アメリカで万引き、移民法上の影響は?[4]_1113

Golden Gate sanfran

法律ノート 第1113回  弁護士 鈴木淳司
June 10, 2018

 夏になることにプロバスケットボールの最後の試合になるのですが(これからは野球のシーズンです)、ベイエリアのチームが優勝しました。最後の試合も見ましたが、ちょっと一方的な感じはしました。優勝はベイエリアに住んでいる人にはとても嬉しいことと思います。私も同じです。しかし、負けたチームの主力選手がインタビューで、楽しかった、幸せだと言っていた姿に私はスポーツの素晴らしさを感じました。

アメリカで万引き、移民法上の影響は?[4]_1113

 さて、「私の配偶者(妻)についての質問です。私(夫)は日本からアメリカに赴任しています。妻も私と一緒に一昨年から渡米してきました。子供はいません。私は忙しく家を空けることも多いことも影響していたのかもしれないので、反省していますが、妻が万引きで裁判になるようです。妻はストレスから商品をポケットに入れてしまったということです。商品は高額なものではありませんでした。このような事態になった場合、法律上どのように扱われるのでしょうか。また移民法の観点も心配しています」という質問を考える今回は最終回にしたいと思います。

強制送還になる可能性は2つ

 前回までで、司法と行政(移民法制度)の2つ違う角度から考えてきました。行政に関して、強制送還となる事由はどのようなものか考えてきました。道徳違背の罪という移民法独特の考え方も考えました。窃盗犯でも、「道徳違背」と考えられる類型もあり得るということは理解していただけたと思います。流動性があるところですから、今後もしっかり見ていかなければならないところです。

 今回は、今回の事例を使って、強制送還などの問題が生じる可能性があるのかを考えていきたいと思います。

 現在の移民法において、まず有罪となったことで強制送還になる可能性は大きくわけて2つあります。一つは、最終的に入国して5年以内に道徳違背の罪を犯して、その罪が重罪であり、道徳違背の罪の場合です。もう一つは、アメリカ滞在中に2つ以上の独立した道徳違背の罪で有罪になった場合です。

 今回質問されているケースでは、最終入国から5年以内ということは明らかです(この「最終的な入国」に関しても、争える場合もあります)し、初犯ということです。そうすると、1つ目のカテゴリーでどのように判断されるかということになります。

万引き一罪で強制送還にされる事例はあまりない

 まず、重罪(禁錮1年以上の設定がされている罪に問われている)かどうかという点ですが、微罪になります(前回までを参照)。ですので、この点ですでに強制送還の対象から外れて、「セーフ」です。さらに、道徳違背の罪かどうか、というポイントですが、移民裁判の審判例で時事変わっていくのですが、一般論的に捉えると、罪に問われている行為者が、重度の、身体、財産、などに損害を加える意思があると道徳違背と移民法では判断されます。したがって金額が軽微であれば、道徳違背とはされない事例ではないかと思われます。

 このように考えると、一般的に万引き一罪で強制送還にされる事例は現状でもなかなかないと思われます。一方で、飲酒運転やドメスティックバイオレンスで逮捕された場合、最近ではビザそのものを無効化して、もう一度自国に帰って申請をさせる方法も取られています。これについてもまた機会を見つけて考えていきたいと思いますが、少額の万引き事例で、すぐに強制送還になったり、ビザの取消をされたりしている事例はまだ見かけません。

「道徳違背」の罪については専門家に相談を

 とにかく、今回考えた移民法における「道徳違背」の罪というのは、なかなかわかりにくいですから、専門家に相談して、悩みを解消するのがとても大事な分野だと思っています。強制送還をすぐにされるということはない事例ですが、次回のビザの取得などにも影響しますので、気をつけて考えていきたいところですね。

 今回は、この辺にして、また移民法と刑事法にかかわる質問を待って考えていきたいと思います。次回はまた、新しいトピックを考えていきましょう。

 天気がよくなりましたが、カリフォルニアでは火事に注意しながらまた一週間太陽を楽しんでいきましょうね。


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作成者: jinkencom

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