法律ノート 第1305回 弁護士 鈴木淳司
March 12, 2022
コロナ禍における日本入国制限が緩和されてきたのか、今月に入り、アメリカに出張ということで日本から来られる方々が増えてきました。
私も何件かミーティングの予定が入り、やっと国際的な行き来の正常化に向けて動き始めたように感じます。
サンフランシスコでは、客に接して働いている人たちは別として、街にはマスクをしていない人の方が増えてきました。
今週末から夏時間に変わりますし、さらに人の動きも正常化に向かうのではないでしょうか。
皆さんのお住いの地域はどのような雰囲気になっているのでしょうか。
詐欺で海外送金_1305
今回は、直近で私に相談があった詐欺の事例について、皆さんにも注意を喚起したく法律ノートにしてみようと思いました。
ボート購入の詐欺
事例は、ボートの購入です。
日本からアメリカに係留しているボートを、ボートの売買サイトを通して売り主をみつけ、お金を電信送金したところ、ボートは送られて来ず、詐欺であったことが明るみに出た事例です。
四半世紀友人である関西の弁護士から、相談が持ち込まれました。
関係書類をデータで転送してもらい、話を聞くと、フロリダのボート業者から数年落ちのボートを購入した。
権利証なども送られてきている、アメリカに船があるのに、イギリスの銀行口座を指定してきている、などの情報がわかりました。
日本から英国に送金しているが、そのお金に関して英国からまったく連絡がないという事実もわかってきました。
週末を挟んで、私はすぐに行動し、送金先銀行名と同名の銀行が事務所近くにあったので乗り込んで情報を収集し、イギリスに電話をかける段取りは時差問題を除いて整えました。
そして、直接その売り主である会社に電話をしました。
しかし、その番号は通常の商売とはいえない、勧誘のような内容が流れていました。
他に電話番号がないかリサーチして、かけてみると、老年の男性が電話にでて、その男性の会社はたしかに船のことを扱っていたが、今は売買していない、ということ、会社の情報を使われていて迷惑をしていること、もうその男性はリタイアしていて、子供も二人医者になっていて、お金に困っていないことなどを教えてくれました。
これで詐欺だな、と思いました。
送られてきた書類は偽造
権利証などもデジタル技術を使って精巧に偽造されていることも明るみになり、メールアドレスも、勝手につくったもので、やり取りに添えられているPDFおよび画像もすべて情報が隠されていました。
銀行口座を間違ったような体裁を取り、組み直しをメールで求め、時間を稼いで、その間にお金を抜き取るような計画的な犯行だったことがわかってきました。
以上のことを相談者に伝えると、もちろん、泣き寝入りはできず、なにかしたいということですが、警察や銀行などに相談することは可能でしょうが、お金が戻ってくるということはかなり難しいのではないかということも話しました。
送金後は取り戻し不能
電信詐欺は良く聞きますが、お金を送ってしまうともうおしまいです。
着金後、今回のように発覚が遅れてしまうと、もうお金は抜かれていることになります。
金融機関も電信送金にはナーバスになっていますが、こういう理由があるからです。
今回も入金に手違いがあったとか、着金が遅れているとか、いろいろな理由をつけて、発覚が遅らされてしまいました。
私もこのような犯罪は許せないですから、手助けしたいのですが、弁護士として活動する以上、お金がかかります。
詐欺に遭った被害者にさらにお金を出させるのも気の毒なので、今後の判断は委ねるということになりました。
国際取引と個人売買
こういった船や高価な車の売買で騙されないためには、特に国際取引をする場合には個人売買は気をつけなければいけません。
騙されないためには、売主の場所でエスクローを開き、権利や物を、第三者を通して確認してから購入することは考えても良いかもしれません。
また、詐欺に遭わないためにも、たとえば日本とアメリカの売買で、他の国が絡む要素があったら要注意ということで、取引は避けた方が良いと思います。
詐欺グループは、最近では必ず3カ国以上の絡みをつくり対応を遅らせています。それから、お金がかかっても輸入代行などのプロに任せて取引をしたほうが素人は安全です。
個人売買だと、安いと思って飛びつくのはあまり高額商品ではお勧めできません。
私も、何もできないのは歯がゆいです。
しかし、やはり犯罪者はインターネットを利用して年々巧妙な詐欺を行っています。
いたちごっこではありますので、やはり犯罪に巻き込まれないためには売り主が物を持っている場所の法律や商慣習を理解していない限りは手をだすのは躊躇するべきですし、お金を送金する際には、かなり吟味してから実行するという買い主側の注意も必要だと思います。
次回は、皆さんから頂いている質問をまた考えていきましょう。
暖かくなってきました。
屋外でのアクティビティーを楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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