シリコンバレーで起業。プランニングは?[2]_997





 
法律ノート 第997回 弁護士 鈴木淳司
March 08, 2016
 
最近、新米弁護士の法廷に付いて行って、色々法廷の傍聴席から指示をしていました。刑事事件 でした。重要な法廷はやはり私が自分でやらなくてはならないのですが、少しずつ私がやっている業務も若い人達に覚えていってもらって、花を咲かせてもらわなければなりません。無事に法廷が終わり、駐車場に戻る我々に保釈保証金を肩代わりしてくれる業者(Bail Bond)がネックストラップを差し出したので私が受け取りました。私服だった私はどうも被告人に思われたようでした。 便利そうなので使うことにしようと思います。
 
シリコンバレーで起業。プランニングは?[2]
 
さて、前回から
「(現在日本にいる)インターネット系ベンチャー企業を数名ではじめた一人です。日本では企業として活動しているのですが、今後世界展開をすることを視野に、できれば将来はシリコンバレーに会社を設立して、アメリカ事業を展開したいと思っています。いろいろ情報を集めているのですが、まずどのようなことをしなければいけないのかよく理解していません。イメージをしてから 具体的なプランニングをしたいと思っています。」という質問を考え始めました。
前回は法律的なことというよりは、ビジネス・プランニングをしっかりしなければならないということは理解していただけたと思います。
弁護士や会計士なんていうのは、二の次の話しです。ここから今回考えていきたいと思います。
それでは、会社をつくるメリットを考えていきましょう。
 
シリコンバレーに会社をつくるメリット
近年では日本である程度成功してアメリカに取っ掛かりをつくって世界にアイディアを広めていこうと考えられている会社も少なくありませんし、私の所属する事務所もかなり多くの企業のサポートをしています。
もちろん、前回考えたように、ビジネスプランがしっかりしていれば問題はないのですが、アメリカにそれも、人件費から生活費まで何もかも高いシリコンバレーに会社を設立するメリットはどこにあるか、考えなければなりません
もちろん、人脈を形成したり、お金を出してくれるファンドに近いシリコンバレーにはアイディアもチャンスもかなり眠っている可能性はあります。そのような人的な関係を構築することについてはやはり現地で人とあって、いろいろ体験することが近道なのかもしれません。
 
業務展開が二の次になる企業が多い
しかし一方で、会社を設立するというメリットはどのように考えるのか、建設的にならなければなりません。ほとんどのIT企業がアメリカに進出しても、やっていることは以前と変わらないという状況にあります。
結局、インターネットでビジネスをするということは言語を多元化すれば、カスタマーサービスが不要であれば、どこにいてもできるということになります。そうすると、シリコンバレーに会社を設立することは、対外的に「アメリカに進出しました」という見栄的な要素が多分にあり、業務展開が二の次になるという実態があります。
アメリカに会社を設立して、弁護士や会計士を使ってその会社を法的に維持し、結局売上も立たない状態で、単に会社だけが存在する、ということになるのが、8割方のパターンであります。そうであれば、その費用を研究開発に回すこともできるわけです。
 
まずは日本の会社の支社を作るという選択肢
シリコンバレーに、カリフォルニアに、会社を設立することが第一義になるようではビジネスが うまくいかないわけです。
次回考えますが、日本から来られるIT企業のほとんどは、法的責任のコンプライアンスなどを考えていますが、まず考えなければいけないのは、会社の収益が成り立つのかということです。
弁護士が意見をすることではありませんが、アメリカに子会社を設立しなくても、事業が成長すれば子会社を作る必要もでてきます。
ですので、たとえば、最初は子会社ではなく、日本の会社の支社(Foreign Registration)というオプションも考えなければいけませんし、まったく別途会社を設立して、危険を分散していくという方法も充分に考えられます。
子会社を作れば、会社の設立、立ち上げ時の労働等のコンプライアンス、会計、税務申告と次回 以降考えますが、かなりの出費になります。そのような出費が「なんでもない」という状況であれば問題ありませんが、やはり謙虚に考えれば、できるだけ業務は拡大してコストを最小限にするのが経営者なのだと思います。
 
子会社を設立する方法以外に、シリコンバレー等、アメリカでプレゼンスを作り、順次子会社に繋げていくという方法を次回考えていきたいと思います。
 
ベイエリアは激しい雨が降って、雷も鳴っています。春の訪れの前置でしょうか。花粉で苦しんでいる方も多いと思いますが、また一週間がんばっていきましょう。
 




 

作成者: jinkencom

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