もうアメリカの暦の上でも「夏」ということです。2004年ももう半年終わってしまいましたね。
移民法の方は相変わらず「厳しくなる方向」の話が多いですね。最近は一昔前まではストレートにビザが取得できた案件でも、移民局が非常に猜疑的な目で審査をしていることがひしひしと伝わってきます。テロ対策が思わぬ方向に向いていってしまっているような気がして残念な気になってきてしまいます。このようなことをやっていたらアメリカに来たいと思う外国人はどんどん減ってきてしまいますよね。
今回はちょっと明るい、というか良い方向の話題を考えてみたいと思います。
2004年6月16日に移民局が議会に対して現存する申請書類のバックログについて、2006年末までに解決をする方針という内容の書類を提出しました。その前向きな内容の一部をここでご紹介しましょう。
まずバックログの定義については詳しくこの報告書で書かれています。
まず申請書類が移民局に到達しているのに、審査の結果が済んでいないものを審査中の申請書類と呼びます。この審査中の申請書類から、過去6ヶ月間に移民局に届いた案件を差し引いた案件数を「バックログ」と呼んでいます。
恐ろしいことに、2003年時点でバックログとなっている申請書類が実に340万件あり、加えて難民認定の申請が370万件移民局に存在していると言うことです。
永住権の案件が6年7年とかかるのも納得がいってしまう数字です。
この数字を実際限りなく0に近くしようと試み、プランを立てているのがこの文書の実質的な内容です。2003年末までのデータを使いこの難民認定をのぞいたバックログの分を分解すると、顕著なものが、I-130、つまり永住権申請のスポンサー側提出書類です。
バックログが150万件を超えています。次に永住権の申請者側の提出書類であるI-485が76万件程度バックログとなっているようです。
この数字に対する解決策として、審査のペースを速めていくということをまず第一義に考えているようです(いままでの様子を見ていると速まってある程度当たり前だとは思うのですが)。
そのほかにもいくつかユニークな方法を考えているようなので、ここでご紹介しておきましょう。
まず、I-90という、永住権のカードの更新についてシステムを考えなおそうとしています。
なぜかというと、基本的に、永住権を取得する際にチェックは厳しく行っているわけですから、いったん永住権を取得した外国人に対して、チェックを厳しくしても意味がないという判断からなのです。
現在年間100万件の永住権更新が行われているのですが、その審査を簡略化するなりして対応し、その余った人員を他の部署に移そうというのが作戦です。この点私も同感で、いちいち10年ごとに永住権を更新する程度のことで申請書を作って審査までするというのは、時間と労力が有効に使われていないと思いますので、良い改革だと思います。
次に、ビザの発行に関して、ある程度の規模の会社スポンサーに関しては、事前に認定する制度を大きく導入していこうというアイディアがでています。
Lビザにはブランケットペティションといい、一括して最初から会社の申請ができるのですが、そのようなシステムを拡大して、会社が一定の申請をしておけば、以後いちいち各外国人のビザ申請において、会社の書類を提出しなくても良いというシステムを導入したいと移民局はしています。審査の時間を減らすための方策なんでしょうね。
それから、申請における書類や証拠の明確化ということを移民局は率先して行いたいとしています。非常に良いことだと思います。
申請の際、弁護士にとっても申請者本人や申請主となる会社においても、提出書類の過不足が問題になったり、ある程度の経験に頼ったりと不明確な部分が多く、ケースによっては付けなくても良い書類が他のケースでは必要とされたり、安定性が非常に欠けていたのです。その問題を解決しようとしているのです。
現在、1年前から比べると、移民、非移民ビザの申請過程において、追加証拠提出命令がでる可能性が倍以上になったと思います。つまり、その移民局のやりとりに数ヶ月以上かかる例が多いので、移民局にとっても申請者にとってもプラスになることはまったくありませんでした。この細部の提出書類や提出証拠の明確化をはかることで、事前に申請が可能か、また申請に必要な書類は全部整っているのかなどをチェックできるようにしようとしているのです。
ある意味、完全に明確な基準をつくることは不可能でしょうが、こういった試みは、移民申請の明確化を助けるものだと思います。
以上は今回のレポート文書のごく一部ですが、できるだけプロセスの潤滑をはかりたいという今の移民局の態度には評価できるものがあると思います。しかし、目標まで設定していますが、現実的にその目標まで達成することができるのかは未知ですし、議会がどのように反応するのかも、わからない部分だと思います。
移民法に関しては外国人に厳しくなってきている部分はありますが、このようにプロセスそのものを考え直しているということについては、私はアメリカという国に対しての高評価になるだろうと思います。
また、次回新しいトピックについて考えていきましょう。
それでは次回までさようなら。
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