留学斡旋事業者が閉業_返金と法的手段(2)_1312

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1312回 弁護士 鈴木淳司
May 4, 2022

 日本は天気の安定しないゴールデンウィークのようです。
コロナも収まってきて随分海外旅行も増えているようです。
知り合いも二年ぶりのアメリカだ、という話をちらほらしております。
まだ、元のようには戻ってはいませんが、随分国際線の飛行機も混んできているようです。
また、マスク不要の社会に戻るのでしょうか。
まだまだ人間とウイルスの戦いは続いていますが、明るい光が見えてきているように思います。
皆さんも夏を楽しめると良いですね。

留学斡旋事業者が閉業_返金と法的手段(2)_1312

 さて、今回は前回から考えてきた「日本在住の者です。コロナの渡航制限規制が緩くなってきたので、息子のアメリカ留学が現実的になってきています。アメリカの大学に入学することを目指し、まずその用意のために語学学校に入ることになっていました。この語学学校留学に関して、友人から紹介された東京にある留学斡旋事業者に頼んで、ある程度の手付金の支払いも終えています。ところが、この留学事業者がコロナ禍で事業を畳み、手付金返金も受けられない状況に陥っています。東京の留学斡旋事業者は、この語学学校の出先機関だということを言われていたので、語学学校に直接息子の留学受け入れを主張できないかと思っています。法的に何か言えないのでしょうか」という質問について、どのような法的手段が取れているのかを考えていきたいと思います。

手付金の返金訴訟はできるか?

 まず、日本において、この留学斡旋事業者に対してなんらかの返金に関して訴訟を提起することができるかもしれませんが、すでに事業を畳んでいるのであれば、実際問題として訴訟を提起して手付金を回収するのは難しいかもしれません。

最初にこの留学斡旋事業者を探さなければならないでしょうし、探したとして任意に支払をしない限りは訴訟を提起するしかありません。

留学斡旋事業者が法人として契約をしていたとすると経営する個人に対して訴訟をするのが難しいかもしれません。

手付金は誰との契約だったのか?

次にアメリカの語学学校に対して日本で訴訟を提起することが考えられます。
アメリカの語学学校が日本にある留学斡旋事業者を使って、学生を募っていることをメインの理由にして、経済活動を日本でも行っていた、という立て付けが考えられます。
しかし、海外に所在する法人を相手として訴訟をする場合にはかなりの壁が存在します。
直接の活動ではなく、斡旋事業者を使っていて、その斡旋事業者がいわば一心同体として海外にある語学学校のために活動していたことをある程度裁判上で証明していなければなりません。

前回考えましたが、今回の質問者の方が、直接アメリカの語学学校と契約したのか、日本の斡旋事業者もその契約の一当事者として登場するのか、キモになるところであります。

まずは直接交渉を

 それではアメリカで、留学先として考えていた語学学校に対して何か直接言えないか、ということですが、言えるとすれば、手付金を返せ、というか、残額を払うから入学させろ、ということになろうかと思います。

まずは、訴訟を使わずに直接交渉するのが良いのではないでしょうか。

実際に手付金を支払っている事実はあり、その手付金は留学のためであったことが示せれば、語学学校も無視はしないと思います。
なんらかの回答はあろうかと思います。

考えられる回答は斡旋事業者が勝手にお金を集めた、という可能性もあるでしょうし、手付金は必要な分は受け取っている、というかもしれません。

この語学学校がお金を受け取ったかどうかわかりませんが、少なくとも自分たちの学校の評判を守るために、なんらかの解決策を提示してくる可能性はあると思います。

アメリカの語学学校と言ってもピンキリでありましょう。
私もよく実態は把握していませんが、個人で経営している学校もあれば、大学の付属機関として機能しているところもあると思います。

まずは、交渉をすることをお勧めします。

州の消費者行政に相談してみる

かりに、交渉がうまくいかなかった場合、訴訟を提起する前に、その語学学校が所在する州の消費者行政に相談することもありえます。
語学学校は英語が話せない外国人相手にやっている商売ですので、それなりに紛争が発生しやすい業態と言えます。
ですので、行政もある程度目をつけて監視していることが多いです。

また、この語学学校がいわゆるI-20という学生ビザ(Fビザ)を発給できる団体である場合、アメリカ連邦政府に登録がされているはずです。
国家安全保障局(Homeland Security)に対して、クレームを提出することも考えられます。

行政対応がNGなら訴訟

これらの行政を通しての対応がダメだった場合、訴訟で返金を求めるのが現実的になるとは思います。

返金については、州の裁判所に提訴することになろうと思いますが、その金額いかんによって、少額裁判制度を使うか、通常の裁判をするか、ということになります。

少額裁判制度を利用する場合には、本人が裁判に出廷する必要があり、代理人を立てることができません。
裁判は費用がかかります。
費用対効果を考える必要がでてくるところです。

 以上が今回の質問に関するだいたいの考えだと思います。

一度お金を払ってしまい、留学が頓挫すると、どこに対して返金を求めるのか、など問題が多岐に渡る可能性があります。
したがって、今一度支払いをする相手方は誰なのか、注意して確認することと、契約書がある場合にはその内容を確かめて、不安があればいくつか信用できるであろう留学斡旋事業者に頼むべきだと思います。
一つの留学斡旋事業者に乗っからず、相見積もりなども得られる状況にしておきたいところです。

 私の通勤路では花が綺麗な季節です。
人間の肌の色はある程度限られていますが、花の色というのは、まあそれは様々で艶やかなものですね。
植物が元気ですので、元気をもらいながらまた一週間がんばっていきましょうね。

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作成者: jinkencom

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