じんけんニュース 1-28-2023 弁護士 鈴木淳司
H-1Bビザ申請の季節がやってきた
毎年のように、H-1Bビザ申請手続きの開始時期がやってきました。
20年前は、かなり日本人もH-1Bビザに応募して許可を受ける人が多かったのですが、最近では発行上限数が決められ、抽選で発給されるため、企業側も就活をしている人たちも他に就労ビザの可能性があると、H-1Bビザは敬遠しがちな傾向にあります。
今年も、H-1Bビザ申請の第一次的な手続きがはじまりますので、全体像を確認しておきましょう。
H-1Bビザの発行数上限
まず、H-1Bビザには、クオータがあります。新規発行上限数は年間6万5千件と設定されています。さらに米国内で修士以上の学位を得た外国人には2万件までの枠が用意されています。
自由貿易協定を締結しているチリとシンガポールには、優先的に6万5千件のなかから一定数割り当てが可能で、グアム、サイパンなどでの就労にも例外規定が存在しています。
例外はありますが、原則として年間6万5千件の新規発行上限数が決められているわけです。
手続きはオンライン登録から
申請の前置として、まず移民局のウェブサイトを利用して電子的な登録をする形をとります。10ドル登録料としてかかります。(また、以前に比べて余計な費用がかかることになっています。)
移民局のウェブサイトでアカウントを作る期限が通常毎年2月一杯程度で、3月から14日間程度の期間中に実際に情報の登録をします。そうして、昨年度では48万件程度の申込み、12万件が抽選段階は通るというプロセスを経て、ようやく実際の申請ができることになります。
実際の申請は、同一の手続きでできる可能性もありますが、3段階です。
まずは、職種によっては提示されている賃金が平均賃金以上であることに関して米国労働局を通して認証、許可を受ける必要があります。次に雇用主がI-129というスポンサーになる申請を移民局にします。そして、雇われる側である被用者がビザまたは滞在許可の申請をするという段取りになります。
以前に比べると、人気が集中しているビザですので、ビザ発給まではかなりのプロセスを経る必要があるのです。
H-1Bによる滞在期間
H-1Bビザは最長で3年プラス更新3年の6年間発給されます。そして、永住権を申請する場合には、例外的に6年を超えて更新が可能な場合もあります。
また、H-1Bビザの配偶者はH-4ビザの取得が可能で、労働許可も取得可能です。
申請の適格要件ー大学卒業が目安
H-1Bビザ取得の適格要件として、少なくとも大卒であること、または同等の教育を受けたと示せることが前提となります。
H-1Bビザというのは、Specialty Occupation、すなわち専門的な分野の就労を許可するものですから、大卒以上というのが要件として暗に組み込まれているのです。
適用分野は広く、医学、法学、コンピュータ・サイエンス、ソーシャルサイエンス、など一般的に大卒の人が就くと思われる分野での申請が可能になります。
この大卒要件としては、雇用者側が、大卒の雇用について、その基礎と要件を申請書に詳しく記載することが義務付けられます。移民申請手続きでは肝になる部分ではあります。ポジションが大卒である必要性については、米国労働局のオキュペーショナルハンドブックなどが、指針にされることが多々あります。
ポジションの一致
次に、雇用者のポジションがあるとして、申請者の学位がそのポジションに合致する内容であることが必要です。
エンジニアのポジションがあるとして、医学の学位を持っていてもH-1Bビザは発給されません。ちゃんと数珠のようにつなげるのかがポイントになります。また、免許やライセンスなどが必要な業種はその提出も必要になります。必要なライセンスを被用者が持っていない場合には、H-1Bビザの一年間の暫定許可をして、その間に必要なライセンスを取得させるということもあります。
一度H-1Bを取得した後は再申請OK
H-1Bビザを一度取得して、転職するにはビザの発給上限数に引っかかりませんので、毎年の上限数を気にせずに再申請をすることができます。
外国から来て、たとえばアメリカの大学で学び、その延長でアメリカの企業に就職したいというパターンでは一番使われているビザだと思います。
通常、アメリカの大学を卒業すると、OPTという一年間の就労期間が与えられます。その期間内に、H-1Bビザを申請するという形になるわけです。ですが、現状では抽選が必要になるために、外国人学生は不安定な立場におかれます。
私見では、このOPT中にH-1Bビザを申請して抽選漏れをした外国人学生を合法的に滞在できる仕組みをつくってもらいたいと思っています。せっかく、アメリカに来ても、就職できるかどうか、不安をかかえるのは酷なケースもあります。
日本人は、学費も高いアメリカに留学をするケースが少なくなってきていると聞いていますが、ぜひ留学をされる皆さんは、将来の就職を視野に入れながら、難しいハードルもありますが、H-1Bビザで就労も考えてみてください。
次回また新しいトピックを考えていきたいと思います。それでは、次回までさようなら。
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