東日本大震災による滞在延長措置【バックナンバー】





*こちらの投稿は、2011年3月29日に執筆したものです。震災から5年目を迎えるにあたり、投稿に手を加えずお届けします。米移民局は、今後の緊急事態の際にも、このような措置を取り得るでしょう。知識として頭に入れておかれれば、思いがけず緊急時にお役に立つかもしれません。
 
東北・関東の大地震からすでに2週間ほどが経過しました。この記事をお読みの方々でも、被災された方もいしゃっらると思いますし、有形無形の影響をうけている方々も多くいらっしゃると思います。心からお見舞い申し上げます。また、救命・救援をされている方々に心から敬意を表したいと思います。
 
震災の影響を受けられた方々への特別措置
さて、今回の大地震を受けて、米移民局は、日本からアメリカに来られる方々、および、地震の影響を受けられている方々を対象にする特例措置を実施しました。地震の影響を受けている方々が、アメリカにビザなし入国(ビザウェーバープログラム)される場合、またはすでにアメリカにビザなし入国されている場合に適用されます。
もともと、ビザなし入国については、アメリカ滞在日数が90日間が最長であり、ごく僅かな例外を除けば、原則として自国に戻らなくてはいけません。ですから、原則をそのまま厳格に適用すると、日本において地震の影響があっても、90日以内にアメリカを出国する必要があるということになります。
今回の大地震を受けてアメリカ移民局は、ビザウェーバープログラムの期間延長を実施することにしました。今回の期間延長は最長で30日です。
すでに90日は入国が許可されていますので、最長で120日間までなら、入国が合法的に許されることになりました。この延長の対象者は、すでにアメリカに入国されて、90日滞在してしまっている人も含みます。
また、アメリカにこれから滞在する人も含みます。とにかく、ビザウェーバープログラムにより、アメリカに入国されている方、またはこれから入国される方に適用されることになります。
例としては、現在アメリカにビザウェーバープログラムで滞在していて、ちょうど、90日の滞在期限が切れるので、出国しようとしていたが、地震のため、飛行機や現地の家族の都合で、出国ができなくなってしまった、という場合が考えられます。
 
具体的な手続きの方法
それでは、どのように30日間の延長申請をすればよいのでしょうか。
まず、アメリカにまだ入国されていない方は、入国時に、どのような理由により延長が必要なのか、東北地方に住んでいるので、なかなか帰国するのが難しい、などの証拠を持っていることが重要です。それを見せることにより、入国審査官の裁量になりますが、30日間の延長は許されることになります。
次に、すでにアメリカに入国されている場合のことを考えます。
すでにアメリカに滞在されている場合には、I-94Wというあおみどり色の書類(*)がパスポートにホチキス止めされていると思いますが、パスポートとこの、I-94Wをもって、お近くの移民局に行って、延長を頼むということになるということです。
ただ、実際問題として、直接移民局にいっても、すぐに何かしてくれるのかはわかりませんので、時間と手間の覚悟は必要だと思います。
また、移民局では、なぜ延長が必要なのか理由を問われますので、実家の問題、飛行機の問題など、何か理由を示す必要があります。ただ、どのような書類や情報が必要なのかは、特別措置なので、はっきり決められていません。皆さんが、説得力があると思われる証拠はすべて持っていくことは大事だと思います。
*現在I-94Wはオンライン管理に変更されています。
 
延長手続きは、面倒でも確実に!
なお、上記の延長措置を取らない限り、あとになってから、延長ができたということを理由にしても、再入国は認められない可能性が大きいですから、もし、どうしてもアメリカ国内に延長滞在をしなければならないということであれば、必ず上記の延長処理をしてください。かりに、延長申請をしなければ、原則として、90日以上のアメリカ滞在は移民法上の違法滞在と考えられています。
それにしても、日本の政府では考えられないような速い対応で、私は今回のアメリカ政府の措置のすばやさには、感心しました。次回新しいトピックを考えていきましょう。




 

作成者: jinkencom

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