9月に相次いで発効する移民法の新制度——留学生・永住権申請者・雇用主への影響

じんけんニュース 09-05-2026 弁護士 鈴木淳司
September 5, 2026

今回は、この9月に相次いで施行期日(Effective Date)を迎える移民法上の重要な制度変更を中心に考えます。8月は、留学生の在留資格(Status)の根幹に関わる規則の発効準備、移民審判部(BIA)による14年来の先例変更、公的扶助(Public Charge)の新ガイダンス、H-1Bビザの新たな費用負担の提案など、在米日本人の皆さん及び日系企業の実務に直結する動きが集中しました。順に整理していきたいと思います。

「在籍期間(Duration of Status)」制度の廃止(9月15日発効)

国土安全保障省(DHS)は、2026年7月17日付の連邦官報(91 FR 44976)において、F(留学生)、J(交流訪問者)及びI(報道関係者)の各非移民資格について、従来の「在籍期間(D/S)」方式を廃止し、固定期間の入国許可(Fixed Period of Admission)へ移行する最終規則(Final Rule)を公示しました。施行日は2026年9月15日です。これまで留学生は、I-94上「D/S」と記載され、課程に在籍している限り在留が認められてきましたが、今後はI-20記載の課程期間を上限とし、かつ通算4年を超えない範囲でしか入国許可が与えられません。課程終了後の猶予期間(Grace Period)も従来の60日から30日に短縮されます。

実務上とりわけ重要なのは、期間を超えて在留する必要が生じた場合、学校のDSOの手続だけでは足りず、Form I-539によりUSCISへ在留期間延長(Extension of Stay)を申請し、生体認証を経て審査を待たなければならない点です。また、これまで留学生の不法滞在(Unlawful Presence)は、移民局又は移民裁判官の正式な認定があって初めて起算されるのが原則でしたが、今後はI-94の期限の翌日から自動的に起算され、移民法第212条(a)(9)(B)(8 U.S.C. §1182(a)(9)(B))の3年・10年の入国禁止(Bar)に直結します。入学後1年間の転校制限、語学課程の通算24か月上限など、学業上の自由度も大きく制約されます。規則発効前にD/Sで入国している方には経過措置があり、I-20記載の課程終了日又は発効日から4年のいずれか早い日までは在留が認められる扱いですが、その後は延長申請が必要です。なお、9月15日以降はForm I-539及びForm I-765の新様式のみが受理され、旧様式は移行期間なしに却下(Reject)されます。

本規則については、8月18日、NAFSA等の教育団体の連合体が行政手続法(APA)違反を理由にマサチューセッツ連邦地方裁判所に提訴し、仮差止命令(Preliminary Injunction)を求めています。9月9日に審尋が予定されていますが、本稿執筆時点で施行を停止する命令は出ていません。留学生及びその家族の方は、ご自身のI-94とI-20の期限を今一度確認し、期限管理を自らの責任で行う体制に切り替えていただく必要があります。

アドバンス・パロールによる出国と不法滞在バー

2026年8月13日、BIAは Matter of Delcarmen-Lara, 29 I&N Dec. 830 (BIA 2026) において、永住権申請中の方が再入国許可(Advance Parole)を得て一時的に出国した場合であっても、それは移民法第212条(a)(9)(B)(i)(II)にいう「出国(Departure)」に該当すると判示し、これと反対の結論をとっていた Matter of Arrabally and Yerrabelly, 25 I&N Dec. 771 (BIA 2012) を明示的に覆しました(Overruled)。

従来は、例えば留学生ビザの失効後に米国市民と婚姻して永住権申請(Form I-485)を行った方が、180日以上の不法滞在歴を有していても、アドバンス・パロールで一時帰国すれば3年・10年の入国禁止は発動しないという扱いが定着していました。今後は、180日を超える不法滞在歴がある方がアドバンス・パロールで出国すると、再入国の時点で入国禁止事由に該当し、永住権が取得できなくなる危険があります。BIAは、既に出国した方の信頼保護の観点から本判断を将来に向かってのみ(Prospectively)適用するとしていますが、これから出国する方には直ちに適用されます。過去にビザの失効や資格喪失の期間がある方は、たとえ短期の帰国であっても、出国前に必ず弁護士に不法滞在歴の有無と日数を確認してもらってください。

公的扶助(Public Charge)新ガイダンスとForm I-485新様式(9月18日発効)

DHSは2026年7月20日付の最終規則(91 FR 45324)により2022年の公的扶助規則を撤回し、USCISはこれを受けて8月18日、政策指針(Policy Alert PA-2026-09)を公表しました。施行日は9月18日です。従来は現金給付と長期施設収容のみが考慮対象でしたが、新指針では、政府資金が一部でも投入された資力調査付き給付(Means-Tested Benefit)であればMedicaid、SNAP、住宅補助等も広く考慮され、年齢、健康状態、資産、学歴・技能等を総合的に勘案する「諸事情の総合考慮(Totality of the Circumstances)」により審査官の裁量で判断されます。特に注意すべきは、扶養誓約書(Form I-864)が十分であれば原則として要件を満たすという従来の取扱いが廃止され、共同保証人(Joint Sponsor)を含め、保証人の資力や扶養の意思そのものが実質的に審査される点です。

同日から永住権申請書Form I-485も新様式に切り替わり、旧様式は移行期間なしに却下されます。また、8月5日付の政策指針(PA-2026-05)により、USCISは当初証拠(Initial Evidence)が欠けている申請について、証拠提出要求(RFE)や不許可予告通知(NOID)を発することなく直ちに不許可(Denial)とする裁量を回復しており、係属中の申請にも適用されます。申請書類の完全性が、これまで以上に決定的な意味を持つことになります。

H-1B・L-1に関する費用負担の増大

8月10日、DHSは、いわゆる「9-11 Response and Biometric Entry-Exit Fee」(H-1Bは4,000ドル、L-1は4,500ドル)を、従業員50名以上で従業員の過半数がH-1B又はL-1である「対象雇用主(Covered Employer)」による延長申請のすべてに課す最終規則を公示しました(9月9日発効)。さらに8月25日には、キャップ対象のH-1B新規申請1件につき103,265ドルの手数料を課す規則案(NPRM)が公示されています(FR Doc. 2026-17324)。6月に連邦地裁が大統領布告に基づく10万ドル手数料を違法として無効(Vacate)とし、第1巡回区控訴裁判所も政府の執行停止申立てを退けたことを受け、今度は移民法第286条の手数料設定権限に根拠を置き直したものです。意見公募期限は公示後30日で確定時期は未定ですが、OPTにも同種の手数料を検討しているとの報道もあり、留学生から就労ビザへという従来の経路そのものが揺らいでいます。

以上のとおり、9月は留学生、永住権申請者、雇用主のいずれにとっても手続の厳格化が一斉に現実のものとなる月です。期限の管理、出国前の確認、申請書類の完全性という基本を改めて徹底していただきたいと思います。また新たな動きがありましたら次回また考えていきましょう。外国人にとっては息苦しい政策が続きますが、このような政策を取っている人たちの祖先も最大で250年前までは外国人だったわけで、不思議なものです。

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