現米国政権による非移民ビザに関する大統領令
弁護士 鈴木淳司
June 23, 2020
2020年6月22日、現米国大統領は非移民ビザに関するかなり影響が出る大統領令に署名し発効しました。日系企業にもかなりの打撃となる可能性がありますので、取り上げます。
なお、4月に新規永住権の取得を一定期間禁止する大統領令が発効しましたが、この大統領令と併せて6月22日に施行された移民制限は2020年12月末まで続くことになりました。
新たな移民政策ーより具体的に
まずは、6月22日の新たな移民政策について考えます。
以下の制限は2020年12月末まで持続され、その後も必要に応じて伸ばされる可能性があります。
以下が、まとめです。
1.2020年6月22日以降新規申請分のH-1BおよびH-2Bの発給を停止する。
発給停止には、家族ビザの新規申請を含む。
2.労働やトレーニングなど勉学以外の目的を持って発給されるJビザの新規発給を停止する。
3.Lビザおよび同ビザに付帯する家族ビザの新規発給を停止する。
4.上記1ないし3に規定する発給停止は、6月22日以降、
(1)アメリカ国外にいる外国人に適用され、
(2)すでに非移民ビザを6月22日時点で許可されている外国人は除外され、
(3)すでにビザ以外に合法的な入国可能な書類を有する外国人は除外される。
5. 本大統領令は、すでに永住権を保持する外国人、米国市民の配偶者・子、食物の供給に関わるビジネスに関わる外国人、米国政府が国の利益があると認める場合、には適用されない。
という規定になっています。
したがって、日系企業に大きく影響するのは、HビザおよびLビザの新規発行が2020年一杯(延長される可能性はありますが)停止となる部分です。
就労ビザ発給停止のインパクト
このHビザは発給総数が毎年度8万5千件と決まっていますが、その中の半数以上はIT関係に発給される現状があります。
また、新卒の外国人学生は通常プラクティカルトレーニングを経てHビザなどで米系の企業に就職していきます。
このHビザの取得が閉ざされると、かなりの数の新卒、技術系の外国人に打撃になります。
また、大手日系企業などでは、幹部や技術者を派遣する場合、Lビザが適当なのですが、この発給も停止となります。
現政権の停止する理由としてコロナウイルスによって、経済が停滞し、米国民の仕事を確保しなければならず、外国人労働者の流入によって米国民の利益が損なわれるというものです。
最近でも現政権はSNS企業の行動に激しく抗議していること、再選に向けて、タカ派のジョン・ボルトンが書いた書籍が影響しかねないので、他にパフォーマンスを示すことなど、実際に経済とは関係ない理由で、今回の大統領令を発布していると言われたりもしています。
大手IT企業でも、技術者などのスキルを確保するために外国人の雇用が必要だが、外国人の就労を停止することで逆に企業の発展を妨げることになる、と考えています。
新聞記事によると、50万人以上の外国人がアメリカに入国できず、逆に現政権は50万件以上のアメリカ国民の雇用が創出されると言います。会社によっては、アメリカではなくカナダやシンガポールなどで会社を立ち上げて、技術系の外国人を雇用する動きが加速しています。ひいては、投資家も今回の移民政策によってアメリカ企業の発展が鈍化するのではないかと考え始めているようです。
アメリカ移民法協会は今回の移民制限政策に反対していますが、現政権の移民制限は止まらない様子です。
日系企業の対応策
近年にない、厳しい移民政策が施行されました。
日系企業もビザサポートが難しくなると、一般的なプールから人を雇わなければなりませんが、パイが限られてくると思います。
そうして、さらにこのような制限が続けば、アメリカではなく他の国に移せるものは事業を移していくということも考えているようです。今の政権を選んだのはアメリカ国民ですから、このような政策が有効であると考えている人も多いのかもしれません。
現時点で、日系企業が考えられるのはEビザ各種ということになります。
今年の間は、Eビザが申請できるかどうか、日系企業の皆さんや、申請を考えている外国人の方は考えなくてはならなくなりそうです。
他にも、PビザやOビザというのもありますが、特殊な状況なので、自己に当てはまるかどうか、検討をしなければなりません。
これらのビザ以外は現状で新たな就労ビザは年内に取得が事実上不可能になります。
また次回新しいトピックを考えていきましょう。
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