法律ノート 第1035回 弁護士 鈴木淳司
November 30, 2016
皆さんは、サンクスギビングはゆっくりされましたか。私は随分賑やかに色々な人達と時間を過ごした週末になりました。サンクスギビングの週といえば、アメリカでは買い物が盛り上がりますが、最近ではサイバーマンデーセールだけではなく、サイバーウィークセールなどと安売り期間の幅が広がっていて、一体いつが安売り期間なのかわけがわからなくなってきていますね。
銀行小切手で詐欺。対処方法は?(1)_1035
さて、今回から新たにいただいている質問について考えていきたいと思います。いただいている質問をまとめると、「振り込め詐欺のような状況に遭っています。友人からの紹介だったので信用したのですが、その友人も騙されていたようです。小切手が送られてきて、それを現金に換金し、郵送をして欲しいと言われその通りにしました。このような場合どこへ相談をすればいいか、または泣き寝入りになってしまうのでしょうか」というものです。
詐欺関連の相談は増加傾向
最近類似したトピックについて、法律ノート上で注意を促しましたが、最近かなりの頻度で、この手の相談を受けます。オンラインでの売買やサービスに起因する詐欺も多くなっていますが、今回の質問者のように、小切手などの有価証券に起因するケースも少なくありません。実際に、弁護士も詐欺にあう事例まであります。
詐欺の手口は様々
今回質問されている方の状況を具体的に考えると、まず、友人の友人と思われる人が、小切手の換金を頼んできます。この質問者は、自分の銀行口座を利用して、この小切手を換金してあげるということになったと考えられます。この事務作業にお金をもらっているのかどうかは、定かではありません。そして、手元にある小切手を自分の口座に入金し、口座から現金を引き出し、郵送という方法を書かれていますが、米国では基本的に現金書留という制度はありませんので、なんらかの方法で、詐欺をした人に現金を渡してしまったということになります。
この手の詐欺には、パターンもいくつもあり、たとえば、ある企業に新規の売買の申込みをし、小切手を送り、商品を受け取ります。そして、流通性のある商品を受け取ったうえで、小切手は実は偽造されたものだった、というパターンも実際にありました。
他にも、たとえば、オンラインで個人売買を装った買主が、物の売主に購入代金より金額の高い偽造小切手をわざと送ります。そして、すぐに売主に連絡して、金額を間違ったので、一部送り返すように仕向けるというパターンもあります。
アメリカの小切手~パーソナルチェック/キャッシャーズチェック~
ここで、小切手について少々考えます。
小切手というのは、アメリカでは主にパーソナルチェックと呼ばれるものと、キャッシャーズチェックと呼ばれるものがあります。前者は、個人の口座から本人が振り出した小切手をいいます。後者は、銀行が支払をする責任を負う小切手の通称です。銀行が振り出した小切手の方がより信用が一般的にありますね。個人だと口座にお金がないのに、小切手を振り出し、いわゆる不渡りになることもありえます。一方で、銀行振出小切手は、銀行は払ってくれることはいわば当然なので、信頼性も高いのです。
今回の質問者も、たぶん偽造された銀行振出小切手を掴まされてしまったように思えますが、この一般の信頼を逆に利用した、銀行振出小切手を利用した詐欺の例が多いのが現状です。
したがって、銀行振出小切手だからと言って、すぐに安心して信用するべきではなく、その振出銀行に問い合わせをしたり、小切手が正しいものか、確認する必要があります。また、現代では、小切手の使用自体が少なくなってきているのですから、銀行振出小切手であろうと、通常の小切手であろうと、小切手による取引は避けることにすればよいかもしれません。
被害にあったらどうするか
小切手というのは、主に金融機関によって現金化されていくものですので、今回の質問のようなケースでは、まずご自身の口座がある金融機関に話をする必要がありますし、同時にご自身が被害にあった場所、またはお住いの場所を管轄する警察に相談をする必要があります。金融機関と話をするにしても、まずは警察に被害届を出すことを求められるかもしれません。次回続けて考えていきたいと思います。
ずいぶん天候も寒くなってきましたが、街はホリデーシーズンの灯りが多くなり、綺麗です。冬は冬の楽しみもあり、サンフランシスコではカニのおいしいシーズンまっさかりです。寒さに負けずまた一週間がんばっていきましょうね。