない方が良いかもしれません。
この415条というのは、弁護実務では実はよく出てくる条文です。
私もいろいろな刑事事件にかかわりますが、司法取引をする際に、「415条で許してよ」といった感じで、重い罪を軽くするネゴをするときによく使います。
大体の刑事事件を大きな目で見ると、415条に反する事実もあるので、検察官が交渉に乗ってくれると、415条で済み、罰金だけということになるのです。
あまりストレートに415条違反を問われるという事件を弁護したことはありませんが、昔やった事件では飲み屋で店側の対応か、会計トラブルだったか忘れましたが、415条で起訴ということになった事件があります。
早い時点で相談をされたので、その店と警察と話をまとめて起訴はされなかったように思います。
今回の質問者の方も実損が生じているような事件ではないので、可能ならはやいうちに手を打つとよいかもしれませんね。
もちろん415条も罪ではありますが、刑事法廷に行くと、ほとんどの事件が415条違反よりも深刻なものが多いですから、裁判所も検察も、できれば早く処理をしてしまいたいとおもっているかもしれません。
次回また新しくいただいている質問を考えていきましょう。
もうこれから日が短くなってくるのですが、まだ暑い日が続いています。
朝晩の寒暖差はでてきているように思いますので、体調にきをつけてまた一週間がんばっていきましょうね。
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