H-1Bビザ取得はさらに厳しく

じんけんニュース 10-13-2020 弁護士 鈴木淳司
0ct 13, 2020

H-1Bビザの資格要件の厳格化

 現大統領は、選挙戦に向けて、様々な国民の指示を引きつけるべく、政策を打ち出していますが、移民法改革の目玉であるH-1Bビザの発給厳格化に向けて、新たに大統領令を2020年10月8日に出しました。60日後の、2020年12月7日に発効します。

 H-1Bビザというのは、いわゆる専門職ビザと呼ばれていますが、法律上は 8 CFR 214.2(h)(4)(ii)という移民法に関する連邦法に規定されているビザです。

 今回、この法律の文言を変更することはしないで、運用を変えることにより、発給を厳格化しようというのが現政権の狙いです。法律を変えるには議会の決議を経なければなりませんが、運用だけを変えるためには、行政内部での対応で済むからです。

H-1Bビザは専門職に適用

さて、具体的にどのような厳格化が想定されるのか、以下考えていきたいと思います。

 まず、上記の条文に「Specialty Occupation」という言葉があります。専門的職業ということですが、この文言は今までどちらかというと広く考えられてきました。

 H-1Bビザは、大学または大学院で専門的な勉強をした外国人が、その専門性を利用してアメリカの企業に就職するというパターンが考えられていたのです。

ですので、今まではたとえばビジネスの学位を持っている外国人であれば、その学んだ専門性を生かして、様々なポジションに就職することが可能ではあったのです。移民局の審査においても、一定程度の用意されているポジションと、学位が関連していれば許可を出していました。

専門職の判定をより厳しく 

ここに現政権は目をつけました。
今回の大統領令では、この関連性を「直接の関連性(direct relationship)」に限るとしました。ですので、学位が、そのままポジションに使えないといけないということです。

そうすると、一般的な「ビジネス」、「リベラルアーツ」とか「エンジニアリング」といった学位だけでは、足りずに就職先のポジションにピンポイントにあう専門性の説明や、勉強をしていることが必要になります。

また、ポジションが幅広く設定されている場合には、専門性がどのようにポジションと直接関連するのか、説明する必要がでてきました。一番説明が簡単なのは、医学から医師、法学から法曹、会計学から会計、といった分野かもしれません。その他の、資格を必要としない分野においてはかなり移民局の対応は厳しくなると言えます。

また、直接関連性を示すために、必ず各申請において、
(1)その職業一般に必要な能力の要件
(2)企業の属する分野における一般的な就業要件
(3)就職先において必要な就業要件

を示さなければならず、専門性があることが前提になります。
かなりハードルを高くして専門性を絞っていることがわかります。

就業地にも制限

次に、就業地についても厳格な制限が課されるようになりました。

主に、インド人を対象にした業者がいて、アメリカにH-1Bビザで技術者を連れてきて、いわゆる派遣をしているようなケースがあり、移民法違反で捕まっている事例もありました。そこで、この就業地についても、今回厳格に解して、実際に働くところでの取得を要件としました。H-1Bの潜脱を防ごうということなのですね。

雇用主=ビザ申請者

第三点目ですが、雇用主(Employer)というのを厳格に解することにしました。
すなわち、派遣してどこかにH-1Bビザを保持する外国人を送ってしまうというのは基本的に許されず、必ずビザ申請者が雇用者となり、ビザ保持者は被用者となる関係が必要であるということになりました。潜脱して、他の雇用主のもと実際は働いているなどというケースをなくすことが目的です。

立入検査も

それから、もうひとつの重要な点は、移民局による立ち入り調査の権限が拡大されました。
H-1Bビザ保持者を雇っている会社は、移民局による立入検査の対象になるということです。

アメリカ人雇用を守るため?

今回の大統領令による運用の変更は上記のとおりですが、見ての通り、H−1Bビザを利用した雇用の要件等がかなり厳しく運用されることになりました。この背景には、多くの外国人労働者が入ってきて、アメリカ人の雇用を奪っているのである、という現大統領の主張、現政権の移民に対する厳しい政策的な方向性があります。

 特に、インド人のコンピュータ関連のH-1B申請で、詐欺まがいの行為が横行している背景も影響しているのだと思います。多くのH-1Bビザはインド国籍者に出されているという事実もあります。

法律自体の変更はなく、運用のみの変更ではありますが、今後は、大学や大学院で学ぶ外国人学生も、将来アメリカ国内で就職したいと考えている場合には、はやいうちから、その就職を射程に入れて、どのようなクラスやどのような学位をとるのか、考える必要性があると思います。

 なんだか、アメリカにおける外国人の就職離れが加速しそうではあります。
 ただ、一方で、やはりH-1Bビザの潜脱事例も見られていて、政府としても厳格化するというのは当たり前であるという考えもあると思います。

 現大統領の再選がどうなるのかで、また今後4年間の移民法もかなり影響を受けることになります。今後の推移は見守っていかなければならないですね。

 また、次回新しいトピックを考えていきましょうね。


▼DVグリーンカード抽選当選後サポート、お申込み受付中
https://jinken.com/win/

当選なさった皆さま、おめでとうございます! 当選した後は、一定期間、事務手続きに加えて大小の不安も抱えがちです。 移民政策の変更にも、柔軟に対応しています。

▼DVグリーンカード抽選サポート、お申込み受付中
https://jinken.com/entry

絶対アメリカに行きたい!住み続けたい!大きなチャレンジをして自分を変えたい! Momsを通じてご応募なさる方々の「本気」にこたえます。

応募期間は例年10月のおよそ1か月。すぐに終わってしまいます…

もしもDVが実施されなかった場合には、もちろん全額対応させていただきますのでご安心ください。政権の移民政策に対する不安も大きいところですが、Momsでは柔軟に対応してまいります。

作成者: jinkencom

jinkencom について JINKEN.COMの運営者であり、カリフォルニア州弁護士として活躍中の鈴木淳司弁護士のブログです。「移民法ブログ」では米国の移民分野についてホットな話題を取り上げて月に一度更新、「アメリカ法律ノート」は広くアメリカの法律相談に答える形で、原則毎週更新しています。なお、本ブログの著作権は著者に帰属します。 *たびたび法制度が変わりますので、最新情報をご確認の上、手続きされてください。