法律ノート 第1294回 弁護士 鈴木淳司
December 21, 2021
香港の選挙はどうも、中国の影響が強く今までの民主とは違った状況になっているようです。
選挙のシステムを色々読み解くと、どうみても中国共産党のやり方に従わなければ違法になってしまうような状況ですから、もう民主主義とは言えませんね。
まあ、アメリカも偉そうに民主主義だと言っていますが、共産党は歴史的に政治から排除しています。
どの国でも、本来の民主主義とは言えない闇はあるのでしょうか。
デモクラシーというのはもともと衆愚政治を指しますが、今回の中国の動きをみて、本来何が民主主義なのかを見直す機会になるのではないでしょうか。
デポジション-deposition-米民事訴訟(3)_1294
さて前々回から続けて「日本の企業に勤める者です。勤めている会社がアメリカで関わった民事事件で、このたびカリフォルニア州の裁判所の命令でデポジションという手続きで話をすることになりました。通訳の人はつくみたいなのですが、会社の弁護士に話を聞いても、自分に不利になるのかどうなのかよくわからず、個人的な責任を負うのではないかと危惧しています。個人としてどのような責任を負うのか不安です。会社のことでデポジションに出て、個人的な責任を負うとするとどのような事態が考えられるのでしょうか」という質問を考えていきましょう。
前回まで、今回考えている質問に関して、2つの違う形でデポジションに呼ばれることが理解していただけたと思います。
デポジションへの備え
今回は、デポジションに呼ばれた人たちが、様々な質問をされますが、どのようなことに気をつけたらよいのでしょうか。
すべての論点を網羅できるわけではありませんが、代表的なポイントについて以下考えていきましょう。
一点目ですが、デポジションというのは、そこで話したことがそのまま裁判で証言として採用されるわけではないということを理解してください。
デポジションというのはあくまでも証拠を集める作業の一環です。
ですので、呼ばれた人は記憶していることを話すということになります。
何か陳述をするといっても、知らないことがあります。
知らないことを恥じることはなく、堂々と知らないと言っても良いのです。
ただ、たとえば、「知らない」と証言した場合、個人が呼ばれるとその個人が知らない、ということになりますが、組織内で一番事情を知っている人ということで呼び出された場合「知らない」と言うと、会社として「知らない」ということになります。
これが違いです。
同じように、何か証言をすればその内容については、真実を述べると宣誓してから話すわけですから、その述べた内容がその後裁判で使える証拠となり得るのです。
ただ、デポジションで話した内容がそのまま裁判で使えるというわけではありません。
推測と憶測の違い
重要なのは、知っていることはちゃんと陳述し、知らないことは知らない、と言うことです。
覚えていない、ということでも良いのですが、推測(Estimate)することと、憶測(Guess)でものを言うことは別のことです。
昔、実際に体験したことであれば、だいたいどのようなものだったか言えます。
これは推測、推定して証言することです。
「だいたいこのくらいであった」ということは証言しなければなりません。
車の速度がどの程度であった、とか目撃した色は何色であったのか、ということは覚えている範囲で証言をしなければなりません。
一方で、今まで体験したことがない、という場合には、憶測で物事をいうことはできません。
たとえば、今まで見たことも聞いたこともないことについて、自分の想像で何かを証言することはできません。
つまるところ、今まで経験したことについては覚えている範囲で証言をしなければなりません。
実際の裁判で扱われる可能性
投げやりに「覚えていない」とだけ言う人がいますが、それは良くありません。
場合によっては裁判のときにバックファイヤーする可能性があります。
このように、陳述をするときに、覚えていることだけ話せばよいのですが、その話した内容がすべて証言として裁判で使われるわけではありません。
実際のところ、デポジションで証言をしても、もう一度「おかわり」のような形で事実審の裁判において呼ばれもう一度証言をするという可能性があります。
デポジションというのは、実際の裁判で使われる可能性がある事実関係を探るというセッションです。
裏を返せば、デポジションにおいて、曖昧な陳述をした場合には、実際に裁判になったときに問題になる可能性があります。
次回ここから考えていきましょう。
オミクロンがまた猛威をふるっていますが、毎日の生活に注意しながらまた一週間がんばっていきましょうね。
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