法律ノート 第1311回 弁護士 鈴木淳司
April 25, 2022
先週、ある事件で敵方だった政府関係者が民間に転職するということで、私と同業者と一緒に呑みにいったのですが、楽しかったです。
もちろん仕事の話とは別腹で、また酒が進んでしまいましたが、良い気分転換になりました。
やはりオンラインより一緒のごはんを食べながらの会話は格別です。
仕事のやり方とかはもう元には戻らないのかもしれませんが、人との交流は元に戻ってほしいものです。
留学斡旋事業者が閉業_返金と法的手段(1)_1311
さて、今回からまた新たにいただいている質問を考えていきたいと思います。
いただいている質問をまとめると「日本在住の者です。コロナの渡航制限規制が緩くなってきたので、息子のアメリカ留学が現実的になってきています。アメリカの大学に入学することを目指し、まずその用意のために語学学校に入ることになっていました。この語学学校留学に関して、友人から紹介された東京にある留学斡旋事業者に頼んで、ある程度の手付金の支払いも終えています。ところが、この留学事業者がコロナ禍で事業を畳み、手付金返金も受けられない状況に陥っています。東京の留学斡旋事業者は、この語学学校の出先機関だということを言われていたので、語学学校に直接息子の留学受け入れを主張できないかと思っています。法的に何か言えないのでしょうか」という質問です。
コロナの影響で、留学生にはかなり影響が出ていると私も親しい人からも聞いたりしています。
また、東京であろうが、どの大都市でも、この数年事業の閉業、解散などは良く耳にします。
質問者が利用されていた事業者はどのような事業者かわかりませんが、多くの旅行関係の事業者は影響を受けていることは確実です。
この事業者の経営状況がどうだったのかわかりませんが、留学斡旋などは閑古鳥が鳴いてしまうような状況が続いていたとは思います。
とくに、海外から日本で学びたいという留学生は今でもかなり入国が制限されていますから、学生だけではなくその周りの人や団体も煽りを食らっているように思います。
どんな留学斡旋事業者だったのか?
さて、今回の質問で考えておかなければならないのは、東京にある留学斡旋事業者の立ち位置です。
メールでの質問なので具体的にアドバイスができるほどの書類や情報を検分していないのですが、本当にアメリカにある語学学校の出先機関であったのかどうかということがポイントになります。
今回の質問者は日本でも法律相談をされているようですが、あまり望んでいる答えは返ってきていないようではあります。
一般論ですが、アメリカにある語学学校が日本に支社を作るメリットは営業目的以外あまり考えられません。
そうすると、斡旋事業者は究極、客を探す役目を負っているだけなので、語学学校とは斡旋一件につき、いくら、という契約にはなっているでしょうが、それ以上の企業同士のつながりがないと考えるのが一般的でしょうか。
ただ、あくまでも、この企業同士のつながりというのは斡旋事業者と語学学校の契約関係になっているでしょうから、確かめたければ、その契約を確認する(外部からはこの確認は難しいかもしれない)ことや、登記などを見て、株等持ち分や役員等の構成を確認する必要はあるのではないでしょうか。
どのような経緯かよくわかりませんが、この斡旋事業者が出先機関であるとか、表立って宣伝広告をしているなどの事実があれば、表見的な代理をしている者として責任をある程度追及できる可能性は残りますが、かなり法的には難しい立て付けになるかもしれません。
支払明細や、そのやり取りの記録を残す
次に、「手付金」を支払ったということですが、何に対してお金を払ったのか支払明細があれば確認したほうが良いと思います。
その支払明細に、たとえばアメリカの語学学校での授業料という明記があれば、語学学校に返金なり、授業出席なりについて法的に主張できる可能性は出てくると思います。
しかし、法律的に語学学校に「お金を支払ったのだから、返金なり、出席させろ」と言っても、反対に、斡旋事業者からお金はもらっていない、と言い返されるかもしれません。
こういった抗弁があると紛争が簡単に解決しないかもしれません。
今回質問されている方が持っている証拠というのは唯一斡旋事業者からもらった支払明細だと思います。
その支払に向けたやり取り(電子メール)などとともに保存はしておくことは怠らないでください。
次回どのような法的な手段が可能なのか、みなさんと一緒に考えていきましょう。
戦争のニュースを聞くのは心が痛いですが、人々の安全を願いながら自分らも健康でまた一週間がんばっていきましょうね。
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