送金詐欺-その請求は本物?_1256

法律ノート 第1256回 弁護士 鈴木淳司
March 31, 2021

送金詐欺-その請求は本物?

 柔道の古賀稔彦さんの訃報に接しました。信じられません。
オリンピックの舞台で、怪我を負っていても大技を繰り出し、異なる武術を習っていた私でさえも本当に尊敬の念を抱いた人物でした。
彼は、「オリンピックで金メダルを取ることを目標に武術をやるな、優しい人間になるために武術をやれ」と言って後進を育てきました。「柔よく剛を制す」、その手本のような人でした。
デジタル化されていく世の中で、卓越した能力と心を持つ人がまた一人失われました。

 さて、今回は皆さんからいただいている質問にお答えするのを一回休ませていただき、最近頻発している送金詐欺について皆さんに注意喚起をしておきたいと思います。

日本の独立行政法人であるJETROなども自身のサイトで注意をしていますが、私も最近実際に起こった例を仕事上接しましたので、今回取り上げて、何に注意をするべきなのか、具体的に考えていきたいと思います。

送金詐欺ー具体的な事例

 まず、送金詐欺といっても、法律用語そのものではなく、どういった詐欺なのかわかりにくいと思います。
どのような状況を指すのか具体的に考えてみます。

いろいろな例があると思いますが、一つ例を挙げてみます。

まず、皆さんが会社の会計責任者だとしましょう。
いろいろな業務はあると思いますが、他社とのお金のやり取りは頻繁に行われる業務の一つだと思います。サービスや物に対する対価を払うのが最たるものでしょう。もちろん、その逆に売掛金を回収するといった業務もあると思います。

電信為替取引の悪用

そして、金銭を他社や他人に支払う場合には、どのような方法で支払うでしょうか。

アメリカでは小切手、日本では現金払い、銀行振込などが伝統的に行われてきましたが、最近では電子決済を利用することが多くなってきたと思います。昔から、電信為替(Wire)は使われてきましたが、現在でも銀行間の取引を利用する電信為替の決済は多く行われています。
A社からB社に支払いをするときに、A社がA社の口座を持つ銀行に指示、その銀行がB社の口座がある銀行に電信為替で送金、そして、B社の口座に入る、というのが数日間で行われます。
ただA社が銀行に支払いを指示し、その銀行が送金をしてしまうと、B社の口座のある銀行の裁量もありますが、基本的に支払いを止めることはできない仕組みになっています。

この電信為替送金を利用した詐欺が多発しています。

メールサーバーから入り込む

 さて、皆さんが勤める会社をAとしましょう。毎月、毎四半期など、取引先のB社に対して支払いを電信為替送金の方法で定期的に行っているとします。
A社としては、B社との付き合いも長く、いつもの口座に指定された金額を振り込む作業をしているので、会計責任者である皆さんもB社からの情報を信用しながら取引を何年も続けているとしましょう。

ところが、悪い連中が、まずはA社の電子メールサーバーに不正にアクセスして、A社とB社のやり取りの記録を手に入れます。
この悪い連中をXとしましょう。

A社とB社は、いつもどおりメールをやり取りしていますが、その流れをXは読んで理解します。
このやり取りが日本語ではわかりにくいのでしょうが、英語だと簡単に読まれてしまうようです。

ある程度のやり取りを理解したところで、XはB社になりすまして、A社にメールを送るようになります。
XはB社になりすますために、B社の使っているドメイン名に近いドメイン名を使ったメールアドレスを用意して、A社とのやり取りをはじめます。
ある程度セキュリティを高く設定したり、不自然なドメインからのメールだとその時点で気づけば、被害には遭わないのですが、場合によってはm(小文字のM)をrn(小文字のRとN)といった細かく気づかれにくいアドレスを利用してメールを送ってくる場合もあり、かなり注意しないとわからない場合もあります。
その時点で、不自然なことに気づけば、それで何もないわけですが、詐欺を試みようとしているXの正体はまずわからないということがあります。

Xはやりたい放題ですから、次から次へとターゲットを変えて、詐欺に誘い込もうとします。

電子コピーも駆使して成りすます

メールにはB社のロゴなどもデジタルですから流用しているので、一見すると真正なやり取りのように見えます。
B社のメールのようにも見えるなりすましメールがA社の会計責任者のあなたに届きます。
そして、あなたはXをB社と誤信して、やり取りを続けます。

頃合いを見計らって、Xは、事情があってB社の振込口座が変わったので、A社からの入金を新しい口座の方によろしく頼む、と言ってきます。
A社としては、新たな口座を受取人として、送金を実行します。
しばらく経ってから、B社から、「今月の振り込みがない」と連絡を受けて、初めて、Xに詐取されたことに気づく、ということになるわけです。

気づいたときには、すでにA社の銀行も送金を止められず、誤振込先の銀行も、知らない国にあったりして、対応が難しくなります。

このような詐欺が頻発しているのです。
銀行としても、送金についてはかなりナーヴァスになっているのはこのような事件があるからなのです。

被害に遭わないためには?なりすましへの防衛策

さて、具体的な例を考えたところで、それではこのような詐欺を未然に防ぐためにはどのような策を講じておけばよいのでしょうか。

言ってしまえば簡単なのですが、メールで送金の指示があった場合には、必ず送金前には電話で送金先を確認するということです。

さらに、新規の取引先、または定期的に付き合いのある会社でも送金先に変更がある場合などは、できればビデオミーティングなどを使って、振込先を確認するのが良いと思います。
かりに、急いでいるとか、忙しいとか、言われた場合には、会社でポリシーを作り、そのポリシーに違反するので、送金はできないということで、はっきり相手を確認することが望ましいと思います。

また、送金をする際には、一人で行わず、かならず内部でも送金先の確認を複数人で行うのが良いと思います。
そして、送金先を確認する場合にも、できれば送金先が会社であれば、その会社の人間を会計担当の人に限らず知っておくことが望ましいと思います。

もちろん、業務は忙しいでしょうから、いちいち確認をするのも面倒かもしれません。
しかしできれば、まずはメールで送金先を確認したうえで、もう一度電話やビデオミーティングなどを使って、確認するということは重要になると思います。
さらに、着金について電話で今一度確認するルールを作っておいても良いかもしれません。
いつ着金するのか銀行に聞けばある程度はわかるでしょう。

今回は、送金詐欺について考えました。

このような詐欺はいろいろなパターンがありますし、ITシステムのセキュリティにどんなにお金をかけても、いたちごっこの部分があります。
詐欺は人が行う悪事ですから、こちらも人の注意喚起がカギを握っています。ですので、やはり対抗するのは、送金については特にルーティーンのようなものについても、常時注意しておくべきですね。


次回は皆さんからいただいている質問を考えていきたいと思います。

日焼けするような日差しになってきました。春真っ盛りです。
コロナのこともあるので、気をつけることは前提ですが、外でのアクティビティを色々楽しみながらまた一週間がんばっていきましょうね。

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作成者: jinkencom

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