トラストや遺言は不要?(3)_1304

サンフラン SF滞在

法律ノート 第1304回 弁護士 鈴木淳司
March 7, 2022

 先日、亡き母が残した35ミリの古い写真ネガを現像しようと、私の所属する事務所そばのスーパーに持ち込んだのですが「ネガの現像機器はもうないよ」と言われました。
昔の感覚では、ネガの現像はどこでもできたのですが、もう過去のことなのですね。
ネットで検索してみたら、デジタルカメラを使ってデジタル化するとか、そういったサービスをオンラインで提供する業者がありました。
もう写真ネガというのは過去の遺物的な感があるのですね。
大事な遺品なので、自分でやって失敗するのは嫌なので、丁寧にやってくれそうな業者を選びネット注文してみました。
過去の情報はどんどんデジタル化しておくべき時代でしょうか。

トラストや遺言は不要?(3)_1304

 さて、前回まで「カリフォルニア州に家族で10数年住んでいます。コロナ禍になり、私の家族が付き合っている人たちが、トラストや遺言など、相続の準備をしているという話をするようになりました。私の家族は何もしていません。やはり周りでコロナで死者が出るといったニュースがあり、私どもも相続のことを考えなくてはと思うようになりました。ただ、色々聞くと、トラストや遺言がなくても相続はちゃんと行われる、という話も耳にしますが、一方で、相続がうまくいかないと政府に財産を取られてしまう、ということも聞きます。トラストや遺言を作成しなくても良いのか、どのように考えれば良いのか教えてください。ちなみに銀行口座や株などはありますが、不動産は所有していません。」という質問を考えてきました。

前回までで、遺言やトラストがなくても相続はほとんどの場合、法定相続という制度があるので、問題なく行われるということを考えました。

遺言やトラストのメリット

では、なぜ遺言やトラストをつくる人が多いのでしょうか。

いくつか主要な考え方を今回考えましょう。

まず、遺言やトラストがあると、残された人が助かります。
どこにどのような財産があり、誰がどれだけもらえるのか、といったことがクリアーにわかります。

ご自身の死後、周りの人達に迷惑をかけない第一歩になります。
残された人たちに不安を与えないし、場合によっては相続争いが発生しかねない事情を沈静化できるというメリットがあるのです。
自分の家族が金で争うほど悲しいことはないですよね。

遺産の管理者が明確

次に、遺言やトラストがあると、その中に、本人の死後誰が遺産を管理するのか記載します。

この遺産を誰が管理するのかは、かなり皆さんの死後重要になります。
皆さんが亡くなって、自分の財産を自由に動かせなくなると、色々な不都合が生じます。
たとえば、税金を払う、家をメンテナンスするなどがすぐに思いつきますね。

遺産管財人を遺言やトラストで選定しておかないと、まず裁判所に遺産相続についての申立をして、裁判所から遺産管財人を指定してもらう必要が生じます。
手間がかかるのです。

皆さんの死後スムーズに財産の管理分配を行うためにも管財人を生前に指定しておくメリットは大きいです。

法定相続外の人や団体に寄付

 それから、法定相続となる場合には、本来は財産を分配したい人や団体にまったく財産は行かない、ということになります。

たとえば、よくある例は、ずっと所属していた教会、非営利団体に寄付をしたい場合です。
もちろん生前に寄付をすれば問題ないのですが、死亡してしまうと寄付はできません。

しかし、遺言やトラストに記載しておけば寄付も可能になるのです。

法定相続では基本的に血の繋がり、家族の繋がりを基礎として相続されますので、第三者に相続させたい気持ちがある場合には、遺言やトラストを作成するメリットはあるわけです。

 このように、基礎的な部分でも遺言やトラストのメリットはあるので、作成を考える人が多いのです。

残された人のケアとして

遺言やトラストは皆さんにとって「最後の意思表示」ということです。皆さんの死後、あとに残された人のケアという意味合いが強いのです。

今回質問されている方は「自分は面倒だし、手間やお金がかかるから、遺言もトラストも別にいいや」と思われているのかもしれません。
それはそれで良いのですが、一度、「残された家族のため」という観点から考えてみてください

実際に、私も法律家として関わる場合、遺言やトラストがある場合とない場合では、手間などが全然違うことを知っています。
イコール残された家族の負担も違ってくるのです。

 今回のトピックはここまでにして、また次回新しい質問を考えていきましょう。

皆さんも、家族がいる場合には、考えておいて良いトピックでしたが、追加で質問があるところだと思いますので、いつでも法律ノート宛(question@marshallsuzuki.com)に質問を送っていただければと思います。

三寒四温的な気候ですが、体調に気をつけながらまた一週間がんばっていきましょうね。

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作成者: jinkencom

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