支払不履行の相手への法的対策[2]_995

カリフォルニア弁護士ブログ

法律ノート 第995回 弁護士 鈴木淳司
February 22, 2016
 
日本でもいわゆる毒舌タレントが流行っていますが、トランプ氏もある意味その言動が新鮮に見えて有権者に受けているのでしょうか。しかし、日本や中国を叩く程度であれば良いのでしょうが、人種や宗教を一括りにして批判するスタイルは、どこかで矛盾を露呈するものです。最近もアップル製品をボイコットしようと、アップル製品から発信していたようですね。


支払不履行の相手への法的対策[2]

さて、前回から考えてきた質問を続けて考えて行きましょう。

「米国であるサービス業をしている企業です。未払いのある取引先に対して、請求を繰り返してきたのですが、数社は支払うとは言ったものの、支払を履行しません。こういった場合に、借用証なりの形で証拠を残しておきたいと思っています。もともとの契約書はもちろんあるのですが、それに加えてどのような法的な対策ができるのでしょうか」
 
前回、約束手形というのは、今回いただいている質問のような状況でどのように使われるのか考えてみました。
できれば、約束手形だけではなく、和解契約書を作っておくことも考えたら良いということも理解していただけたと思います。
今回は、さらに約束手形について考えていきたいと思います。

約束手形は手続きを簡略化

借用証というのは、ある程度債務があったということを証拠付ける書類ではあろうと思いますが、一つの証拠であって、その書類のみで債権債務関係が裁判所で決せられるということは稀です。
一方で、約束手形というのは、その手形があれば債権債務関係を認めようという書類ですので、かなり手続が簡略化されています。
ただし、有効な手形が存在することが前提になります。

約束手形の必要事項

まず、有効な手形といえるためには、いくつかの必要な記載事項が書かれていなければなりません。
(1)債権者、
(2)債務者の名前、住所、および電話番号、
(3)貸金などの債権債務が成立した日、
(4)支払額、
(5)利息額、
(6)返済日またはどのように返済するのか、という方法など、
(7)担保があれば、その記述、および
(8)署名
が必要になります。

約束手形はたくさんの雛形が用意されていますので、(6)の記述に気をつけていれば、ほぼ定型的なもので間に合います。
ただし、(5)については注意が必要です。

基本的に約束手形おいては、一般の債権債務関係で課される利息制限が同じように適用されます。
そうすると、例外はありますが、年利10%が上限とされています。もちろんビジネスが絡む場合には上限10%を超えることが許されるケースも多いのですが、支払を心理的に促進させるためのツールでもあるわけで、本件のような場合には、安全確保のために一応年利10%とされておけば良いのではないでしょうか。

担保の有無

さて、約束手形を得られたからといって、安心はできません。
ちゃんと約束手形にしたがって支払を受けられない可能性も残るわけです。
もちろん、担保をとっておけば事情は違ってきます。担保を差し押さえることが可能ですので、かなりの程度、回収は担保の範囲で可能となるわけです。

担保がない場合は提訴へ

担保がない場合、約束手形上に記載されている貸金債権の回収をするために裁判所に提訴をする必要があります。
手形裁判は、手形に現れた内容で判決されますので、手続きは簡略です。判決がでた場合、その判決をもとにして、財産を差押えるなりして回収をすることになります。
気にしなければならないのが、相手方の会社に財産がないということも多くあります。また財産があっても優先的な担保がついていることも良くあります。そうすると、判決がでても、回収ができないということも充分に考えられます。

 ですので、会社の代表取締役の個人保証を求めるなどの方法をつかって、ある程度回収の可能性を高めることが考えられます。

約束手形があったとしても万能の回収ツールではなく、あくまでも回収がより容易になるという程度のものです。担保がなければ、債権債務関係は人間の信用に基づいて成り立っています。ですので、どの程度取引先が信用できるか、というところに結局集約されるのだと思います。

以上で、約束手形に関して簡単に考えましたが、約束手形を取り付けるということが唯一の方法ではなく、また絶対的に回収を約束する方法でもないということは理解しておいてください。

また、次回から新しくいただいている質問を考えていきたいと思います。

春の訪れが、少しずつ自然のなかにも見えてくるような季節になりました。インフルエンザがかなり蔓延しているようですので、体調にはくれぐれも注意してまた一週間がんばっていきましょうね。