November 17, 2008
大統領選挙が終わりました。移民法もオバマ次期大統領になると、影響がでてくる分野のひとつでしょう。この8年間はどちらかというと、「テロ対策」という題目を重視してきたアメリカですが、現在の経済状況をみると経済的な観点からの移民法への影響が考えられるでしょう。オバマ次期大統領は、アメリカ人がアメリカで働くための仕事を増やす、ということを選挙中強く主張していましたので、就労ビザにもある程度影響するかもしれませんね。とにかく動向には注意していきたいと思います。
Duration of Status(D/S)-アメリカビザ
今回は何度もいろいろなところで私は書いてきたつもりですが、アメリカ入国の際の気をつけなければいけない点について、もう一度ここで復習しておきたいと思います。
滞在許可期間とビザの有効期間の違い
アメリカの滞在許可の期間とビザに記載されている有効期間の違いについてです。できるだけわかりやすいように比喩も多用しますが、もし仮にわからないようであれば、私が書いたことだけでなく、アメリカ移民局などのオフィシャルなサイトを良く読んで理解していただきたいと思います。いまだにこの違いを知らないがために、いらない問題に巻き込まれる方が後を絶ちません。
今回取り上げるのは、Duration of Statusというコンセプトについてです。外国のパスポートを持っていて、永住権がない方が、アメリカに入国する場合には、必ず気にしてください。
まず皆さんに知っていただきたいのは、ビザに記載されている有効期間と、I-94と呼ばれる白い縦長の書類(ビザ無し入国の場合はI-94Wという薄緑の書類)にアメリカ入国時に記載される期間はまったく別の期間であるということです。
パスポートにはビザの有効期間が記される
ビザはアメリカ大使館もしくは領事館で申請のうえ、許可を受けます。許可されるとパスポートにビザが張られますね。昔はシールではなくスタンプだったことから私も未だにビザスタンプと呼びます。このビザは有効期間が記載されています。短いものは数ヶ月間、長ければ10年間ということもあります。期間はビザの種類によっても違いますし、申請者によっても違います。とにかく、必ずどのようなビザでも期間が設定されているということです。
さらに、I-94(I-94W)に記入すると…
そして、皆さんはそのビザをもちアメリカに入国するわけですが、入国の際にI-94*という書類を記入することになります。飛行機のなかで、税関申告の用紙と一緒に配られますね。ビザがない場合には、I-94Wに記入しますが、ビザを持っていると、I-94に記入するわけです。たとえば、学生ビザであるFビザ、就労ビザであるHビザなどを持っている外国人は白いI-94に記入する訳です。
I-94(I-94W)に滞在許可期間が記される
入国審査の時に、ビザと一緒にI-94を提出して審査を受けます。そして、審査官は審査後、I-94の一部をパスポートと一緒に入国を許可された外国人に戻します。このI-94の一部が実はアメリカ入国後に重要な役割を負います。I-94の一部には、どのカテゴリーのビザで入国が許可されたのか記載されていると同時に、いつまで滞在できるのかが記載されています。すなわち、パスポートに張られたビザの期間、入国が許されているわけではなく、I-94に記載されている期間がアメリカに合法的に滞在できる期間ということになります。
言うなれば、ビザは「通行手形」
私がよく使う比喩ですが、パスポートに張られたビザの期間は、「通行手形」の役割を担います。すなわち、有効期限内だったら、アメリカに出入国できるということです。ですので、ドラスティックな例かもしれませんが、あと数日しか残っていないビザでも、通行手形の期間としては有効ですから、アメリカに入国することができます。ビザが通行手形であるという性質は覚えておいてください。
入国後はI-94(I-94W)に記載された期間が重要
一方I-94に記載された期間は、アメリカに合法的に滞在できる期間ですから、一度アメリカに入国してしまったら、ビザの有効期限が問題になるのではなく、I-94だけをみて、その期間はアメリカに滞在できることになります。どのビザをお持ちの方も、I-94に記載されている期間については絶対にミスをしないでください。
Duration of Status(D/S)とは
さて、Fビザと外交ビザをお持ちの方は入国の際、I-94にD/Sと有効期限が書かれます。D/Sと書かれても、一体どの程度滞在できるのか、I-94には説明書きはありません。
D/Sというのは、Duration of Statusを略して記載しているわけですが、すなわち学生であれば、学生の身分を維持している限りアメリカに合法的に滞在できるということです。外交官であれば、職務に就いている間は合法的に滞在できるのです。ですので、アメリカに入国する際に、学生ビザの有効期限が数日しかなかったとしても、入国後、学生のステータスを維持できている限り、合法的な滞在となります。
D/Sは入国目的に則した滞在をする
一方、D/Sということで入国している場合に、学生をやめてしまった、ぶらぶらしている、などという場合には、学生のステータスがなくなりますので、違法な滞在となるわけです。D/Sと書かれている場合には、入国の目的に則した滞在をする必要があります。
場合によっては、ビザの有効期限が切れてもなお、D/Sであれば、アメリカに合法的に滞在できるというシチュエーションがあることは理解していただいたと思います。
ただし、再入国は要注意
ただ、一旦アメリカを出国すると、またアメリカに再入国するには新たなビザを申請し、許可を受けなくてはなりません。再入国の際、ビザの有効期限が切れていると、通行手形として使えないわけですから、再度の許可を受ける必要があるのです。
私が知っている事例で、あと一セメスターで大学を卒業できた人が、日本に帰国しました。学生ビザが切れていたので、再度申請の必要がありました。申請は拒否され、アメリカに学生ビザをもって戻ってくることができなくなったのです。そのまま、アメリカから出国せずにあと一学期がんばって勉強すれば、合法的な滞在のまま卒業できた、という事例もありました。
D/Sという合法的な滞在期間をよく理解して、有効なアメリカ生活を楽しんでください。
また次回新しいトピックを考えていきましょう。
*I-94は現在、一部を除きすべてオンライン化されています。
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