宗教関連非移民ビザ(Rビザ)の大改正

December 12, 2008




 
ずいぶん前にじんけんニュースでもちょっと取り上げたのですが、宗教関係ビザ、いわゆるRカテゴリーのビザについて、アメリカの移民局(The US Department of Homeland Security)の法改正に合わせて、政令の形式でビザの発給、延長要件をドラスティックに変えました。今回、重要と思われるポイントについて考えてみたいと思います。
まず、なぜ、宗教関連ビザが法改正の対象になったかというと、ビザの濫用があったからです。すなわち、Rビザは宗教という人の内心にかかわる問題、信教の自由の問題と背中合わせに発給のガイドラインを決めていたので、ビザを欲しいと思う個人の自己申告により、発給が簡単にされてきた経緯があります。いろいろな濫用事例が明るみになってきたことから、今回の改正につながりました。
端的に言うと、今回の改正によって、Rカテゴリーの宗教ビザも他のビザと申請の方法、内容が変わらなくなってきたということです。さらに加重要件もでてきましたので、他のいくつかのビザよりも実際は手続きが面倒になったかもしれません。
読者によっては、宗教ビザというのは「特殊だなぁ」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、私は多くの顧問先があり、お寺や教会等では必須のビザなのです。
また、特に仏教系の団体に関しては、ビザが取れるか取れないかで、檀家さんにも影響するのですから、人の信教の自由というとても大事な権利に接する部分が害される可能性があります。もちろん移民局が濫用事例や詐害的な事例に対して厳しく対処するのは、国家としてはよいことです。しかし、通常の宗教団体に対して、発給が厳しくなるのであればそれは困ります。私も、悪影響がでてきたら、議員を通じてロビーイングしたい分野でもあります。
さて2007年4月22日から改正案がでてきていたわけですが、実際にどのような改正内容になったのでしょうか。
まず、Rビザを受けるには、スポンサーが必要になったこと、それから、I-129というスポンサー申請が必要になったことが、大きな変化です。
以前は、スポンサーがなくても、自己申請ができた場合もあるのですが、簡単に言うと、非営利宗教団体、もしくは、宗教団体の外郭団体としての非営利団他でなければスポンサーになれないという制限ができました。ある意味私が扱ってきている案件でも100パーセント非営利宗教団体ですので、この制限はたいして運用上は問題にならないと思います。
次のI-129申請が必要になった点は大きいです。すなわち、日本から宗教団体のビザをとってアメリカに来ようと思うと、以前は申請する本人が大使館・領事館に行けば、基本的にそれだけで発給が可能でした。ところが、今回からI-129申請が義務づけられることになったのです。I-129というのは、フォームの名前ですが、アメリカ国内でスポンサーとなる団体が、アメリカ国内で申請書を移民局に送り審査を受けます。
その許可がでた時点で、日本側では申請者本人がそのI-129許可書を添えて、自分のビザの発給を受けるという形になります。
ですので、時間がかかることになります。アメリカ側での申請を義務づけることによって、問題のない団体がスポンサーであることを確認することになったのです。この部分は、まあ、他の非移民ビザの申請と「変わらなくなった」という程度です。
次に、他のビザに比べて、厳しいなぁ、と思われるポイントをいくつか考えます。
 まず、スポンサーとなる団体が必要ということですが、その団体がスポンサーとして適格かどうかの証拠を提出する必要があります。非営利の宗教団体として連邦政府に認可されていることを証明する書類を手に入れなくてはなりません。もし、連邦の税法上、宗教団体としての認可を受けていない団体がスポンサーとなる場合には、様々な証拠を用意して宗教団体、宗教関連団体であることを証明しなくてはなりません。証明の方法はいくつかありますが、ここでは詳しくは立ち入りません。
 もうひとつ、厳しいなぁ、と思われる改正点ですが、スポンサーとなる団体が、アメリカ国内で活動をしていることを確認するために、抜き打ちの行政調査を移民局が行うということが決められました。すべてのスポンサー団体が調査の対象となるわけではありませんが、ランダムに選ばれたスポンサー団体に調査が入ります。調査は多岐にわたって行われます。もし、調査の結果、「問題あり」とされた場合、その問題について、申し開きの機会は与えられますが、調査を行われ、スポンサーとして不適格とされてしまう可能性がでてきたのです。まともな団体であれば、まあ、問題はないとは思いますが。面倒くさいことに巻き込まれる可能性はでてきたわけです。
また、法律用語としてRビザに関連して使われてきた用語もいくつか再定義されています。
たとえば、Religious Vocation、すなわち「宗教職」という定義は、「宗教的な生活をすることを一生を通してフォーマルに行っていく」という形で厳格に定義されました。日本語だとわかりにくいかもしれませんが、簡単に言えば、一時的な宗教心では認められないし、一時的な宗教活動でもダメ、また今までの人生を通じて、真剣にやっていないとダメ、というような感じでしょうか。Religious Vocationの定義だけではなく、他にもReligious Occupation,Minister, Denominational Membership, そしてReligious Denominationといった法律用語が移民法上再定義されました。
上記はスポンサーに関しての制限的な法改正ですが、申請をする外国人に関しても、今までは初期に三年間のビザを受けられましたが、短縮され最初の申請では30ヶ月ということになります。また、Rビザを申請するためには少なくとも申請前1年間はアメリカ国外に住んでいなくてはならなくなりました。もちろん例外はあります。
このようにRビザに関しては、最近の改正でドラスティックに変更される点がでてきました。
もし、Rビザの申請を今から考えられている方がいらっしゃったら確実に最近の改正を抑えてから申請に臨む必要があるでしょうね。
次回また新しいトピックを考えていきましょう。


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作成者: jinkencom

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